傷害

このページはウェルネス法律事務所の弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。

 

 

傷害と刑罰

人の身体を傷害すると傷害罪が成立します。刑罰は15年以下の懲役または50万円以下の罰金です。

  

傷害とは

傷害罪の「傷害」とは、人の生理的機能に障害を与えることとされています。この考えによれば、骨折や打撲、すり傷などの「けが」は問題なく傷害にあたります。

 

また、「けが」だけではなく、めまいや失神、PTSD、薬物による中毒症状を生じさせた場も、「生理的機能に障害を与えた」といえることから、傷害罪が成立します。

  

傷害の方法

傷害の方法としては、殴る蹴るといった暴行によることが一般的ですが、暴行に限られるわけではありません。

 

例えば、無言電話により神経衰弱にさせた場合や、隣の家に向けて大音量でラジオを鳴らし、被害者に頭痛や睡眠障害を負わせることも傷害行為にあたります。

 

傷害の意図は必要か?

傷害罪が成立するためには、暴行する意図があれば足り、傷害の意図までは必要ありません。

 

例えば、「口論相手の肩をおしたところ、その相手がバランスを崩し転倒してけがをした。」というケースでは、「肩をおす」という暴行の意図は認められますので、けがをさせるつもりがなかったとしても傷害罪が成立します。

 

傷害と民事裁判

被害者のけがが軽ければ、民事裁判になる可能性は低いですが、けがが重ければ、治療費や休業損害、逸失利益、慰謝料などを民事裁判で請求される可能性が高くなります。

 

むち打ち症の場合、診断書上は全治2週間程度になることが多く、軽症の部類になりますが、症状が長期化するケースが多いため、民事裁判になる可能性が十分にあります。民事裁判は刑事手続とは別に進行します。もし裁判になれば終結まで数か月はみておく必要があるでしょう。

 

被害者と示談をしておけば、民事事件についても解決したことになるので、後日、予測不能な後遺症が発生した場合を除いて、民事裁判になることはありません。

刑事事件と民事裁判

 

より重い傷害罪

(1)凶器による傷害罪

凶器を使ってけがをさせた場合は、凶器使用傷害罪が成立します。刑罰は懲役1年~15年です。素手の場合よりも危険性が高いことから、通常の傷害罪より刑罰が重くなります。

 

(2)常習者による傷害罪

暴行・傷害の常習者が傷害罪を犯した場合、常習傷害罪が成立します。刑罰は懲役1年~15年です。常習者は、より大きな非難に値するため、通常の傷害罪よりも刑罰が重くなります。

 

傷害罪の関連犯罪

(1)故意でけがをさせたとき

殺意をもって人にけがをさせたが死亡には至らなかったときは、傷害罪ではなく殺人未遂罪(死刑、無期懲役、5年以上の懲役のいずれか)が成立します。殺意なく人にけがをさせ、結果的に死亡させたときは、傷害致死罪(3年以上の懲役)が成立します。

 

(2)過失でけがをさせたとき

自動車事故で人にけがをさせたときは、過失運転致傷罪(7年以下の懲役または禁錮、100万円以下の罰金のいずれか)が成立します。薬物を使用しての運転など状況によっては危険運転致傷罪(最高刑…懲役15年)が成立します。

 

傷害で逮捕された確率は57%【2017】

2017年に刑事事件として処分された傷害事件のうち、被疑者が逮捕されたケースは57%です。路上で被害者に暴力を振るいけがをさせてしまった場合、そのまま逮捕されてしまうことが少なくありません。傷害で逮捕された後、勾留された確率は78%です。勾留期間(原則10日・20日まで延長可)が延長された確率は58%です。

 

いったん勾留されると、少なくとも10日程度は身柄拘束が続きます。そうならないよう、勾留前の釈放を目指すのであれば、逮捕直後に弁護士を選任すべきです。

 早期釈放を実現する

 

*上記の傷害罪には傷害致死罪および現場助勢罪も含まれます。 

*本ページの数値は2017年検察統計年報に基づいています。

 

傷害で起訴された確率は35%【2017】

2017年に検察庁で取り扱われた傷害事件のうち、起訴されたケースは35%です。起訴された事件のうち公判請求されたケースは36%、略式請求されたケースは64%です。 暴行罪(16%)と比べると公判請求される確率がかなり高くなっています。

 

