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逮捕後の流れや釈放のタイミングについてわかりやすく解説

起訴前の流れ(逮捕・勾留あり)

 

 

このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。

 

 

逮捕の種類は?

逮捕とは、逃亡や証拠隠滅を防ぐために強制的に被疑者の身柄を拘束する処分です。逮捕には裁判官の令状が必要な通常逮捕、令状が不要な現行犯逮捕、逮捕後に令状が必要となる緊急逮捕の3つがあります。

 

 

通常逮捕・現行犯逮捕・緊急逮捕は令状の要否やタイミングに違いはありますが、逮捕後の流れについてはいずれの逮捕も同様になります。

 

 

逮捕後の流れ-最長23日の身柄拘束

刑事事件の身柄拘束は逮捕⇒勾留という2段階のステップで進みます。刑事訴訟法という法律で、逮捕は最長3日、起訴前の勾留は最長20日と定められています。

 

 

そのため、逮捕されると最長23日にわたって身柄が拘束されることになります。最長23日の身柄拘束中に警察や検察がひととおりの捜査を行った上で、最後に検察官が被疑者を起訴するか釈放するかを決めることになります。

 

 

この期間内に弁護士は被疑者のために様々な弁護活動を行い、早期釈放や不起訴を目指します。

早期釈放を実現する

不起訴処分を獲得する

 

 

逮捕後の流れ-48時間以内に検察官に送致

警察が被疑者を逮捕すると、被疑者に犯罪事実の要旨や弁護人を選任する権利があることを伝え、弁解の機会を与えます。私人に現行犯逮捕された被疑者を警察官が受けとったときも同様の手続をとります。

 

 

逮捕後に警察が留置の必要がないと判断すると、直ちに被疑者を釈放しなければなりません。

 

 

これに対して、引き続き留置の必要があると判断すると、48時間以内に被疑者の身柄を検察官に引き渡さなければなりません。この引き渡しのことを「送致」といいます。

 

 

送致当日の朝、他の被疑者と一緒に護送バスに乗せられ検察庁に連行されることが多いです。

逮捕後に東京地検に連行されるときの流れ

 

 

実務では、午前8時30分頃より早い時間帯に被疑者を逮捕した場合は翌日に検察官に送致します。午前8時30分頃より遅い時間帯に逮捕した場合は翌々日に送致します。

 

 

逮捕後の流れ-24時間以内に勾留請求or釈放

1.勾留とは

勾留とは逮捕に引き続いてなされる身柄拘束です。逮捕と勾留の一番の違いは期間です。逮捕は最長3日ですが、勾留は原則10日、延長されれば最長20日も続きます。

 

 

勾留によって被疑者は多大な不利益を受けるため、被疑者を勾留するためには、検察官が裁判官に勾留を請求し、裁判官によって勾留の要件を満たすと判断されることが必要です。

 

 

2.勾留の要件

被疑者を勾留するためには、「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」が必要です。その上で、次の3つの要件のいずれかに該当する必要があります。

 

 

① 住居不定

② 罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由がある

③ 逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由がある

 

 

実務でよく問題になるのが、②の証拠隠滅のおそれと③の逃亡のおそれです。

 

 

被疑者が容疑を否認している場合は、証拠隠滅のおそれが大きいと判断されることが多いです。容疑を認めていても、被疑者が被害者の氏名や住所・連絡先などの個人情報を知っていれば、「被害者に会いに行って威迫するのでは?」と疑われ、証拠隠滅のおそれが高いと判断されやすくなります。

 

 

逃亡のおそれについては、犯罪が重大なものであれば刑罰も重くなるので、「重い刑罰から逃れるために逃亡するのでは?」と判断されやすくなります。

 

 

3.検察官の処分

送致を受けた検察官は、警察から引き継いだ捜査資料を読み込んだり、自ら被疑者の取調べを行い、勾留の要件を満たすか否かを検討します。

 

 

検察官が勾留の要件を満たさないと判断すると被疑者を釈放します。護送バスで警察署に戻されてから釈放されるケースと検察庁の庁舎内で釈放されるケースがあります。

【逮捕】勾留されなかったときの釈放の流れ-何時にどこに迎えに行く?

