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弁護士が教える取調べ対応の極意-録音・弁護士の立ち会いは?

弁護士が教える取調べ対応の極意

 

☑ 取調べで何をするの?

☑ 取調べでひどいことをされない?

☑ 取調べにどのように対応すべき?

 

取調べを前にして、このような疑問を抱かれている方もいるでしょう?

 

 

このページでは、刑事事件に詳しい弁護士が取調べを受ける前に知っておいた方がよいことを分かりやすくまとめました。ぜひ参考にしてみてください。

 

 

取調べを受ける義務はある?

1.逮捕・勾留されていない場合

逮捕・勾留されていなければ取調べを受ける義務はありません。警察署や検察庁に出頭する義務もありません。出頭して取調べを受けるにしても、本人の意思でいつでも取調室から出ることができます。

 

 

とはいえ、正当な理由なく警察からの呼出しを断り続けたり、無視し続けていると、逃亡や証拠隠滅のおそれがあると判断され、逮捕されることがあります。

 

 

交通違反といった軽微な事件でも、反則金を払わず、警察からの出頭要請にも応じないと、ある日突然逮捕されることがあります。

 

 

そのため、「病気などの正当な理由がないのにずっと出頭しない」という選択肢はないとお考えください。

 

 

2.逮捕・勾留されている場合

逮捕・勾留されていれば取調べに応じる義務があるとされています。そのため、取調室に入ることを拒否したり、取調中に取調室から自由に退去することはできません。

 

 

学者の世界では、逮捕・勾留されていても取調べに応じる義務はないという見解も有力ですが、実務の世界では、残念ながらそのような運用にはなっていません。

 

 

とはいえ、被疑者の義務は取調室で取調べを受けることのみです。取調官に対して何を話すかは被疑者の自由ですし、取調官の質問に対して答えたくなければ黙秘することもできます。

 

 

また、取調室から自由に退去できないからといって、取調官が何をしてもいいというわけではありません。

 

 

暴行・脅迫を伴う取調べなど、違法な取調べが行われた場合は、その取調べで作成された供述調書を証拠として使えなくなることがあります。

違法収集証拠の排除について弁護士が解説

 

 

取調べの日時を変更できる?

1.逮捕・勾留されていない場合

逮捕・勾留されていなければそもそも取調べに応じる義務はありません。そのため、取調べに応じることを前提に、日時のみ変更するよう求めても全く問題ありません。

 

 

そのあたりのことは警察や検察も心得ていますので、日時の変更を求めれば柔軟に対応してくれます。

 

取調べを土日に変更してもらえる?】

検察庁は土日は閉庁しており、休日当番の職員しかいませんので、土日に変更してもらうことはできません。

 

警察は土日も動いていますが、当直体制になり職員の数が減るため、土日への変更は難しいことが多いです。ただ、取調官が土日に出勤するタイミングにあわせて、取調べを実施してもらえることもあります。

 

 

【取調べを夜間に変更してもらえる?】

会社員であれば、平日の日中は仕事でなかなか警察署や検察庁に行く時間がとれないという方もいるでしょう。

 

検察庁での取調べについては、取調べの開始時刻が午後4時頃までであれば、調整してもらえることが多いです。検察官は午後6時過ぎに退庁する方が多いので、その時間以降に変更してもらうのは難しいでしょう。

 

警察も同様ですが、月に1,2回の宿直当番にあわせて取調べを実施してもらえることもあります。その場合は、夜の時間帯に変更してもらえることもあります。

 

 

もち取調官が日程変更してくれない場合は弁護士に相談してみてください。弁護士が間に入れば取調官も無茶なことは言えなくなります。

 

 

もっとも、既に逮捕状が出ており、出頭後に逮捕する予定であれば、日時をずらすよう申し入れても頑として応じてくれません。

 

 

「今すぐ警察署に来てくれ。」と言われ、変更をお願いしても応じてくれない場合は、逮捕される可能性が十分にあります。このような場合は直ちに弁護士に相談してください。

弁護士が教える逮捕の可能性を知る3つの方法

 

2.逮捕・勾留されている場合

逮捕・勾留されていれば取調べに応じる義務があるとされています。そのため、原則として取調べの日時を変更するよう求めることはできません。

 

 

もっとも、体調不良で事実上取調べを受けることが難しいときは、柔軟に対応してもらえます。

 

 

また、取調べと弁護士の接見がバッティングするときは、通常、取調べを中断したり、時間をずらしてもらうことができます。

 

 

被疑者が接見という形で弁護士とコミュニケーションをとることは、憲法で保障された権利であり、捜査機関としても接見の機会をなるべく尊重することが求められているためです。

 

取調べの回数は?

