傷害

傷害罪の基礎知識

(1)傷害罪の刑罰

15年以下の懲役または50万円以下の罰金(刑法204条)

 

 

(2)傷害の意図は必要か?

傷害罪が成立するためには、暴行する意図があれば足り、けがをさせる意図までは必要ありません。つまり、「けがをさせるつもりはなく軽い気持ちで人に暴力を加えたが、結果的にけがさせてしまった」という場合も、傷害罪が成立します。

 

 

(3)傷害罪と他の犯罪との関係

殺意をもって人を傷つけたが、死亡には至らなかった場合、傷害罪ではなく殺人未遂罪が成立します(死刑または無期もしくは5年以上の懲役)。

殺意なく人を傷つけ、結果的に死亡させた場合は、傷害致死罪(3年以上の懲役)が成立します。

過失によって人を傷つけた場合は、過失傷害罪(30万円以下の罰金または科料が成立します。過失傷害罪は告訴がなければ起訴することができません。

動物を傷つけた場合は、器物損壊罪(3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料)、動物愛護法違反(2年以下の懲役または200万円以下の罰金)が成立し得ます。

 

 

傷害で逮捕される確率は56%【平成27年】

捜査機関が刑事事件として立件した傷害事件(傷害致死罪及び現場助勢罪を含む)のうち、被疑者が逮捕されたケースは56%です(平成27年検察統計年報:他の数値もこの統計に基づいています)。路上などで相手に暴力を振るいけがを負わせてしまった場合、そのまま逮捕されてしまう場合が少なくありません。傷害罪で逮捕された後、勾留される確率は82%です。勾留期間(原則10日)が延長される確率は59%です。

 

 

傷害で前科がつく確率は40%【平成27年】

傷害罪の起訴率は40%です。起訴された事件のうち公判請求される割合は39%、略式請求される割合は61%です。暴行罪(18%)と比べると公判請求される割合がかなり高くなっています。

 

素手による暴行で、被害者のけがが軽い場合(概ね全治1~2週間程度)は、略式請求され罰金で終わるケースが多いです。被害者との間で示談が成立すれば、不起訴処分(起訴猶予)を獲得できる見込みも十分にあります(起訴されないので前科はつきません)。凶器を使用するなど態様が悪質な場合や被害者のけがが重い場合は、公判請求される可能性が高くなります。

 

 

傷害罪の関連犯罪

 

対象者

刑罰

暴力行為等処罰に関する法律違反(1条ノ2) 

銃砲刀剣類を用いて人の身体を傷害した者

1年以上15年以下の懲役 

暴力行為等処罰に関する法律違反(1条ノ3)

傷害、暴行等の常習者が人を傷害したとき 

1年以上15年以下の懲役 

現場助勢罪(刑法206条)

傷害事件の現場で勢いを助けた者

1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料

 

凶器準備集合罪(刑法208条の3)

 

2人以上の者が他人の生命、身体又は財産に対し共同して害を加える目的で集合した場合において、凶器を準備して又はその準備があることを知って集合した者

2年以下の懲役または30万円以下の罰金

上記の場合において、凶器を準備して又はその準備があることを知って人を集合させた者

3年以下の懲役

 

【関連ページ】

暴行・傷害のご質問 

 

 

傷害罪の弁護方針(罪を認める場合)

(1)示談をする

被疑者を起訴するか否かを決めるのは検察官です。検察官は、傷害事件の被疑者について起訴するか否かを決めるにあたり、示談の成否を非常に重視しています。そのため、被害者との間で示談が成立すれば、不起訴になる可能性が高まります。示談を締結する前に起訴されたとしても、その後に示談が成立すれば、執行猶予になる可能性が高まります。裁判官も刑罰の重さを判断するにあたり、示談の成否を非常に重視しているからです。

示談の基礎知識

 

 

(2)被害者に謝罪する

被害者とお会いしたり、手紙をお送りして謝罪します。通り一遍のことを述べるのではなく、自分の言葉で心をこめて謝罪することが重要です。 

 

公判請求されたら…

本人作成の謝罪文を証拠として提出します。また、裁判官の前で被害者への思いを直接語ってもらいます。

 

 

(3)環境を改善する

飲酒絡みで傷害事件を起こした場合、自身の飲酒癖をどのようにコントロールしていくかを考えてもらいます。暴走族、暴力団等の一員として傷害事件を起こした場合は、そのような組織から完全に離脱することが必要です。不良交友による荒れた生活が事件の背景にある場合は、交友関係の見直しを含めた生活環境の改善が必要となるでしょう。いずれにせよ生活環境を立て直すためにはご家族の協力が不可欠です。ご家族には日常生活の中で本人を監督してもらいます。

 

公判請求されたら… 

本人を監督する旨の誓約書をご家族に書いてもらい証拠として提出します。また、情状証人として、裁判官の前で、本人の更生をどのようにサポートしていくのかを語ってもらいます。その他の証拠として、移転先の住民票(家族と同居するために引っ越した場合)、断酒プログラムの修了証(飲酒絡みで事件を起こした場合)、破門状・脱会届(暴力団員の場合)などがあります。

 

 

(4)その他の弁護活動

① 早期釈放を目指す

身体拘束されている場合は、早期釈放に向けた弁護活動を行います詳しくはこちら

 

② 寄付をする

示談が成立しなかった場合、反省の気持ちを示すために慈善団体等へ寄付をすることがあります。公判請求された場合は、寄付したことの証明書を証拠として提出します。

 

 

傷害罪の弁護方針(無罪を主張する場合)

(1)「酒に酔っていて覚えていない」という主張は通用する?

「被害者がけがをした事実」は、被疑者が覚えているかどうかとは関係なく、医師が作成した診断書によって証明されます。また、「被疑者が被害者を暴行した事実」も、現場の防犯カメラや被害者・目撃者の供述調書によって固められてしまいます。

 

「酔っていて覚えていない」という主張を続けて不起訴処分あるいは無罪判決を獲得するのは困難でしょう。かえって検察官や裁判官に「反省していない」と思われ裏目に出ることも少なくありません。

 

 

(2)正当防衛を主張する

最初に相手の方から殴りかかってきたり、凶器を使って攻撃してきた場合は、相手にけがをさせても正当防衛により無罪となる余地があります。弁護士がご本人から事情を聴取し、正当防衛を裏付ける事情があれば、不起訴処分あるいは無罪判決の獲得を目指します。

 

 

(3)傷害の共謀がないことを主張する

傷害の共犯事件において、現場にたまたま居合わせたものの暴行には一切関与していない場合、暴行した人間との共謀が認められなければ傷害罪は成立しません。弁護士がご本人から事情を聴取し、事前の打合せへの参加など共謀を裏付ける事情がなければ、不起訴訴処分あるいは無罪判決の獲得を目指します。

 

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