被告人質問とは?刑事裁判の山場を弁護士と共に乗り切ろう!

このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。

 

 

被告人質問とは

被告人質問とは、刑事裁判で、被告人が証言台の前に立って、弁護士や検察官、裁判官の質問に答える手続です。

 

被告人質問は、<弁護士の主質問→検察官の反対質問→裁判官の補充質問>という流れで進みます。自白事件では15分~30分程度、否認事件では1時間を超えることも少なくありません。

 

裁判官・裁判員は、被告人の話す内容や話をするときの表情・態度から、事件についての心証を形成します。第1審では、ほぼ全ての刑事裁判で被告人質問が実施されます。

 

被告人質問のタイミング

刑事裁判は、①冒頭手続→②証拠調べ→③意見陳述→④判決言渡しという流れで進行します。

 

多くの裁判では、初公判で①から③まで一気に行い、1,2週間後に④判決を言い渡します。被告人質問は、②の証拠調べの最後に行われることが多いです。自白事件のケースでは、情状証人の尋問をした直後に被告人質問を行います。

 

被告人質問は自分の話をじっくり聞いてもらえる唯一のチャンス

刑事裁判で被告人が言葉を発する機会は次の4つです。

 

①人定質問

②罪状認否

③被告人質問

④被告人の最終陳述

 

①の人定質問は、裁判官から氏名や住所の確認を求められそれに答えるだけです。

 

②の罪状認否は、裁判官から「起訴状の内容でどこか違っているところはありますか?」と聞かれて答える手続ですが、自白事件では「ありません。」と一言で終わることが多いです。否認事件でも「正当防衛です。」等とエッセンスを答えるだけで、自分の考えを詳細に話すことまでは想定されていません。

 

④の最終陳述は、審理の最後に、被告人が締めの発言をコンパクトにするものです。

 

そのため、被告人が事件に至る経緯や当時の状況、自分の思い等を詳しく話すことができるのは被告人質問のみということになります。

 

被告人質問と証人尋問の違い

被告人質問と証人尋問は、同じような流れで進みますが、次のような違いがあります。

 

①被告人は宣誓する必要がない

証人尋問では、尋問に入る前に、証人が証言台の前に立ち、嘘をつかない旨の宣誓をします。宣誓をした証人が、嘘の証言をすると偽証罪(懲役3月~10年)で処罰されるおそれがあります。

 

これに対して、被告人は、被告人質問の前に宣誓を求められることはありません。また、嘘の供述をしても偽証罪で処罰されることはありません(だからといって虚の供述をする「権利」までは認められていません)。

 

②供述を拒否できる範囲が広い

証人は、自己や近親者が刑事訴追や有罪判決を受けるおそれがある場合等を除き、証言をする義務があります。

 

これに対して、被告人は、そのような場合でなくても、話したくないと思えば話をする必要はありません。被告人質問の最初から最後まで黙っていることもできますし、話したいことだけ話して、話したくないことは黙っていることもできます。

 

被告人質問で弁護士が注意すべき5つのポイント

被告人質問は、弁護士の主尋問(質問)から始まります。そのため、事前に弁護士が質問をまとめておき、被告人とリハーサルをします。被告人が勾留されていれば、警察署や拘置所でリハーサルすることになります。

 

被告人の話が裁判官や裁判員の心に響くように、弁護士は次の5つのポイントをふまえて、被告人質問の準備をすべきです。

 

①不利な点についても尋ねる

被告人質問で、弁護士が被告人にとって不利な点を尋ねなければ、裁判官や裁判員から、逃げているように思われてしまいます。反対尋問で指摘される前に、有利な点だけではなく、不利な点についても質問し、被告人の口からフォローさせることが必要です。

 

②できるだけ誘導しない

弁護士:「反省していますか?」

被告人:「はい。」

弁護士:「被害者に対して謝罪の気持ちはありますか?」

被告人:「はい。」

 