痴漢、盗撮、暴行、窃盗(万引き)などの軽微な事件で、容疑を認めている場合の取調べの回数は以下のようになります。重大事件や否認事件の取調べはより多くなる傾向があります。

 

 

1.逮捕されていない場合

(1)警察での取調べ

検挙当日の取調べを含め2,3回取調べが行われることが多いです。

 

 

(2)検察での取調べ

書類送検後に1回取調べが行われることが多いです。

 

 

2.逮捕されている場合

(1)警察での取調べ

逮捕当日の弁解録取といわれる取調べを含め、2~4回取調べが行われることが多いです。勾留されずに釈放された場合は、警察での取調べは逮捕当日を含め1,2回になるのが一般的です。

 

 

(2)検察での取調べ

逮捕の翌日または翌々日に検察庁に連行され、最初の取調べ(弁解録取)が行われます。

 

 

10日満期の直前に2回目の取調べが行われます。この取調べのことを「中間調べ」といいます。勾留が延長されると延長満期の直前に3回目の取調べが行われます。

 

 

勾留されずに釈放された場合は、弁解録取が1回、釈放後に1回取調べが行われることが多いです。

 

 

取調べの内容は?

1.警察の取調べ

警察の取調べは、刑事ドラマに出てくるような小さな取調室で行われます。ここに入るだけでも相当の圧迫感を受けるでしょう。

 

 

取調室の中に小さな机があり、取調官が入口に近い方の席に座ります。被疑者は奥の席に座るよう指示されます。

 

 

取調べが始まると、「私がやったこと」というタイトルで、被疑者自身が事件の内容をボールペンで書くよう求められます。これは、供述調書ではなく上申書といいます。

 

 

その後、取調官から、刑事事件の詳しい状況や動機、生活状況などをヒアリングされ、供述調書が作成されます。

 

 

供述調書には身上調書と事件調書があります。身上調書には被疑者のプロフィールが書かれ、刑事事件の内容は記載されません。

 

 

【身上調書に書かれること】

出生地、勲章・年金の有無、家族構成、学歴・職歴、資産・収入、趣味、免許・資格、前科・前歴、健康状態、身長、体重、血液型、視力、利き腕、足のサイズ、刺青の有無、暴力団に知り合いがいるか否か

 

刑事事件の内容は、身上調書ではなく事件調書に記載されます。一般的に供述調書といえば事件調書のことをいいます。

 

 

取調べのたびに必ず供述調書が作成されるわけではありません。最初の取調べで一気に調書を作成してしまうこともありますし、まずは取調官が被疑者から事情を聴き取ってメモをとっていき、次の取調べで供述調書を作成するケースもあります。

 

 

2.検察の取調べ

検事や副検事が取調べを担当するときは、補佐役の検察事務官が検事や副検事の言ったとおりにパソコンで入力していき、供述調書を作成します。

 

 

検察官事務取扱検察事務官が取調べを担当するときは、補佐役の事務官がいませんので、一人で事情聴取をしてパソコンで供述調書を作成していきます。

 

 

検察官は、警察で作成された供述調書をあらかじめ確認した上で取調べを実施しますので、警察の取調べよりも短時間で終了することが多いです。

 

 

検察の取調べで略式手続についての説明があれば、放置していると最短で数日中に略式起訴されます。このような場合は直ちに弁護士にご相談ください。

略式裁判とは?罰金の金額や払えない場合について弁護士が解説

 

 

[取調べ中にカツ丼は出る?タバコは吸える?]

