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逮捕後の流れや釈放のタイミングについてわかりやすく解説
このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。
目次
逮捕後の流れ-警察のタイムリミットは48時間!
警察が被疑者を逮捕したら、釈放するか、48時間以内に被疑者の身柄を検察官に送致しなければなりません。
逮捕⇒48時間以内に釈放or 検察官に送致
逮捕後の流れ-検察官のタイムリミットは24時間!
検察官が警察から被疑者の身柄を受け取ると、釈放するか、24時間以内に裁判官に勾留を請求しなければなりません。
送検⇒釈放or24時間以内に勾留請求
勾留とは逮捕に引き続いてなされる身柄拘束です。逮捕は最長3日ですが、勾留は原則10日、延長されれば最長で20日にもなります。
被疑者を勾留するためには、「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」がなければなりません。その上で、次の3つの要件のいずれかに該当する必要があります。
①住居不定
②罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由がある
③逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由がある
実務でよく問題になるのが②の証拠隠滅のおそれと③の逃亡のおそれです。検察官がいずれかの要件を満たすと判断すると、裁判官に対して勾留を請求します。
検察官が勾留を請求しなければ、被疑者はその日のうちに釈放されます。
⇒【逮捕】勾留されなかったときの釈放の流れ-何時にどこに迎えに行く?
逮捕後の流れ-裁判官の勾留質問
検察官が勾留請求すると、被疑者は裁判所に連行されます。
通常は、検察官が勾留請求した当日に裁判所に連行されますが、東京都では被疑者の数が多く1日では処理しきれないため、勾留請求の翌日に連行されます。
裁判官は捜査資料を検討した上で、勾留質問という手続で被疑者の話を聞き、勾留の要件があるかどうかを審査します。
⇒勾留質問とは?流れや勾留を阻止するための活動を弁護士が解説
裁判官が勾留の要件があると判断すれば、検察官の勾留請求を許可します。その結果、被疑者は勾留されます。勾留の要件がないと判断すれば、検察官の勾留請求を却下します。その結果、被疑者は釈放されます。
⇒【逮捕】勾留されなかったときの釈放の流れ-何時にどこに迎えに行く?
勾留後の流れ
1.最初の勾留
勾留の期間は原則10日です。10日の起算点は検察官が勾留請求した日です。請求当日も1日としてカウントします。
検察官は10日の勾留期間内に被疑者を釈放するか、起訴しなければなりません。
10日以内に釈放 or 起訴
勾留請求 | 2月1日 |
勾留質問 | 2月2日 |
勾留満期 | 2月10日 |
2.延長勾留
やむをえない理由があれば、裁判官は、検察官の請求により、勾留期間を10日を限度として延長することができます。
勾留が延長された場合、検察官は延長された期間内に被疑者を釈放するか起訴しなければなりません。
延長期間内に釈放 or 起訴
逮捕後の流れ-勾留されずに釈放される3つのケース
勾留されずに釈放されるケースは以下の3つです。釈放された時点で在宅事件に切り替わります。刑事手続が終了するわけではありませんのでご注意ください。
⇒在宅事件の流れは?逮捕される身柄事件との違いや不起訴について解説
1.検察官に送致されずに釈放されるケース
司法警察員が逮捕した被疑者の弁解を聞いた上で留置する必要がないと判断した場合は、検察官に送致することなく釈放します。釈放のタイミングは逮捕当日です。家族や上司に身元引受人として迎えに来てもらいます。
⇒刑事事件の身元引受人とは?必要なケースやデメリット、弁護士費用
痴漢や万引き等で私人に現行犯逮捕された被疑者を司法警察員が受けとった場合、検察官に送致せずに釈放することもあります。
⇒現行犯逮捕とは?通常逮捕との違いや現行犯逮捕された時の対処法
2.勾留請求されずに釈放されるケース
逮捕され検察官に送致されても、検察官が勾留請求をしなければ釈放されます。
釈放のタイミングは、午前8時30分より前に逮捕された場合は逮捕の翌日、午前8時30分以後に逮捕された場合は逮捕の翌々日になることが多いです。釈放後に警察官に自宅まで送迎され、そのまま家宅捜索されることもあります。
3.勾留請求が却下されて釈放されるケース
検察官が勾留請求をすると被疑者は裁判所に連行され、裁判官の勾留質問を受けます。裁判官が勾留請求を却下した場合は、勾留されずに釈放されます。
釈放のタイミングは、午前8時30分より前に逮捕された場合は逮捕の翌日、午前8時30分以後に逮捕された場合は逮捕の翌々日になることが多いです。ただし、東京都内の警察に逮捕された場合は、上記よりも1日遅くなります。
【勾留請求が却下されて釈放されるタイミング】
| 通常のケース | 東京都内 |
2月1日午後1時に逮捕 | 2月3日に釈放 | 2月日に釈放 |
逮捕後に勾留を阻止する方法
逮捕されても勾留を阻止できれば、3日以内に釈放されます。勾留を阻止するために、弁護士が検察官や裁判官に以下の書類を提出します。
・勾留の要件を満たさないことを記した意見書
・被害者に接触しない旨の被疑者の誓約書
・家族の身元引受書
逮捕から勾留までは最短1日、最長でも3日(東京)しかありませんので、勾留阻止を狙うのであれば、1日でも早く弁護士に依頼した方がよいでしょう。
⇒逮捕されたらすぐに弁護士を呼ぼう!弁護士費用や呼び方を解説
逮捕後の流れ-勾留されたらどうなる?
