住居侵入

このページはウェルネス法律事務所の弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。

 

 

住居侵入の刑罰

住居侵入の刑罰は3年以下の懲役または10万円以下の罰金です。

 

 

住居侵入の「住居」とは

住居とは、戸建ての住宅やマンションの一室など、人が生活している場所をいいます。たまたま侵入時に誰もいなかったとしても、現に生活に利用されていれば、「住居」に該当します。

 

住居として作られたが、現に生活に利用されていない建築物は、「住居」ではなく「邸宅」になります。空き家やシーズンオフの別荘がこれに当たります。

 

店舗や事務所、役所、学校など、住居・邸宅以外の施設は「建造物」になります。

 

住居・邸宅・建造物のいずれも室内だけではなく敷地も含みます。邸宅侵入も建造物侵入も刑罰は住居侵入と同じです。

 

*このページでは特にことわりがない限り、邸宅侵入・建造物侵入を含めて住居侵入と表記しています。

 

 

住居侵入の要件

住居侵入の要件は次の通りです。

①住居または人の管理する邸宅、建造物、艦船に侵入すること

②侵入する正当な理由がないこと

 

住居以外の施設については、人が管理していることが必要です。

 

 

住居侵入と逮捕

平成28年に警察が認知した住居侵入事件の逮捕率は54%です。

 

侵入直後に取り押さえられた場合は、本人が侵入の事実や侵入目的を認めていれば、逮捕されない可能性も十分にあります。その場から逃げた後、後日、警察に特定された場合は、逮捕される可能性が高くなります。

 

また、敷地やベランダにとどまらず室内に侵入したケースや、何度も繰り返し侵入しているケースでは逮捕される可能性が高まります。室内に侵入した後、窃盗や強制わいせつなど、目的としていた犯罪を実行していれば、逮捕される可能性が極めて高くなります。

 

 

住居侵入の刑事処分

住居侵入で不起訴となる確率は58%です。起訴された住居侵入のうち略式請求は39%、公判請求は61%です。

 

初犯の場合は、示談が成立すれば不起訴となる可能性が高いです。示談が成立しなければ、略式請求され罰金となる可能性が高くなります。初犯であっても繰り返し侵入しているケースではいきなり公判請求されることもあります。

 

最高刑が懲役3年(=執行猶予を付けられる上限の年数)ですので、初犯で実刑になることはまずないでしょう。もっとも、住居侵入後に窃盗や強制わいせつなど別の犯罪を実行している場合は、初犯で実刑になることも考えられます。

 

 

住居侵入と他の犯罪の関係

どちらの犯罪も成立する。

住居侵入は、それ自体が目的というよりも、窃盗や強制わいせつなど他の犯罪の手段として行われることが多いです。侵入後に目的の犯罪を実行した場合、住居侵入罪と目的の犯罪の両方が成立します。

 

どちらの犯罪も立件されるとは限らない

両方の犯罪が成立するからといって、どちらも立件されるとは限りません。

 

盗撮目的で店のトイレに侵入しカメラを設置したケースでは、被害者自身が盗撮されていることに気づいて通報した場合など、被害者が特定されている場合は、建造物侵入に加えて、迷惑防止条例違反や軽犯罪法違反でも立件されることが多いです。

 

これに対して、カメラに誰も写っていなかったり、写ってはいるけれども被害者を特定できない場合は、建造物侵入罪のみで立件されることが多いです。

 

店で万引きをした場合、通常、建造物侵入では立件されませんが、民家に侵入して金品を盗んだ場合は、住居侵入窃盗として、住居侵入でも立件されます。プライバシー侵害という面は、窃盗だけでは評価しきれないからです。

 

2つの刑罰が合算されるわけではない

住居侵入罪と目的の犯罪が共に起訴され、有罪判決を受けた場合でも、刑罰については、2つの刑罰が合算されるのではなく、2つの犯罪のうち重い方の刑罰のみ適用されます。

 

刑法で、二つの犯罪が手段と目的の関係にあるときは、最も重い刑罰によって処断すると定められているためです(牽連犯)。

 

(具体例)

①住居侵入後に物を盗んだケース

住居侵入罪と窃盗罪が成立しますが、重い窃盗罪の刑罰(10年以下の懲役or50万円以

下の罰金)のみが適用されます。

 

②東京都内で民家の敷地に侵入した後に浴室を覗いたケース

住居侵入罪と軽犯罪法違反(拘留または科料)が成立しますが、重い住居侵入罪の刑罰(3年以下の懲役or10万円以下の罰金)のみ適用されます。

 

 

住居侵入と自首

住居侵入で自首を検討すべきケースとして以下のような例が挙げられます。

 

①盗撮目的で飲食店やコンビニ、勤務先のトイレにカメラを設置→施設の従業員や利用者にばれて、カメラを残してその場を立ち去ったケース

施設の防犯カメラに自分がトイレに侵入する姿が写っていたり、カメラを設置する際に自分の顔が写りこんでいたりすると、捜査機関に足がつく可能性が高まります。

 

②同じマンションの室内に入ったケース

意外に多いのが、同じマンション内での住居侵入のケースです。男性が興味本位で若い女性の部屋に侵入するケースが多いです。ベランダ越しに侵入したり、ポストに入っていた隣人の鍵をとって侵入することが考えられます。

 

侵入中やその前後に住人や他の入居者に見つかった場合は、検挙される可能性が高くなります。誰かに見られたわけではなくても、マンション内の防犯カメラによって発覚する可能性が十分にあります。

 

③前科・前歴のある方が住居侵入したケース

前科・前歴のある方は、捜査機関のデータベースに指紋情報が登録されています。施設の構造物やトイレの中に遺留したカメラに自分の指紋が付いていれば、特定される可能性が高くなります。

 

 

住居侵入と示談

住居侵入罪は、社会の平穏を害する犯罪という側面もありますが、現在では、被害者の意思やプライバシーを侵害する犯罪として捉えられています。そのため、不起訴や執行猶予を獲得するためには、被害者と示談をすることが最も有効です。

 

示談の相手方は被害届を提出した方になります。

 

商業施設への侵入の場合は、店長や支配人などその施設の管理責任者が被害届を出しています。

 

民家への侵入のケースでは、世帯主の方が被害届を出されていることが多いです。

 

賃貸マンションに侵入した場合は、マンションのオーナーではなく賃借人が被害届を出しているはずです。マンション共用部に侵入した場合は、管理会社の責任者が被害届を出していることが多いです。

 

賃貸マンションの室内に侵入した場合、通常被害者は転居を希望されることが多いため、慰謝料に加えて、転居費用を支払う必要がある場合が多いです。

 

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