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当番弁護士とは?逮捕後すぐに呼べる無料の弁護士を活用しよう!
このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。
目次
当番弁護士とは?
当番弁護士とは、弁護士会から留置場に派遣され、逮捕された被疑者と接見してくれる弁護士です。当番弁護の制度は、逮捕された方が速やかに弁護士のサポートを受けられるよう弁護士会によって創設されました。
各弁護士会には当番弁護士の名簿があります。名簿に登録された弁護士は、弁護士会から特定の日に待機するよう指示されます。
被疑者が当番弁護士を依頼すると、弁護士会がその日に待機している弁護士の中からランダムに1名を選んで、被疑者と接見するよう指示します。指示を受けた弁護士は、通常24時間以内に被疑者と接見します。
当番弁護士と国選弁護人の違いは?
当番弁護士と国選弁護人の違いを整理すると以下のようになります。
| 当番弁護士 | 国選弁護人 |
運営主体 | 弁護士会 | 国 |
弁護士費用 | 常に無料 | 無料になることが多い |
資力要件 | なし(誰でも呼べる) | あり(資産が50万円以上あると原則呼べない) |
呼べるタイミング | 逮捕後 | 勾留後 |
弁護士を選べる? | 選べない | 選べない |
継続的に活動できる? | できない(接見1回のみ) | できる |
当番弁護士の費用は?
当番弁護士の費用は無料です。国選弁護人と異なり資力要件はありません。そのため、資産の有無や程度にかかわらず、誰でも無料で当番弁護士を呼ぶことができます。
無料といっても弁護士がボランティアで動いてくれるわけではありません。当番弁護士として接見した弁護士には弁護士会から日当が支給されます。金額は1万円程度です。
当番弁護士はいつ呼べる?
当番弁護士は逮捕されればいつでも呼ぶことができます。国選弁護人は勾留された後でないと呼べませんので、当番弁護士の方が対応が早いと言えます。当番弁護士は逮捕されればいつでも呼ぶことができますが、逮捕されていなければ呼ぶことはできません。
私選弁護人であれば、逮捕されていなくても依頼することができますので、当番弁護士よりカバーする範囲が広いと言えます。
当番弁護士の呼び方は?
当番弁護士は逮捕された被疑者本人が呼ぶこともできますし、家族や友人が呼ぶこともできます。当番弁護士の呼び方は以下の通りです。
1.被疑者が呼ぶ方法
被疑者が当番弁護士を呼ぶためには、捜査員や留置担当の職員に「当番弁護士を呼んでください。」と声をかけるだけです。あとの手続きは警察署や弁護士会の職員がしてくれます。
2.家族や友人が呼ぶ方法
当番弁護士は家族や友人が呼ぶこともできます。家族や友人が当番弁護士を呼ぶためには弁護士会に電話をして当番弁護士の派遣を依頼することになります。
電話をかける弁護士会は被疑者の留置先を管轄している弁護士会です。例えば、東京に住んでいる方が神奈川の警察署で逮捕されたときは、神奈川県弁護士会に電話をすることになります。
弁護士会に電話すると以下の事項について確認されるので、あらかじめ整理しておくとスムーズに進むでしょう。
【被疑者の情報】
・被疑者の氏名、生年月日
・被疑者が留置されている警察署
・逮捕された犯罪名
・逮捕された日
【依頼者の情報】
・本人の氏名
・被疑者との関係
・連絡先
当番弁護士は休日でも呼べる?
1.被疑者は休日でも呼べる
被疑者は休日でも当番弁護士を呼ぶことができます。休日に当番弁護士を呼んだ場合、平日と同様の流れで手続が進んでいきます。
休日であっても当番弁護士の待機日になっていますので、弁護士会が当番弁護士に電話して接見を指示します。多くの弁護士は休日であっても接見に来てくれるでしょう。
2.家族や友人も呼べる
被疑者の家族や友人も休日に当番弁護士を呼ぶことができます。多くの弁護士会では、休日は留守番電話による受付で対応しています。留守番電話に指定された情報を吹き込むと、折り返し電話がかかってきます。
東京で当番弁護士を呼ぶには?
☑ 家族が逮捕された
☑ 東京の警察署に留置されている
☑ 当番弁護士を呼びたい
そのような場合は以下の弁護士会の受付窓口に電話してください。
03-3580-0082 |
*休日でも対応しています。
*受付時間は10時~17時です。
*時間外は留守番電話での対応になります。
東京には4つの弁護士会(東京弁護士会、第一東京弁護士会、第二東京弁護士会、東京三弁護士会多摩支部)がありますが、当番弁護士の窓口は一本化されています。
【留置先が東京以外の場合】
日本弁護士連合会がホームページで全国の弁護士会の連絡先を案内していますので、対応する窓口にお電話してください。
当番弁護士ができることは?
1.取調べにどう対応すればよいか助言してくれる
逮捕されればすぐに取調べが始まります。取調べで話した内容は供述調書として証拠化されます。不利な供述調書をとられると無罪を主張することが困難になったり、想定以上に処分が重くなることがあります。
そのようなことにならないよう、当番弁護士が取調べにどのように対応すればよいかをアドバイスします。
2.今後の刑事手続の流れを教えてくれる
当番弁護士が刑事手続の流れについて教えてくれます。犯罪の内容や容疑を自白しているか否認しているか、前科の有無などによって想定される流れは異なってきます。
刑事手続を熟知した当番弁護士であれば、被疑者の置かれた状況をふまえた上で今後の流れや取るべき対応を教えてくれるでしょう。
当番弁護士-2回目の依頼はできる?