 

 

検察官が勾留の要件を満たすと判断すると、送致を受けたときから24時間以内に裁判官に被疑者の勾留を請求します。

勾留請求とは?流れや阻止する方法について弁護士が解説

 

 

逮捕後の流れ-裁判官の勾留質問

検察官が勾留請求すると、被疑者は裁判所に連行されます。

逮捕後に東京地裁に連行されるときの流れ

 

 

通常は、検察官が勾留請求した当日に裁判所に連行されますが、東京都では被疑者の数が多く1日で検察庁と裁判所の両方に連行することができないため、勾留請求の翌日に裁判所に連行されます。

東京の刑事事件に弁護士がスピード対応

 

 

裁判官は捜査資料を検討した上で、勾留質問という手続で被疑者から直接話を聞き、勾留の要件があるかどうかを審査します。

勾留質問とは?流れや勾留を阻止するための活動を弁護士が解説

 

 

裁判官が勾留の要件を満たさないと判断すれば、検察官の勾留請求を却下します。その結果、被疑者は釈放されます。警察署に戻されてから釈放されるケースと検察庁や裁判所で釈放されるケースがあります。

【逮捕】勾留されなかったときの釈放の流れ-何時にどこに迎えに行く?

 

 

裁判官も勾留の要件があると判断すれば、検察官の勾留請求を許可します。その結果、被疑者は勾留されます。

 

 

勾留を阻止できれば最長3日以内に釈放されることになり、事前に家族から職場に体調不良の連絡をしておけばスムーズに職場に復帰できることが多いです。勾留を阻止できるか否かが本人や家族の人生にとって非常に重要になります。

 

 

逮捕後の流れ-勾留されたらどうなる?

1.勾留は10日が原則

勾留の期間は原則10日です。10日の起算点は検察官が勾留請求した日です。請求当日も1日としてカウントします。

 

 

勾留請求

2月1日

勾留質問

2月2日

勾留満期

2月10日

 

 

検察官は10日の勾留期間内に被疑者を釈放するか、起訴しなければなりません。

 

 

2.勾留が延長されることも

捜査上やむをえない理由があれば、裁判官は検察官の請求により、勾留期間を10日の限度で延長することができます。

勾留延長とは?延長の流れや阻止する方法を弁護士が解説

 

 

勾留が延長された場合、検察官は延長された期間内に被疑者を釈放するか起訴しなければなりません。

 

 

逮捕後の釈放のタイミング-勾留されずに釈放

1.検察官に送致される前に釈放されるケース

警察が逮捕した被疑者の弁解を聞いた上で留置する必要がないと判断した場合は、検察官に送致することなく釈放します。

 

 

釈放のタイミングは逮捕当日です。釈放にあたって、家族や上司に身元引受人として迎えに来てもらいます。

刑事事件の身元引受人とは?必要なケースやデメリット、弁護士費用

 

 

痴漢や万引き等で私人逮捕された被疑者を警察が受けとった場合、逃亡や証拠隠滅のおそれがなければ、検察官に送致せずに釈放します。

現行犯逮捕とは?通常逮捕との違いや現行犯逮捕された時の対処法

 

 

2.勾留請求されずに釈放されるケース

逮捕され検察官に送致されても、検察官が勾留請求をしなければ釈放されます。釈放のタイミングは、午前8時30分より前に逮捕された場合は逮捕の翌日、午前8時30分以後に逮捕された場合は逮捕の翌々日になることが多いです。

 

 

釈放後に警察官に自宅まで送迎され、そのまま家宅捜索されることもあります。

家宅捜索とは?前兆や近所にばれる可能性、対応方法について

 

 

3.勾留請求が却下されて釈放されるケース

検察官が勾留請求をすると被疑者は裁判所に連行され、裁判官の勾留質問を受けます。裁判官が勾留請求を却下した場合は、勾留されずに釈放されます。

 

 

釈放のタイミングは、午前8時30分より前に逮捕された場合は逮捕の翌日、午前8時30分以後に逮捕された場合は逮捕の翌々日になることが多いです。ただし、東京都内の警察に逮捕された場合は、上記よりも1日遅くなります。

 

【勾留請求が却下されて釈放されるタイミング】

 

通常のケース

東京都内

2月1日午後1時に逮捕

2月3日に釈放

2月日に釈放

 

 

釈放された時点で在宅事件に切り替わります。刑事手続が終了するわけではありませんのでご注意ください。何もせずに放置していると検察官から呼び出しがあり、その後に(略式)起訴されることがあります。在宅事件の流れは?逮捕される刑事事件との違いや起訴・不起訴について

 

 

逮捕後の釈放のタイミング-勾留後に釈放

1.裁判所の判断で釈放されるケース

弁護士が裁判所に準抗告を申し立てたり、勾留取消請求をすることによって、釈放されることがあります。準抗告や勾留取消請求が認められると、検察官の勾留請求を許可した当初の裁判が取り消され、被疑者が釈放されます。

準抗告とは?抗告との違いや種類・流れについて解説

勾留取消請求とは?