このようなやりとりをしても、被告人の思いは裁判官や裁判員には伝わりません。被告人質問の主役は弁護士ではなく被告人です。誘導尋問は最小限にとどめ、なるべく被告人自身の言葉で話をしてもらいます。

 

③一問一答形式で進める

弁護士:「あなたはそのとき誰と何をしましたか?」

 

このように1つの問いで複数の事実を尋ねると、裁判官や裁判員にとって分かりづらくなります。質問はなるべくシンプルにして、端的に1つの事実を確認するようにします。

 

弁護士:「あなたはそのとき誰かと一緒にいましたか?」

被告人:「〇〇さんと一緒にいました。」

弁護士:「〇〇さんと何かしましたか?」

被告人:「~をしました。」

 

④質問の回答を丸暗記させない

被告人のなかには、主尋問に対する回答を完璧に覚え、アナウンサーのように流ちょうに話をする方もいます。しかし、これでは台本を読んでいるようで、発言にリアリティがなくなり、かえって信用性が低下してしまいます。

 

面接試験ではありませんので、回答を丸暗記するのではなく、キーワードを頭にいれておく程度で十分です。もし、本番でつまった場合は、弁護士が助け舟を出します。

 

⑤見た目や態度にも気を配らせる

人は、意識しているか否かを問わず、見た目で他人を判断するものです。とくに、裁判員は、被告人の話す内容だけではなく、話しぶりや態度全般をみて、信用できるかどうかを判断する傾向があります。

 

そのため、被告人質問には地味なスーツを着用して臨んだ方がよいでしょう。たとえ勾留されていても、スーツとワイシャツは差し入れることができますし、法廷に着ていくこともできます。

 

常に「自分がどう見えているか」を意識して、法廷で振る舞うようにしてください。

 

被告人質問-反対尋問で注意すべきポイント

弁護士が主尋問(質問)を終えた後、検察官が反対尋問(質問)を行ないます。反対尋問を乗り切るためのポイントは次の3つです。

 

①事前に弁護士と打ち合わせをしておく

検察官は、反対尋問で、被告人が聞かれたくないと思っている部分をつっこんで聞いてきます。証拠の構造をふまえて、自分の主張の弱い部分について、反対尋問で聞かれた際に、どのように答えるのかあらかじめ弁護士と打ち合わせをしておきましょう。

 

検察官に特につっこまれやすいのは、自分の発言と客観的な証拠が矛盾している部分です。被告人質問で供述する内容と証拠資料をつきあわせ、矛盾する部分をリストアップして対策をたてておきましょう。

 

②検察官と議論しない

反対尋問で、検察官から厳しいつっこみを受けていると、だんだんヒートアップしてしまい、検察官と言い合いになることがあります。裁判官や裁判員の前で感情的になると、発言全体の信用性が低下してしまいます。いらだってもぐっとこらえて冷静に対処するようにしてください。

 

反対尋問がうまくいかずいらいらしている検察官に対して、余裕をもって対応することができれば、裁判官・裁判員の心証をこちらに引きよせることができます。

 

③反対尋問に全て回答する必要はない

被告人には黙秘権が保障されていますので、検察官の反対尋問に答える義務はありません。

 

例えば、性犯罪事件の反対尋問で、検察官から、余罪について聞かれた場合、正直に答えると刑罰が重くなる可能性があるため、黙秘することが考えられます。黙秘したこと自体で不利に扱われることはありません。

 

検察官に追い込まれて、しどろもどろになり、苦しまぎれに不自然な回答をするくらいであれば、きっぱり黙秘してダメージを最小限におさえた方がよいこともあります。

 

被告人が黙秘すると、検察官が「なんで黙秘するんですか!反省していないんですか?」等とムキになって畳みかけてくることがありますが、弁護士が「黙秘権の侵害です。」と異議を申し立てると、それ以上追及してこなくなります。

 

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