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緊急逮捕とは?要件・事例・逮捕後の流れを弁護士が解説
このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。
緊急逮捕とは
緊急逮捕とは、被疑者を逮捕した「後に」逮捕状を請求する身柄拘束です。逮捕状なしで逮捕するという点では現行犯逮捕に似ていますが、最終的には逮捕状が必要になるという点では通常逮捕に似ています。
逮捕状なしで逮捕できるのが現行犯に限られるとすると、重大犯罪の容疑者を見つけた場合でも、現行犯でなければ逮捕状が必要となります。
もっとも、裁判官に逮捕状を請求してから発付されるまで数時間はかかってしまうため、逮捕状を取得するまでの間に、犯人が逃げてしまったり、証拠を隠してしまう可能性が高くなります。
そこで、刑事訴訟法は、一定の要件を満たす場合に限って、現行犯でなくても令状なしで逮捕すること認めています。これが緊急逮捕です。
緊急逮捕の要件
1.6つの要件
緊急逮捕の要件は次の6つです。①から④は逮捕するときの要件、⑤と⑥は逮捕後の要件です。
【逮捕するときの要件】
①死刑、無期、長期3年以上の懲役・禁錮にあたる犯罪であること
②罪を犯したことを疑うに足りる十分な理由があること
③急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないこと
④被疑者に対して容疑の概要と急速を要することを伝えること
【逮捕後の要件】
⑤逮捕後直ちに裁判官に逮捕状を請求すること
⑥裁判官によって逮捕状が発付されること
2.要件①(重大犯罪)について
「死刑、無期、長期3年以上の懲役・禁固にあたる犯罪」の例として以下のような犯罪が挙げられます。
罪名等 | 法定刑 |
詐欺罪 | 10年以下の懲役 |
窃盗罪 | 10年以下の懲役 |
強盗罪 | 懲役5年~20年 |
傷害罪 | 3年以下の懲役、罰金、科料のいずれか |
強制性交等罪 | 懲役5年~20年 |
強制わいせつ罪 | 懲役6月~10年 |
3.要件②(十分な理由)について
令状逮捕の場合、裁判官が逮捕状を発付するためには、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があることが必要とされています。
これに対して、緊急逮捕する場合は、罪を犯したことを疑うに足りる十分な理由があることが必要とされています。
緊急逮捕の「十分な理由」の方が令状逮捕の「相当な理由」よりもさらに嫌疑の程度が高いことを意味します。緊急逮捕は逮捕の時点では令状がないことから、通常逮捕の場合よりも、要件を厳しくして、より慎重な判断を促しています。
4.要件③(緊急性)について
被疑者が逃げたり証拠を隠滅する可能性が高く、逮捕状を請求する時間的な余裕がないことをいいます。
5.要件⑤(逮捕後の令状請求)について
緊急逮捕したときは逮捕直後に逮捕状を請求しなければいけません。はっきりと〇時間以内と決まっているわけではありませんが、実務では1,2時間以内に請求しています。半日以上たってから請求しても裁判官に却下されるでしょう。
6.要件⑥(逮捕後の令状発付)について
裁判官に逮捕状を請求したが却下された場合は、すぐに被疑者を釈放しなければいけません。
緊急逮捕できる人
緊急逮捕できる人は、検察官、検察事務官、司法警察職員に限られます。現行犯逮捕とは異なり、私人は緊急逮捕することができません。
緊急逮捕は、現行犯逮捕よりも要件が厳しくなっており、私人では要件を満たすかどうかを判断することが難しいためです。
緊急逮捕される事例
1.警戒中の警察官にみつかったケース
路上でのひったくりや強制わいせつのケースで、犯人が現場から逃げてしばらくしてから、警戒している警察官に見つかった場合は、緊急逮捕されることが多いです。
時間的にも場所的にも隔たりがあるので現行犯逮捕はできませんが、犯人性を裏付ける証拠があれば緊急逮捕されます。
2.違法な現行犯逮捕のケース
逮捕されると48時間以内に検察庁に連行され、検察官の取調べを受けます。現行犯逮捕された被疑者について、検察官が現行犯逮捕の要件を満たしていないと判断したときは、その場で被疑者をいったん釈放した上で、すぐに被疑者を緊急逮捕します。
緊急逮捕された後の流れ
緊急逮捕された後の流れは、逮捕状請求の手続きを除き、通常逮捕された場合と同じです。
逮捕されてから48時間以内に検察庁に連行され、検察官によって勾留請求されれば、その後に裁判官の勾留質問を受けることになります。裁判官が勾留すべきと判断すれば勾留されます。勾留の期間は原則10日、最長20日です。
裁判官が勾留すべきでないと判断した場合は、検察官の勾留請求が却下され、その日のうちに釈放されます。
緊急逮捕は重大犯罪を対象としているため、勾留される可能性が高くなりますが、事案によっては早期釈放にもちこめるケースもあります。ご家族が緊急逮捕された場合はお早めに弁護士にご相談ください。
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