暴行罪の被害者が示談しないとどうなる?慰謝料相場や民事訴訟の費用も解説

このページでは暴行罪の被害者を対象として、以下の疑問点についてわかりやすく解説しています。ぜひ参考にしてみてください。

 

 

☑ 示談しないとどうなるか?

☑ 暴行罪の慰謝料の相場は?

☑ 民事訴訟の費用はいくらかかる?

☑ 示談と民事訴訟のどちらにすべき?

 

このページは弁護士 楠 洋一郎が作成しました。

 

 

 

暴行罪の被害者が示談しないとどうなる?

1.刑事事件

暴行罪の被害者が警察に被害届を出すと、刑事事件となり警察の捜査が始まります。この場合、暴行罪の被害者が加害者と示談しないと、加害者が処罰される可能性が出てきます。

 

 

ただ、暴行罪は比較的軽い犯罪であるため、初犯であれば、処罰されるとしても罰金にとどまる可能性が高いです。罰金の最高額は30万円ですが、初犯でいきなり最高額になることは少ないです。

 

 

暴行の手口が悪質であれば、公判請求され拘禁刑になることもありますが、初犯であれば執行猶予がつく可能性が極めて高いです。

 

 

2.民事事件

人に暴力をふるうことは民法上の不法行為(民法709条)に該当するため、被害者は加害者に対して損害賠償請求権を取得します。

 

 

加害者と示談をすれば、通常、示談書には精算条項といって追加の請求ができない条項が入りますので、示談金を受けとればそれ以上の金額を請求することはできません。

 

 

加害者と示談をしなければ、原則どおり加害者に対して損害賠償を請求することができます。請求の方法としては、加害者に内容証明郵便を送って請求したり、民事訴訟を提起することが考えられます。

 

 

暴行罪の慰謝料の相場は?

暴行罪の慰謝料の相場は10万円程度です。

 

 

女性がナンパされている時に手を出されたなど性的な要素がある暴行事件の場合は、上記の相場より高くなることが多いです。DVのケースで何度も暴行を受けた場合も上記の相場より高くなります。

 

 

暴行がきっかけでPTSDを発症した場合は100万円を超えることもありますが、単に「PTSDになりました」という程度では足りず、少なくとも医師の診断書が必要になるでしょう。

 

 

 

暴行罪の民事訴訟の弁護士費用は?

1.民事訴訟の弁護士費用の相場

暴行罪の被害者が民事訴訟を提起する場合、一人で対応することは難しいことから弁護士に依頼することになるでしょう。

 

 

暴行のような不法行為の民事訴訟の費用相場は50万円~100万円です。暴行罪は軽い部類の犯罪ですが、軽いからと言って弁護士の負担も軽くなるわけではないため、20万、~30万円程度で受けてくれる弁護士はなかなかいないでしょう。

 

 

2.加害者から弁護士費用をとれる?

弁護士費用が高くても民事訴訟で加害者から全額回収できるのであれば、被害者にとってデメリットはありません。もっとも、民事訴訟で被害者が負担した弁護士費用の全額が損害として認められるわけではありません。

 

 

暴行のような不法行為の民事訴訟では、加害者が支払いを命じられる弁護士費用の額は、認容額の1割と相場が決まっています。

 

 

例えば、判決で認められた賠償額が20万円、弁護士費用が50万円だとすると、判決で認められる弁護士費用は、50万円ではなく2万円になります(20万円×0.1)。

 

 

そうすると被害者は28万円の赤字となります(22万-50万円)。このように認容額や弁護士費用によっては赤字になることもあります。

 

 

暴行罪の被害者-示談の方が民事訴訟よりメリットが大きい

暴行事件の加害者から慰謝料などのお金をとるための方法として、示談と民事訴訟があります。被害者にとって示談と民事訴訟のどちららよいでしょうか?

 

 

結論から言うと示談の方がメリットが大きいです。理由は以下の3点です。

 

 

1.速やかに示談金をとれる

示談で進める場合は、早ければ数日、通常は1か月程度で話がまとまることが多いです。これに対して、民事訴訟を提起して請求する場合は、判決まで6か月以上かかるのが通常です。1年以上かかることもあります。

 

 

民事訴訟の途中で疲れてしまい「こんなに長くかかるのであれば示談で終わらせておけばよかった」と後悔する方も少なくないようです。

 

 

2.費用倒れになる心配がない

暴行事件の加害者と示談をする場合は、通常、加害者側に弁護士がいますので、その弁護士と交渉することになります。弁護士費用を払うのは加害者です。

 

 

これに対して民事訴訟で進める場合は、被害者が単独で対応するのは難しいため、弁護士に依頼する必要があります。民事訴訟の弁護士費用の相場は、50~100万円です。

 

 

上で述べたように民事訴訟の弁護士費用は認容額の1割しか損害として認められません。暴行事件の慰謝料の相場は10万円前後ですので、民事訴訟を提起すれば多くのケースで大幅な赤字になります。

 

3.柔軟な取り決めが可能

民事訴訟を起こした場合は、金銭での解決しかできません。なぜなら、損害賠償請求訴訟の判決には金銭以外の条件をつけることができないからです。

 

 

これに対して、示談で解決する場合は示談金の支払いだけではなく、被害者の要望をふまえた柔軟なとりきめが可能です。例えば、双方で合意がまとまれば以下のような取り決めも可能です。

 

 

☑ 加害者が被害者に接触・連絡しない

☑ 暴行事件について第三者に言わない(ネットにアップしない)

☑ 加害者が事件の発生現場となった施設に今後立ち入らない

 

 

このように示談で進めた方が民事訴訟よりも柔軟な解決が可能になります。