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在宅事件の流れは?逮捕される刑事事件との違いや起訴・不起訴について
在宅事件とは、被疑者を逮捕しないで捜査を進める事件です。在宅事件の被疑者になってしまった方は、以下のような疑問をお持ちのことと思います。
☑ 在宅事件の流れは?
☑ 在宅事件の呼び出しの回数は?
☑ 在宅事件で連絡がこないのはなぜ?
☑ 在宅事件の起訴率は?
☑ 在宅事件で不起訴になる方法は?
☑ 在宅事件の不起訴はいつわかる?
これらの点について刑事事件に詳しい弁護士 楠 洋一郎がわかりやすく解説しています。ぜひ参考にしてみてください!
目次
在宅事件とは?身柄事件との違い
1.在宅事件とは
在宅事件とは被疑者を逮捕しないで捜査を進める事件です。これに対して、被疑者を逮捕した上で捜査を進める事件を身柄事件といいます。
在宅事件の被疑者は、会社や学校に行くこともできますし、何度か警察や検察庁に行く必要はありますが、基本的にはこれまで通りの生活をすることができます。
2.在宅事件になる?ならない?
刑事事件の被疑者になれば必ず逮捕されるわけではありません。
被疑者を逮捕するためには「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」がなければなりません(刑訴法199条1項)。「何となく怪しい」というだけでは逮捕できないのです。
罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合でも、逃亡や証拠隠滅のおそれといった逮捕の必要性がなければ、逮捕することはできません(刑訴法199条2項但書、刑訴規則143条の3)。
これらの要件を満たさない場合は、逮捕されず在宅事件として捜査されます。
3.在宅事件になる確率は?
刑事事件における在宅事件の割合は約60%、身柄事件の割合は約40%です。
根拠:2022年検察統計年報:罪名別 既済となった事件の被疑者の逮捕及び逮捕後の措置別人員
上記の数字は最初から逮捕されない在宅事件の比率です。途中から在宅事件になったケースも含めるとさらに比率は上がります。
在宅事件で逮捕される?
最初に検挙された時点で逮捕されなければ、その後も逮捕されずに在宅事件として進められることが多いです。家族や上司が身元引受人として警察署まで迎えに来た場合は、後日逮捕される可能性は低いです。
⇒刑事事件の身元引受人とは?必要なケースやデメリット、弁護士費用
当初は在宅捜査で進んでいても、防犯カメラや指紋等の信頼性が高い証拠がある状況で否認を続けていると、後日逮捕されることがあります。
家宅捜索された場合も後日逮捕されることがあります。特に家宅捜索後に身元引受けの手続がとられていない場合は逮捕されることが少なくありません。
これらのケースでも、弁護士が逮捕の要件がないことを警察に指摘することにより、逮捕を回避できることがあります。まずは刑事事件の経験豊富な弁護士にご相談ください。
在宅事件は長すぎる!?全体の流れ
在宅事件の捜査には時効を除いてタイムリミットがありません。そのため、在宅事件の捜査は身柄事件に比べて長くなります。
身柄事件では、逮捕は最長3日、勾留は最長20日と拘束期間が決められています。身柄事件では、検察官は最長20日の勾留期間内に被疑者を起訴するか釈放しなければなりません。1日単位で手続が進んでいくイメージです。
これに対して、在宅事件ではタイムリミットがないため、検挙されてから起訴・不起訴が決まるまで警察段階で2,3か月、検察段階で2、3か月、合計で4~6か月程度かかることが多いです。ひと月単位で手続が進んでいくイメージです。
処分が決まるまでの期間 | |
身柄事件 | 逮捕から最長23日 |
在宅事件 | 検挙されてから4~6か月 |
在宅事件の流れは?警察による在宅捜査
警察は、被害者からの訴えや110番通報、職務質問等で事件を認知すると捜査を開始します。捜査の一環として被疑者に対する取調べを行います。
1.警察からの呼び出しの回数は?
現行犯で検挙された場合は検挙直後に取調べが行われます。2回目以降の取調べについては、事前に警察から被疑者の携帯電話に呼び出しの連絡が入ります。
被疑者が容疑を認めていれば、呼び出しの回数は1,2回になることが多いです。否認している場合は3回以上呼び出されることもあります。
2.警察から連絡がこない!?