被疑者が勾留されると、検察官は勾留期間内に被疑者を釈放するか、起訴しなければなりません。それぞれのケースについて見ていきます。
1.勾留後に釈放されるケース
①示談成立により釈放されるケース
被害者との間で示談が成立すれば速やかに釈放されることが多いです。釈放のタイミングは弁護士が検察官に示談書を提出した当日です。午後に提出した場合は翌日にずれこむこともあります。
この場合、不起訴処分となり釈放されるケースと処分保留で釈放されるケースがあります。
処分保留釈放とは被疑者を起訴するか不起訴にするか決めないまま釈放する手続です。処分保留で釈放された場合、しばらくしてから不起訴になることが多いです。
⇒処分保留釈放とは?タイミングや起訴・不起訴との関係について
②裁判所の判断で釈放されるケース
弁護士が裁判所に準抗告や勾留取消請求をすることによって釈放されることもあります。準抗告や勾留取消請求が認容されると、検察官の勾留請求を許可した裁判が取り消され、被疑者が釈放されます。
釈放されれば在宅事件として捜査が進められます。釈放された時点で刑事手続が終了するわけではありませんのでご注意ください。
⇒在宅事件の流れは?逮捕される身柄事件との違いや不起訴について解説
2.勾留後に起訴されるケース
検察官は勾留期間内に被疑者を釈放しないのであれば、必ず起訴しなければなりません。被疑者は起訴されると、被告人として刑事裁判の当事者になります。起訴には略式起訴と正式起訴の2つがあります。
略式起訴されると略式裁判という簡易な裁判で審理され、裁判官から罰金(または科料)の支払を命じられます。金額などが記載された略式命令という書面が被告人に交付されます。略式命令を交付された時点で釈放されます。
正式起訴されると裁判所から起訴状が留置場に郵送されます。その後、公開の法廷で審理されます。
正式起訴されると起訴後勾留という形で判決まで拘束されます。ただ、起訴されると保釈請求をすることができます。保釈請求が許可され裁判所に保釈金を納付すると釈放されます。
逮捕後に不起訴になる確率
身柄事件と在宅事件をあわせた全ての刑事事件の不起訴率は約60%です。
根拠:2022年検察統計年報:罪名別 被疑事件の既済及び未済の人員
身柄事件は在宅事件に比べて重い犯罪が多くなるため、身柄事件だけに限定すると上記の数字よりやや下がると思われますが、顕著に下がることはないでしょう。
逮捕の要件は逃亡のおそれと証拠隠滅のおそれですが、これらは起訴するか否かとは無関係だからです。
逮捕は捜査の初期段階で行われるのに対して、起訴・不起訴は捜査の一番最後になされる処分であり、それぞれの場面で考慮される事情は異なります。そのため、身柄事件の不起訴率も50%を超えると思われます。
逮捕後に不起訴になるための方法
1.自白事件
被害者がいる事件では、被害者と示談を成立させることが重要です。示談という形で被害者に許してもらえれば、起訴する必要がないと考えられるためです。
前科や前歴がある場合は、専門のクリニックに通院する等の再犯防止策を実行してもらいます。捜査機関は被害者の氏名や電話番号を被疑者には教えてくれませんので、示談を希望する場合は弁護士に依頼して交渉してもらうことになります。
2.否認事件
否認事件では、取調べで「私がやりました」という自白調書がとられると、嫌疑不十分での不起訴や無罪の獲得が困難になります。
弁護士が早期に被疑者に接見し、黙秘権などの重要な権利について説明し、取調べにどのように対応すればよいのかをアドバイスします。
⇒逮捕されたらすぐに弁護士を呼ぼう!弁護士費用や呼び方を解説
逮捕後の流れ(イメージ)
東京都内の警察に逮捕された場合の流れは以下の通りです。
| 手続 | 釈放のタイミング |
6月1日 | 被疑者を逮捕 |
|
6月2日 | 検察庁に連行⇒検察官の取調べ |
|
検察官が勾留請求 | 勾留請求しなければ釈放 | |
6月3日 | 裁判所に連行⇒裁判官の勾留質問 |
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裁判官が勾留請求を許可 | 勾留請求を却下すれば釈放 | |
↓↓ | 警察署で取り調べ | ①示談が成立すれば釈放される可能性が高くなる。
②弁護士が準抗告等を申し立てることにより釈放されることもある。 |
6月10日 | 検察官の中間調べ | |
6月11日 | 検察官が勾留延長請求 | |
裁判官が延長請求を許可 | ||
6月21日 | 勾留満期(この日までに起訴 or 釈放) |
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