素手による暴行で、被害者のけがが軽い場合(全治1~2週間程度)は、略式裁判で罰金となるケースが多いです。被害者との間で示談が成立すれば、不起訴になる可能性が高いです。

 

被害者のけがが重い場合は、前科がなくても公判請求されることがあります。公判請求された場合は、懲役刑が下される可能性が高いですが、初犯の方であれば執行猶予がつくでしょう。

 

以下では、弁護士が不起訴を獲得する方法について解説しています。

 

傷害罪の弁護活動(罪を認める場合)

(1)示談をする

被疑者を起訴するか否かを決めるのは検察官です。検察官は、傷害事件の被疑者について起訴するか否かを決めるにあたり、示談の成否を非常に重視しています。そのため、被害者との間で示談が成立すれば、不起訴になる可能性が高まります。示談がまとまる前に起訴されたとしても、その後に示談が成立すれば、執行猶予になる可能性が高まります。裁判官も刑罰を決めるにあたり、示談の成否を非常に重視しているからです。

 

【不起訴処分を獲得するために】  

弁護士が示談書や示談金の領収書を検察官に提出します。 

 

(2)被害者に謝罪する

被害者とお会いしたり、手紙をお送りして謝罪します。通り一遍のことを述べるのではなく、自分の言葉で心をこめて謝罪することが重要です。 

 

【不起訴処分を獲得するために】

弁護士が、被害者にお渡しした謝罪文の写しを検察官に提出します。ご本人には、検察官の前で被害者への謝罪・反省の気持ちを直接話してもらいます。

 

(3)環境を改善する

お酒絡みで傷害事件を起こした場合、お酒との向き合い方を考えてもらいます。不良交友による荒れた生活が事件の背景にある場合は、交友関係の見直しを含めた生活環境の改善が必要となるでしょう。いずれにせよ生活環境を立て直すためにはご家族の協力が不可欠です。ご家族には日常生活の中で本人を監督してもらいます。

 

【不起訴処分を獲得するために】

本人を監督する旨の誓約書をご家族に書いてもらい弁護士が検察官に提出します。

 

*その他の弁護活動

① 早期釈放を目指す

身体拘束されている場合は、早期釈放に向けた弁護活動を行います。

 

② 供託や寄付をする

示談が成立しなかった場合、賠償金を供託したり、反省の気持ちを示すために慈善団体へ贖罪寄付(しょくざいきふ)をします。不起訴を獲得するため、弁護士が供託書や寄付したことの証明書を検察官に提出します。

 

傷害罪の弁護活動(無罪を主張する場合)

(1)「酒に酔っていて覚えていない」という主張は通用する?

「被害者がけがをした事実」は、被疑者が覚えているかどうかとは関係なく、医師が作成した診断書によって証明されます。また、「被疑者が被害者を暴行した事実」も、現場の防犯カメラや被害者・目撃者の供述調書によって固められてしまいます。

 

「酔っていて覚えていない」という主張を続けて不起訴処分あるいは無罪判決を獲得するのは困難でしょう。かえって検察官や裁判官に「反省していない」と思われ裏目に出ることも少なくありません。

 

(2)正当防衛を主張する

最初に相手の方から殴りかかってきたり、凶器を使って攻撃してきた場合は、相手にけがをさせても正当防衛により無罪となる余地があります。弁護士がご本人から事情を聴取し、正当防衛を裏付ける事情があれば、不起訴処分あるいは無罪判決の獲得を目指します。

 

(3)傷害の共謀がないことを主張する

傷害の共犯事件において、現場にたまたま居合わせたものの暴行には一切関与していない場合、暴行した人間との共謀が認められなければ傷害罪は成立しません。弁護士がご本人から事情を聴取し、事前の打合せへの参加など共謀を裏付ける事情がなければ、不起訴訴処分あるいは無罪判決の獲得を目指します。

 

傷害のよくあるご相談例

・通勤途中にホーム上で見知らぬ男性とぶつかって口論になり、かっとなって顔を殴ってけがをさせた。

・飲み会から帰る途中、酒に酔って気が大きくなり、鉄道会社の職員を蹴ってけがをさせた。

 

ウェルネスの弁護士は、これまで多数の傷害事件を扱っており、ほとんどのケースで不起訴を獲得しています。傷害事件の法律相談はウェルネスまでお電話ください。 

 

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