大麻

このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。

 

 

大麻と刑罰

大麻犯罪の刑罰は大麻取締法という法律によって以下のように定められています。

 

営利目的なし

営利目的あり

所持

年以下の懲役

年以下の懲役

*情状により200万円以下の罰金を併科

譲渡・譲受け

栽培

 

年以下の懲役

 

10年以下の懲役

*情状により300万円以下の罰金を併科

輸入・輸出

*大麻は没収されます。

*覚せい剤と異なり、大麻の使用のみでは処罰されません。

 

大麻で逮捕された確率は65%

2017年に処分された大麻取締法違反で、被疑者が逮捕されたケースは65%です。逮捕後に勾留されたケースは97%です。

 

勾留期間は原則10日で、最長20日まで延長可能です。10日を超えて延長されたケースは73%です。逮捕されると勾留を防ぐことは難しいですが、勾留延長を阻止できる余地は十分にあるでしょう。

*本ページの数値(%)は2017年版検察統計年報に依拠しています。

 

以下、類型ごとにみていきます。

  

大麻所持と逮捕

大麻所持の事案では、本人の自宅や車から大麻と思われる物が発見されれば、警察官がその場で簡易鑑定を行い、陽性反応が出れば大麻所持の現行犯で逮捕されます。

 

大麻譲渡・譲受けと逮捕

大麻譲渡・譲受けの事案では、関係者から大麻が押収されたり、メール等の売買記録が発見されると、かなり高い確率で逮捕されることになります。

 

大麻栽培と逮捕

自宅の中や敷地を捜索され大麻草らしき物が発見されれば、押収されて科捜研に送られます。大麻草はそのまま鑑定することはできません。まず葉を採取して乾燥させた後に大麻かどうかを鑑定します。乾燥大麻のようにその場で簡易鑑定をすることはできませんので、現行犯逮捕はされません。

 

鑑定結果が出るまで通常、3~4週間かかります。大麻であることが判明すれば通常逮捕されることになります。

 

大麻を栽培している人は、同時に、乾燥大麻も所持していることが多いです。そのようなケースでは、発見した乾燥大麻をその場で簡易鑑定し、陽性反応が出れば大麻所持で現行犯逮捕し、後日、大麻栽培で再逮捕することになります。

 

大麻で起訴された確率は52%

2017年に検察庁で取り扱われた大麻取締法違反のうち、起訴されたケースは52%です。覚せい剤取締法違反(78%)と異なり、使用だけでは起訴できないため、起訴率は低めになっています。

 

不起訴になりやすいケースとして、大麻所持の事案で所持していた大麻の量が少ない場合が挙げられます。所持していた大麻が0.5グラム以下であれば起訴猶予で不起訴になる余地が十分にあります。

 

また、譲渡・譲受けの事案で、関係者の供述以外に証拠がない場合は、嫌疑不十分で不起訴になることも考えられます。

 

大麻と執行猶予

大麻所持のケースでは、初犯の方の場合、起訴されても執行猶予判決になる可能性が高いです。薬物犯罪の前科があったり、執行猶予期間中の場合は、実刑判決の可能性が高くなります。営利目的があるケースでは、押収された大麻によっては、初犯の方でも実刑になることがあります。

 

大麻事件の弁護方針(罪を認める場合)

(1)釈放を目指す

大麻は、通常、小分けにされているので、トイレに流すなどして証拠隠滅することが容易です。本人が、大麻の取引相手と口裏合わせをすることも考えられます。

 

そのため、大麻取締法違反の被疑者は、「証拠隠滅のおそれが高い」として逮捕・勾留されやすいです。勾留期間は原則10日ですが、最長であと10日間延長することできます。

 

ただ、大麻の単純所持のみのケースで、共犯者がいなければ、勾留延長を阻止できることも少なくありません。弁護士が、延長すべき理由がないことを意見書に記載し、検察官や裁判官に提出します。

 

(2)保釈させる

大麻取締法違反で逮捕・勾留された後、起訴されれば、保釈請求を行うことができます(起訴「前」に保釈請求をすることはできません)。保釈を審査する裁判官は、「保釈すればまた大麻に手を出すのではないか?」と考えます。

 

そのような疑いを抱かせないようにするため、身元引受人に本人をしっかり監督してもらうことが必要です。初犯の方の場合、起訴前から保釈の準備をしておけば、起訴直後に保釈できることが多いです。

保釈をとる

 

【起訴されたら】

弁護士が速やかに裁判所に保釈請求書を提出します。

 

(3)反省を深める

大麻は、国によっては合法化されているところもあるため、違法性の認識が希薄な人も少なくありません。天然のものなので副作用がないと間違った思い込みをしている人もいます。大麻の副作用等について解説した本を読むなどして、危険性を理解し、反省を深めてもらいます。