当番弁護士の活動は接見1回で終了します。「弁護士1人あたり接見1回」ではなく「被疑者1人あたり接見1回」になりますので、既に当番弁護士に依頼して接見が終了している場合、2回目の依頼はできません。
1回目の依頼は被疑者、2回目の依頼は家族というように依頼者を変えても、2回目の依頼はできません。有料で依頼することもできません。
当番弁護士ができないこと
当番弁護士は被疑者と接見してくれますが、接見の回数は1回のみで、継続的に活動してくれるわけではありません。そのため、以下の活動はしてくれません。
①早期釈放に向けた活動
②被害者との示談交渉
③不起訴獲得に向けた活動
当番弁護士の意義は「逮捕直後に無料でアドバイスをもらえる」という点にあります。使い勝手はよいですが限界もありますので、多くを期待するのではなく割り切って利用するとよいでしょう。
当番弁護士の接見後はどうする?
当番弁護士と1回接見して、「この人に弁護してもらいたい」と思った場合は、以下の2つの方法のいずれかにより、引き続きその弁護士に弁護してもらうことができます。
1.私選弁護人として依頼する
当番弁護士は無料で1回接見してくれるだけですので、継続的な弁護を受けたい場合は、私選弁護人として依頼する必要があります。
弁護士費用は接見中に当番弁護士と話し合って決めることになります。被疑者は身柄拘束されているため、依頼してもすぐに弁護士費用を払うことはできません。そのため、弁護士が被疑者の家族に事情を説明して、家族に費用を払ってもらうケースが多いです。
2.国選弁護人になってもらう
資産が50万円未満で私選弁護人の弁護士費用を支払うことが困難な場合は、当番弁護士にそのまま国選弁護人になってもらうことができます。
国選弁護人に選任されるのは勾留された後になります。そのため勾留前の弁護活動を依頼するためには、私選弁護人として依頼するしかありません。
もっとも、資産が50万円未満であれば、日弁連の「刑事被疑者弁護援助制度」を利用することにより、弁護士会から費用の援助を受けることができます。
当番弁護士のデメリットは?
1.弁護士を選べない
当番弁護士は弁護士会によって当番名簿からランダムに選ばれます。依頼する側で「刑事事件に強い弁護士にしてください」等と注文をつけることはできません。
弁護士であれば誰でも当番名簿に登録してもらうことができるため、当番弁護士の中には刑事弁護の経験があまりない弁護士や熱意に欠ける弁護士もいるようです。
2.接見1回で仕事は終わり
上で説明したように当番弁護士の業務は初回接見のみです。そのため、アドバイス程度しか期待できません。
継続的な弁護活動は国選弁護人か私選弁護人しかできませんので、当番弁護士はこれらへの橋渡しという位置づけになります。
3.依頼しても受けてもらえない!?
当番弁護士に私選弁護人や国選弁護人になってもらえれば、継続的に弁護してもらうことができます。もっとも、これは建前であり、実際は弁護を依頼してもやんわり断られてしまうことが少なくありません。
弁護士会のなかには、公益活動の一環として当番名簿への登録を求めているところもあり、「やりたくないが仕方がないのでやっている」という弁護士も一定数いるからです。
【逮捕された方へ】当番弁護士の活用方法はこれだ!
【ステップ1】当番弁護士を呼ぶ
逮捕されたらまずは当番弁護士を呼びましょう。当番弁護士は逮捕されたらすぐに呼べるので、その利点を最大限活かすため、逮捕されたらできるだけ早く、警察官に「当番弁護士を呼んでください」と言ってください。
接見に来た当番弁護士と実際に話をして「この人に弁護してもらいたい。」と思ったら、弁護を依頼してください。当番弁護士が依頼を受けてくれれば、引き続き私選弁護人または国選弁護人として弁護してくれます。
逆に「この弁護士で大丈夫なんだろうか?」と不安に思ったり、当番弁護士から依頼を断られてしまった場合は、次のステップ2に進んでください。
【ステップ2】国選弁護人を呼ぶ
国選弁護人には以下のようなデメリットがあるので、弁護士費用を準備できるのであれば私選弁護人がおすすめです。
【国選のデメリット】
①弁護士を選べない
②初動が遅い(勾留されてから活動スタート)
③釈放された時点で業務が終了する
とはいえ、ご本人は逮捕されていますので、自分で私選弁護人を探して依頼することはできません。勾留前は家族との面会もできませんので、「家族が私選弁護人を探しているか否か」もわかりません。
そのため、とりあえずは国選弁護人を呼びましょう。国選弁護人を呼べるのは最速で勾留請求された後です。検察官に勾留請求されれば、その日のうちに国選弁護人を呼ぶようにしてください。
国選弁護人の呼び方は捜査官や留置の職員に「国選を呼んでください。」と言うだけです。あとは裁判所や法テラスで手続きをしてくれます。
【ステップ3】私選弁護人に依頼する
国選弁護人を呼べば遅くとも翌日の夜までには接見に来てくれるでしょう。その前後に家族が派遣した私選弁護人が接見に来てくれれば、私選弁護人に依頼することになります。
私選弁護人に依頼すると国選弁護人は解任されます。私選弁護人が接見に来てくれなければ、そのまま国選弁護人に弁護活動をしてもらうことになります。
知り合いの弁護士に私選弁護をお願いしたいという場合は、留置の職員を通じて、その弁護士に接見を依頼することになります。
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