在宅事件では警察から1か月以上連絡がこないこともよくあります。捜査員は厳格なタイムリミットがある身柄事件の捜査を優先し、在宅捜査は先延ばしにする傾向があるためです。
捜査員は最初に被害者の話を聞いてから被疑者の話を聞きますので、被害者が仕事や学校などで忙しく事情聴取がなかなか進まない場合は、それに連動する形で、被疑者の呼び出しも遅くなります。
3.警察の取調べで何をする?
最初の取調べでは「私がやったこと」というタイトルで上申書を作成することが多いです。取調官から紙を渡され、ボールペンで事件の概要を手書きするように言われます。
供述調書は2回目以降の取調べで作成されることが多いです。取調官が被疑者の話を聞きながらパソコンで文章を作成し、プリントアウトした後に被疑者が署名指印します。
供述調書には被疑者の家族構成、学歴・職歴などのプロフィールを記載した身上調書と事件について詳しく記載した事件調書があります。
万引きなど軽微な犯罪で容疑を認めている場合は、最初の取調べで供述調書の作成まで進むこともあります。
【取調べにどう対応する?】 取調べで不利な供述調書をとられてしまうと無罪を争うのが困難になったり、処分が重くなったりします。そのため、事前に弁護士と打ち合わせをした上で取調べに臨みましょう。弁護士が取調べに同行して随時アドバイスすることもあります。 |
在宅事件の流れは?検察による在宅捜査
1.書類送検とは?
警察は被疑者を逮捕すると48時間以内に被疑者の身柄と捜査資料を検察官に引き渡します。この引き渡しのことを「身柄送検」といいます。
これに対して、逮捕されない在宅事件では、捜査資料のみを検察官に引き継ぎます。この引き継ぎのことを「書類送検」といいます。
⇒書類送検とは?逮捕との違いは?会社にバレる?流れについても解説
書類送検にはタイムリミットがありません。一般的には被疑者を検挙してから2,3か月で書類送検することが多いです。否認している場合や捜査が難航している場合は書類送検まで6か月以上かかることもあります。
書類送検までの期間 | |
身柄事件 | 逮捕後48時間以内 |
在宅事件 | 検挙後2,3か月のことが多い |
2.検察官の呼び出しの回数は?
検察官は起訴するか不起訴にするかを決定する前に、被疑者を検察庁に呼び出して取り調べることが多いです。取調べの回数は通常1回ですが、否認事件では2回以上呼び出すこともあります。
暴行や万引きなどの軽微な事件で示談が成立している場合は、一度も呼び出ずに不起訴にすることもあります。
3.検察官の取調べで何をする?
検察官は取調べを経て被疑者を起訴するか不起訴にします。
起訴とは被疑者を刑事裁判にかけることで、簡易な刑事裁判にかける略式起訴と本格的な刑事裁判にかける公判請求の2種類があります。取調べをした後、①不起訴、②略式起訴、③公判請求のいずれかになります。
①不起訴の方針の場合
検察官が不起訴にする方針であれば、取調べは短時間で終わることが多いです。供述調書を作成せずに口頭注意だけで終わることもあります。
検察官によっては「不起訴にします。」とか「月末までに連絡がなければ不起訴と思ってください。」等と言ってくれる方もいます。
②略式起訴の方針の場合
検察官が略式起訴する方針であれば、略式手続について被疑者に説明し、書面による同意の手続を行います。おおむね1か月後くらいに自宅に裁判所から略式命令が届くことになります。
⇒略式裁判とは?罰金の金額や払えない場合について弁護士が解説
③公判請求する方針の場合
公判請求する方針であれば、検察官から「起訴状が届きます」とか「裁判を受けてもらいます」といった発言があることが多いです。罰金や懲役の前科があれば公判請求される可能性が高くなります。
在宅事件の起訴と不起訴について解説
1.在宅事件の不起訴率は?