 

【起訴されたら】

弁護士が本人の反省文を裁判所に提出します。被告人質問で本人に反省の言葉を述べてもらいます。

 

(4)大麻と縁を切る

大麻で逮捕された人の中には、入手ルートについて言葉を濁す人もいます。しかし、入手ルートについてあいまいな供述をしていると、裁判官に、「大麻にまだ未練があるのではないか?」と思われてしまいます。

 

違法薬物と縁を切るためには、裁判官の前で入手ルートについて知っていることをすべて話し、身近に大麻がある環境と決別することが必要です。

 

【起訴されたら】

被告人質問で本人に入手ルートについて説明してもらいます。

 

(5)第三者の援助を受ける

薬物犯罪は、他の犯罪に比べて、再犯率が非常に高いことが特徴です。依存症になってしまうと、自分の力だけで立ち直るのは困難です。専門の医療機関での治療、ダルク等への入所、自助グループへの参加などを検討した方がよいでしょう。

 

【起訴されたら】

弁護士が、医師の診断書やカルテなどを証拠として提出します。

 

(6)家族にサポートしてもらう

薬物への依存から立ち直るためにはご家族の支援も不可欠です。ご家族の方にも薬物関連の勉強会などに参加してもらい、薬物の恐ろしさや適切な対処法を知ってもらう必要があります。ご家族には、最も身近な人間として、ご本人の更生をサポートしてもらいます。

 

【起訴されたら】

ご家族に情状証人として出廷してもらいます。

 

(7)検察官に即決裁判の申立てを促す

即決裁判とは、争いのない単純な事件について、通常の裁判よりも迅速に審理するための手続です。大麻取締法違反が即決裁判で審理されると、原則として起訴から2週間以内に初公判がセッティングされ、その日のうちに執行猶予判決が下されます。 

 

通常裁判に比べて刑事手続から早く解放され、確実に執行猶予になることが保証されますので、実刑判決の不安から解放され、社会復帰に専念することができます。

 

即決裁判を申し立てることができるのは検察官のみですが、弁護士が検察官に対して、即決裁判を申し立てるよう職権発動を促します。次の要件を全て満たす場合は即決裁判になる余地が十分にあります。

 

①営利目的のない単純所持

②逮捕当初から容疑を認めている

③大麻の栽培や覚せい剤等の余罪がない

④前科・前歴がない

即決裁判

 

大麻事件の弁護方針(無罪を主張する場合)

(1)違法捜査を根拠として無罪を主張する

警察が大麻を押収する過程で違法な行為があれば、捜査の適正化などの観点から、押収した大麻やそれに基づき作成された供述調書などを裁判の証拠として使えなくなる場合があります(違法収集証拠の排除)。違法な捜査機関の行為として、以下のようなケースが考えられます。

 

①警察官が本人を羽交い絞めにして、衣服の中から大麻を取り上げたケース

②警察官が令状なしに、本人が拒絶しているにもかかわらず、本人の自動車の中を探索し、大麻を取り上げたケース

 

押収した大麻は、被告人が大麻を所持していたことを証明する最も重要な証拠です。裁判で大麻などの証拠を使えなければ、検察官にとっては大きな痛手です。結果的に無罪判決が下される場合もあります。

 

弁護士としては、捜査機関の行為に違法性がなかったかを細かくチェックし、もし違法性があれば、「押収した大麻等を証拠から除外すべきである」と主張します。

 

(2)捜査機関に自白調書をとらせない

第三者の供述に基づき、大麻の譲渡または譲受けで逮捕されたものの、本人の周辺から大麻や売買記録などの客観的な証拠が発見されていない場合、本人と第三者の供述以外に目ぼしい証拠はないということになります。そのため、刑事裁判では、本人が何を言っているかがポイントになります。

 

例えば、被疑者が本当は大麻を譲渡していないにもかかわらず、取調べの際、捜査機関の圧力に屈してしまい「自分が大麻を譲渡しました」と心ならずも自白してしまったとします。

 

その場合、後の刑事裁判において、「大麻を譲渡していません」と言ったとしても、検察官から「取調べのときは自白してましたよね?」と突っ込まれ、裁判官にも信用性を疑われることになります。

 

捜査機関は、否認を続ける被疑者に対してあの手この手を使って自白するよう働きかけます。不起訴処分や無罪判決を目指すのであれば、このような働きかけに屈しないことが重要になります。弁護士が被疑者と頻繁に接見し、捜査機関のプレッシャーに屈しないよう継続的にバックアップしていきます。

否認事件の刑事弁護

 

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