 

 

2.示談成立により釈放されるケース

被害者との間で示談が成立すれば速やかに釈放されることが多いです。釈放のタイミングは弁護士が検察官に示談書を提出した当日です。午後に提出した場合は翌営業日にずれこむこともあります。

 

 

この場合、不起訴処分となり釈放されるケースと処分保留で釈放されるケースがあります。

 

 

処分保留釈放とは被疑者を起訴するか不起訴にするか決めないまま釈放する手続です。処分保留で釈放された場合、しばらくしてから不起訴になることが多いです。

処分保留釈放とは?タイミングや起訴・不起訴との関係について

 

 

逮捕後の釈放のタイミング-起訴後に釈放

勾留されたまま起訴されると起訴後も勾留が続きます。起訴後の勾留は1か月単位で更新することができますので、判決の日まで更新されていきます。ただ、起訴されると保釈請求をすることができます。

保釈を弁護士に相談-保釈金・申請が通る確率・保釈の流れ

 

 

保釈請求が許可され裁判所に保釈金を納付すると釈放されます。

保釈が許可されてから釈放されるまでの流れ

 

 

逮捕後の流れ-起訴されたらどうなる?

検察官は勾留期間内に被疑者を釈放しないのであれば、必ず起訴しなければなりません。被疑者は起訴されると被告人と呼ばれ、検察官と並んで刑事裁判の当事者になります。

 

起訴には略式起訴と正式起訴の2つがあります。

 

 

略式起訴されると略式裁判という簡易な裁判で審理され、裁判官から罰金または科料の支払を命じられます。金額などが記載された略式命令という書面が被告人に交付されます。略式命令を交付された時点で釈放されます。

逮捕・勾留中に罰金となり釈放される流れ

 

 

正式起訴されると裁判所から起訴状が本人のもとに郵送されます。その後、公開の法廷で事件が審理されます。起訴されてから約1か月半後に初公判が実施されます。

公判の流れ

 

 

逮捕後に不起訴になる確率

身柄事件と在宅事件をあわせた全ての刑事事件の不起訴率は約60%です。

根拠:2022年検察統計年報:罪名別 被疑事件の既済及び未済の人員

 

 

身柄事件は在宅事件に比べて重い犯罪が多くなるため、身柄事件だけに限ると、不起訴率は60%より下がると思われますが、顕著に下がることはないでしょう。

 

 

逮捕の要件は逃亡のおそれと証拠隠滅のおそれですが、これらは起訴するか否かとは無関係だからです。

 

 

逮捕は捜査の初期段階で行われるのに対して、起訴・不起訴は捜査の一番最後になされる処分であり、それぞれの場面で考慮される事情は異なります。そのため、身柄事件の不起訴率も50%を超えると思われます。

 

 

逮捕後に不起訴になるための方法

1.自白事件

被害者がいる事件では、被害者と示談をすることが重要です。示談という形で被害者に許してもらえれば、起訴する必要がないと考えられるので、不起訴の可能性が高くなります。

 

 

捜査機関は被害者の氏名や電話番号を被疑者には教えてくれませんので、示談を希望する場合は弁護士を通じて被害者と交渉することになります。

 

 

薬物事件など被害者がいない事件については、専門のクリニックに通院する等の再犯防止策を実行してもらいます。

 

 

2.否認事件

否認事件では、取調べで「私がやりました」といった自白調書がとられると、嫌疑不十分での不起訴や無罪の獲得が困難になります。

 

 

自白調書をとられないように、弁護士が被疑者と接見し、黙秘権などの重要な権利について説明し、取調べにどう対応すればよいのかをアドバイスします。

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逮捕後の流れ(イメージ)

東京都内の警察に逮捕された場合の流れは以下の通りです。

 

 

手続

釈放のタイミング

6月1日

被疑者を逮捕

 

6月2日

検察庁に連行⇒検察官の取調べ

 

検察官が勾留請求

勾留請求しなければ釈放

6月3日

裁判所に連行⇒裁判官の勾留質問

 

裁判官が勾留請求を許可

勾留請求を却下すれば釈放

↓↓

警察署で取り調べ

①示談が成立すれば釈放される可能性が高くなる。

 

②弁護士が準抗告等を申し立てることにより釈放されることもある。

6月10日

検察官の中間調べ

6月11日

検察官が勾留延長請求

裁判官が延長請求を許可

6月21日

勾留満期(この日までに起訴 or 釈放)

 

 

 

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