取調官が取調べ中にカツ丼などの出前をとってくれることはありません。ひと昔前はそのようなこともあったようですが、現在は、「被疑者に対する便宜供与」として許されていません。同様にタバコを吸わせてくれることもありません。

 

ただ、逮捕・勾留されていなければ、取調官に休憩を申し出て、喫煙室等で自分のたばこを吸うことは可能です。また、白湯であれば頼めば出してくれることもあります。

 

 

取調べで黙秘するとどうなる?

否認事件の取調べでは、自白調書をとられないようにするため、黙秘権を行使することが重要です。

 

 

黙秘権とは言いたくないことを言うように強制されない権利です。黙秘権を保障するため、取調官は、取調べを始める前に、被疑者に対して、自己の意思に反して供述する必要がないことを告げなければいけません(刑事訴訟法198条2項)。

 

 

このように取調べにおいて黙秘権は保障されていますが、これは建前です。

 

 

実際に取調べで黙秘すると、取調官から「どうして黙秘するんだ?」、「黙秘してると刑が重くなるぞ。」、「お前、反省してないだろ!」等としつこく攻撃され、大きなプレッシャーを受けることになります。

 

 

容疑を否認している場合は、取調べで黙秘するとどうなるか?を事前によく理解しておき、プレッシャーにさらされても安易に自白しないよう注意してください。具体的な対応については弁護士に相談するとよいでしょう。

否認事件の刑事弁護

 

 

取調べで供述調書にサインしないといけない?

取調官は被疑者に対して供述調書に署名・押印するよう求めます。被疑者が供述調書に署名・押印すると、裁判になったときに、検察官から証拠として提出されることが多いです。

 

 

逆に署名・押印のない供述調書が証拠として提出されることはありません。それでは、被疑者は供述調書に署名・押印しないといけないのでしょうか?

 

 

結論からいうと、署名・押印する義務はありません。そのような義務がないことは、刑事訴訟法の条文から明らかです。

 

 

【刑事訴訟法198条5項】

被疑者が、調書に誤のないことを申し立てたときは、これに署名押印することを求めることができる。但し、これを拒絶した場合は、この限りでない。

 

 

自白事件で調書に誤りがない場合は、署名・押印しても問題ありません。署名・押印を拒否した方がよいのは、否認事件で供述調書が作成された場合です。

 

 

例えば、合意の上で女性と性交したのに後から強制性交で被害届を出されたケースでは、性交にいたる経緯を取調官に説明する一方で、調書に署名・押印しないという対応をとることが多いです。

 

 

調書に署名・押印しない理由は、起訴前の時点では弁護士が調書を確認することができず、署名・押印しても不利益がないかどうかがわからないからです。

 

取調べを録音できる?

取調べの状況を携帯電話やボイスレコーダーで録音しておきたいと考える方もいるでしょう。

 

 

取調べを始める前に、被疑者は、取調官から携帯電話やボイスレコーダー等の録音機材を目の前に出すように求められます。取調官は機材の電源をオフにしてタッパーに入れたり、ロッカーに保管してから取調べを始めます。

 

 

被疑者が「携帯電話を出したくない。」と拒んでも、事実上出すように説得されてしまいます。

 

 

もし捜査員にボイスレコーダー等の録音機材が発見されなければ、録音したことが後日発覚しても、それだけで犯罪になったり、不利な処分を受けることはありません。

 

 

否認事件などで取調べの状況を保全する必要がある場合は、弁護士が警察や検察に対して、取調べ状況を録音・録画するように要請します。

 

 

裁判員裁判の対象事件や検察官の取調べについては、弁護士が要請しなくても、録音・録画されることが多いです。

 

 

違法な取調べが行われたら?

違法な取調べによって自白調書が作成され、それが裁判の証拠になってしまうと、冤罪が生まれてしまいます。自白調書をとるために違法な取調べが常態化するおそれもあります。

 

 

そのため、違法な取調べによってなされた自白は証拠から排除されるべきです。このような視点から、刑事訴訟法は、証拠とすることができない自白の例として次の5つを挙げています。

 

①強制による自白

②拷問による自白

③脅迫による自白

④不当に長く抑留または拘禁された後の自白

⑤その他任意にされたものでない疑いのある自白

 

①から④は比較的イメージしやすいと思います。

 

 

⑤については、法律の言い回しは漠然としていますが、判例で以下の取調べで得られた自白について、⑤に該当するとされています

 

