業務上横領のご質問2

このページはウェルネス法律事務所の弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。

 

 

Q1-1:勤めていた会社を退職した後に、在職中に業務上横領をしていたことがばれてしまいました。半年前に一度会社から呼び出され、顧問弁護士の調査を受けましたが、その後一切連絡はありません。本日、銀行口座から預金を引き出そうとすると引き出せませんでした。銀行員に聞いたところ利用停止になっているとのことでした。業務上横領と何か関係があるのでしょうか?ちなみに、この件以外に金銭トラブルは一切かかえていません。

元勤務先によって預金口座を仮差押えされている可能性があります。「仮差押え」とは民事裁判後の差押えを可能とするため、裁判前に財産の処分を制約することです。仮差押えは債権者が裁判所に申し立て、裁判所が決定します。 

 

 

Q1-2:実際に仮差押を受けたのかどうかを確認することはできますか?

仮差押決定が出てから約1週間後に仮差押決定書が裁判所から自宅に郵送されます。その決定書に、①債権者、②債権者があなたに対して有する債権、③今回仮差押の対象になった財産が記載されています。

 

業務上横領が原因の仮差押であれば、債権者は元勤務先、債権はあなたが横領した会社の金銭に利息を加えた金額になります。③については決定書に添付されている仮差押債権目録に利用停止になった口座の銀行名と支店名が記載されています。

 

 

Q1-3:放置していればどうなるのでしょうか?

非常に高い可能性で元勤務先から民事裁判を提起されることになります。業務上横領をしていたことが事実であれば、敗訴判決が下された後にあなたの財産が差し押さえられることになります。

 

 

Q1-4:そのような事態を防ぐためにはどうすればよいのでしょうか?

元勤務先と交渉して示談を成立させることです。示談書には、仮差押申立てを取り下げる旨の条項を入れておき、示談成立後に仮差押申立てを取り下げてもらいます。

 

元勤務先としても、早期に示談で解決できるのであれば、民事裁判に要する時間と弁護士費用を節約できるというメリットがあるので交渉の余地はあります。なるべくお早めに弁護士に相談してください。

 

 

Q1-5:他に留意することはありませんか?

もし不動産をお持ちの場合は不動産に対しても同時に仮差押がされている可能性があります。その場合は、裁判所から不動産についての仮差押決定書も届きます。

 

 

Q2-1:会社で横領していたことが発覚して自宅謹慎になっています。私は中退共(抽象企業退職金共済事業)で退職金を積み立ててもらっています。勤続30年で退職金は1000万円以上あるかと思いますが、横領事件を起こした以上、全額カットされますよね?

全額カットすることは認められていません。減額についても、会社が勝手に減額幅を決められるわけではなく、厚生労働省の担当部署が会社や本人に事情を聞いて、個別の事案ごとに減額幅を認定します。減額は最大で80%になります。

 

 

Q2-2:退職金のうち減額されなかった部分は従業員に直接支払われるのですか?それともいったん会社に支払われるのですか?

従業員に直接支払われます。

 

 

Q2-3:退職金のうち減額された部分は中退共から会社に支払われるのでしょうか?

会社に支払われることはありません。中退共の財源になります。

 

 

Q2-4:それでは減額したからといって会社に金銭的なメリットはないということですか?

はい。むしろ減額申請するよりも、従業員にいったん満額を支給させて、そのお金を横領の損害賠償として会社に弁済させる方が、確実な回収が図れるという点で会社にもメリットがあるということになります。

 

ウェルネスの弁護士がそのような交渉を行うことも可能ですし、実際に交渉して満額の支給を実現したことも何度もあります。

 

Q3:同居している妻が業務上横領罪で逮捕・起訴されました。警察の話によれば、勤務先の会社から3年間で4000万円を横領したとのことです。私は家計を妻に任せきりで、妻が横領していたことは全く知りませんでした。私も何らかの責任を負うのでしょうか?

奥様の横領を知らなければ、ご主人が共犯として逮捕・起訴されることはありません。

 

ただ、捜査機関から「本当に知らなかったのか?」と疑われても仕方がない面はありますので、何度か取調べを受けることになるでしょう。取調べの際は、知らないことは知らないときっぱりお話しください。

 

民事上も、横領について過失なく知らなかったのであれば、不法行為責任を負うことはありません。

 

ただ、奥様が横領した金銭でご主人名義の不動産のローンを支払っていた場合は、不当利得返還請求を受ける可能性があります。また、奥様が会社と示談をする際、ご主人が連帯保証人になれば、保証人としての責任を負うことになります。

 

 

 

 

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