不起訴とは被疑者を刑事裁判にかけない処分です。裁判にならないので処罰されず前科がつくこともありません。在宅事件と身柄事件をまとめた刑事事件全体の不起訴率は約60%です。
根拠:2022年検察統計年報:罪名別 被疑事件の既済及び未済の人員
在宅事件の方が身柄事件に比べて軽微な事件が多いため、不起訴率はやや高くなると思われます。ただ、身柄事件に比べて格段に不起訴率が高くなることはないでしょう。
逮捕の要件は逃亡のおそれと証拠隠滅のおそれですが、これらは起訴・不起訴とは無関係だからです。逮捕は捜査の初期段階で行われるのに対して、起訴・不起訴は捜査の最後になされる処分であり、それぞれの場面で考慮される事情は異なります。
起訴するか不起訴にするかは、被害者がいる事件であれば示談の有無が大きく影響します。否認事件であれば、検察官が公判を維持できる証拠があるか否かがポイントになります。
2.在宅事件で不起訴になるのはいつ?
検察官は、警察から引き継いだ捜査資料や被疑者から聞いた話をふまえて、起訴するか不起訴にするかを決めます。弁護士から示談書や意見書が出されればそれも参考にします。
身柄事件では、検察官は最長20日の勾留期間内に被疑者を起訴するか釈放しなければなりませんが、在宅事件ではそのような期間の制限はありません。
一般的には、書類送検されてから起訴・不起訴の処分が確定するまで2か月程度かかることが多いです。事件が複雑だったり、補充捜査の必要がある場合はそれ以上かかることもあります。
3.在宅事件の不起訴はいつわかる?
検察官は不起訴になったからといって必ずしも被疑者にそのことを教えてくれるわけではありません。取調べの際に検察官から「このまま連絡がなければ不起訴です。」と言われることはありますが、不起訴になった時点で改めて連絡してくれることは少ないです。
弁護士に依頼していれば、弁護士が検察官に不起訴になったか否かを定期的に確認します。不起訴になっていれば不起訴の証明書(不起訴処分告知書)を取得してくれるでしょう。
弁護士に依頼していなければ、ご自身で担当の検察官に電話して確認してみてください。
4.在宅事件で起訴されたらどうなる?
起訴されると被告人として刑事裁判を受けることになります。起訴には略式起訴と正式起訴があります。
略式起訴されると簡易な裁判で罰金または科料の支払を命じられます。法廷は開かれず略式命令という書面が被告人の自宅に郵送で届きます。
⇒略式裁判とは?罰金の金額や払えない場合について弁護士が解説
正式起訴されれば、裁判所から起訴状が被告人の自宅に届きます。その後、被告人が決められた公判期日に出廷し、公開の法廷で審理を受けます。
在宅事件で報道される?
在宅事件で報道されるのは社会の注目を浴びるような事件に限られます。その場合でも、一般人であれば匿名で報道されます。
有名人や政治家でない限り、通常の在宅事件の被疑者が報道されることはないでしょう。匿名で報道されることもありません。
在宅事件で会社にバレる?
在宅事件の被疑者はこれまで通り会社に行くことができますし、警察が会社に連絡を入れることも通常ありません。そのため、会社にバレる可能性は低いです。
もっとも、公務員の場合は、警察が職場に連絡することが多いので、職場にバレる可能性が十分にあります。
弁護士が職場に通報しないよう警察に求めることにより、通報を阻止できる場合もあるため、まずは刑事事件の経験方法な弁護士にご相談ください。
在宅事件で不起訴を獲得する方法
1.自白事件
①被害者がいる事件
被害者がいる事件で不起訴を獲得するためには、示談をまとめることが重要です。捜査機関は被疑者に被害者の名前や電話番号を教えてくれませんので、示談をしたい場合は、弁護士に依頼することになります。
②被害者がいない事件
被害者がいない事件で不起訴を獲得するためには、再犯防止のための取り組みをしていく必要があります。例えば薬物事件では更生プログラムを受けたり家族に監督してもらうことが考えられます。
2.否認事件
否認事件では不利な調書をとられないことが重要です。取調官のプレッシャーに耐え切れず「私がやりました」といった調書をとられると、起訴される可能性が高くなります。
黙秘権を行使したり、供述調書への署名・指印を拒否することにより、不利な調書がとられないようにします。
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