 

【任意性を欠く取調べの例】

黙秘権を告知しないで行った取調べ

弁護士を選任する権利を告知しないで行った取調べ

弁護士との接見を不当に制限して行った取調べ

法律上、執行猶予がありえないのに、執行猶予が確実であると嘘をついて行った取調べ

「認めれば不起訴にしてやる」と言って行った取調べ

手錠をかけたまま行った取調べ

共犯者も自白していると嘘とついて行った取調べ

徹夜で長時間連続して行った取調べ

被疑者の病気を無視して行った取調べ

妊娠中の被疑者に対する連日長時間の取調べ

 

逮捕・勾留中にこのような取調べが行われた場合は、詳細を被疑者ノートに記録し、接見の際に弁護士に報告してください。

被疑者ノートは逮捕・勾留された被疑者の必須ツール

 

 

逮捕・勾留されていない場合は、取調べ終了後に弁護士に状況を報告してください。弁護士が、警察署長や検察官に抗議したり、刑事裁判で、そのような取調べで作成された自白調書を証拠にしないよう主張します。

違法収集証拠の排除について弁護士が解説

 

取調べに弁護士は立ち会える?

弁護士であっても取調べに立ち会うことはできません。ただ、逮捕・勾留されていない場合は、いつでも取調べを中断してもらい取調室の外に出ることができるので、弁護士が同行していれば、随時アドバイスを受けることができます。

 

 

【弁護士にアドバイスを受ける流れ】

①取調官に「弁護士と話したいので取調べを中断してください。」と言う

②取調べを中断してもらい取調室の外に出る

③近くで待機している弁護士に相談する

④相談が終わったら取調室に戻る

 

 

【弁護士が取調べに同行した方がよいケース】

・容疑を否認している

・パニック障害等の精神疾患にかかっている

・高齢者、少年

 

 

取調べにどう対応すべき?

取調官は、被疑者の話を正確に供述調書に反映してくれるわけではありません。

 

 

取調官は被疑者を有罪にもちこむために都合のよい調書を作成しようとします。都合のよい調書を作るために、被疑者に自白を迫ったり、ニュアンスを変えて実際より悪く見せようとすることがよくあります。

 

 

供述調書は、刑事裁判の証拠になり得るため、不利な調書をとられないようにする必要があります。そのため、取調べを受けるときは次の3つのポイントを頭にとどめておいてください。

 

 

①供述調書に誤りがある場合は訂正を求めることができる。

②供述調書に署名・押印する義務はない。

③黙秘権があるので言いたくないことは言わなくてもよい。

 

 

【自白事件について】

供述調書に署名・押印する前に、内容に誤りがないか自分の目でよく確認してください、もし誤りがあれば、取調官に訂正するよう求めてください。

 

 

訂正してくれなければ、その場で調書に署名・押印せず、取調べが終わった後に弁護士に相談してください。

 

 

【否認事件について】

否認事件の場合は、自白調書をとられないようにするために黙秘するのが原則です。取調官に指摘しておいた方がよいことがある場合は、被疑者が発言することもありますが、供述調書に署名・押印はしないでください。

 

 

上記はあくまでも一般論です。個別の対応については事前に弁護士に相談されるとよいでしょう。否認している場合は、できれば弁護士に同行してもらった方がよいでしょう。

  

 

取調べ同行の弁護士費用

☑ 一人で取調べを受けるのが不安

☑ 最後まで黙秘を貫きたい

☑ 取調べ中に弁護士に相談したい

 

 

このような方は弁護士に取調べに同行してもらうとよいでしょう。

 

【ウェルネスの同行費用】

11万円(税込)

 

 

*ご依頼中の方は5万5000円(税込)で対応しております。

*対応エリアは、東京・埼玉・千葉・神奈川の警察署・検察庁です。

*それ以外のエリアでも対応可能ですが、上記の費用とは別に交通費と日当が発生します。

 

 

弁護士の取調べ同行を検討されている方は、お気軽にウェルネス(03-5577-3613)へお電話ください。

 

このページはウェルネス法律事務所の弁護士 楠 洋一郎が執筆しました。

 

 

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