書類送検とは?逮捕との違いは?会社にバレる?流れも解説

このページは弁護士 楠 洋一郎が作成しています。

 

 

 

書類送検とは?

書類送検とは、刑事事件の捜査資料を警察から検察官に送って事件の処理を引き継ぐことです。「書類送検」という言葉はマスコミ用語で、捜査実務では「書類送致」と言います。

 

 

刑事手続は<警察での捜査⇒検察での捜査>という2段階で進みます。警察が被害者からの訴えや110番通報などで事件を認知すると、捜査を開始します。関係者から事情を聞いたり必要な証拠を収集してひととおりの捜査を終えると、事件の処理を検察官に引き継ぎます。

 

 

検察官はさらに捜査を尽くし、事件を起訴するか不起訴にするかを決めます。検察官への引継ぎのうち捜査資料のみを引き継ぐ手続が書類送検です。

 

 

書類送検と逮捕の違いは?

書類送検は被疑者が逮捕されていない場合に限ってされる手続です。被疑者が逮捕されているときは、警察から検察官に捜査書類を引き継ぐだけでなく、被疑者の身柄を検察庁に連行して検察官に引き渡します。

 

 

被疑者を逮捕したときの送検を身柄送検と言います。

 

 

書類送検(逮捕なし)

捜査資料のみを引き継ぐ

身柄送検(逮捕あり)

捜査資料+被疑者の身柄を引き継ぐ

 

 

警察が被疑者を逮捕すると、逮捕の翌日か翌々日に被疑者を護送バスに乗せて検察庁に連行します。事件の捜査資料も同じバスに乗せて検察庁に持っていきます。こうすることにより、捜査資料と被疑者の身柄を同時に検察に引き渡すのです。

 

 

書類送検されたら会社にバレる?

刑事事件の被疑者になったからといって、以下の例外を除き、警察から会社に連絡がいくわけではありません。

 

【例外】

・業務上横領など会社が被害者である場合

・更衣室での盗撮など会社が事件の現場になっている場合

・同僚女性への不同意わいせつなど同じ会社の従業員が被害者である場合

・不同意性交等の重大犯罪で逮捕された場合

・公務員の場合

 

 

書類送検の前に警察から会社に連絡が入っていない場合、書類送検後に警察から会社に連絡が入ることもないでしょう。

 

 

書類送検のタイミングは?

書類送検のタイミングは、法律で決まっているわけではありませんが、検挙されてから2,3か月後になることが多いです。もっとも、刑事事件の内容や担当者の繁忙状況によっては6か月以上かかることもあります。

 

 

被疑者を逮捕した場合の身柄送検は、刑事訴訟法で逮捕してから48時間以内にしなければならないと定められています。逮捕は被疑者の行動の自由を大幅に制限する処分ですので、速やかに送検しなければならないのです。

 

 

これに対して、被疑者を逮捕していない場合、被疑者は自由に生活することできるので、書類送検にタイムリミットはなく、いつ送検するかは警察の判断に委ねられています。

 

 

【送検のタイミング】

書類送検(逮捕なし)

捜査資料のみを引き継ぐ

身柄送検(逮捕あり)

捜査資料+被疑者の身柄を引き継ぐ

 

 

書類送検されたことはどうやってわかる?

1.取調官の発言

被疑者は警察で何回か取調べを受けますが、取調官から「警察での取調べはこれで終わり。これから書類を検察に送ります。検察から電話があると思いますので対応してください。」等と言われることが多いです。

 

 

このような発言があると、近日中に書類送検されるということがわかります。ただ、実際に書類送検したタイミングで「本日書類送検しました。」と警察が被疑者に連絡してくれることまでは期待できません。

 

 

2.弁護士からの連絡

書類送検の前に弁護士に依頼している場合は、弁護士が警察や検察に送検の有無を定期的に確認しますので、弁護士からの連絡で書類送検されたとわかります。

 

 

3.検察からの連絡

弁護士に依頼していない場合は、検察(事務)官から出頭要請の連絡が入ることによって、自分が書類送検されたことを知ることになります。

 

 

検察(事務)官からの連絡は電話でくることもあれば、書面(呼出状)が自宅に届くこともあります。同居の家族に刑事事件の被疑者になったことを知られたくない場合は、事前に弁護士が検察官とかけ合って呼出状の送付を控えてもらうことも可能です。

刑事事件が家族に知られるタイミングと知られないようにする方法

 

 

書類送検された後の流れは?

1.検察官が起訴・不起訴を決める

書類送検されたら、検察官が捜査資料や取調べの内容、弁護士の意見書等をふまえ、起訴するか不起訴にするかを決めます。

 

 

書類送検されてから起訴・不起訴が決まるまでの期間はおおむね2か月程度です。検察官の忙しさによっては3か月以上かかることもあります。

 

 

2.不起訴になったら?

不起訴になれば刑事手続は終了します。押収物の返還がまだ終わっていない場合は、警察から連絡があるので日程調整をして取りに行ってもらいます。

 

 

本人が申請すれば不起訴になったことの証明書(不起訴処分告知書)を取得することもできます。弁護士に依頼している場合は、弁護士が取得してくれるでしょう。

不起訴処分告知書とは?取得できる時期や取得方法について解説

 

 

3.起訴されたら?

起訴には略式起訴と正式起訴の2種類がありますので、それぞれの場合の流れについて解説します。

 

 

①略式起訴された場合

略式起訴された場合、「略式命令」という書面が簡易裁判所から自宅に届きます。検察官の取調べを受けた日から1か月程度たったタイミングで届くことが多いです。

 

 

略式命令には罰金額(または科料の額)が記載されています。略式命令が届くと約1週間後に検察庁から罰金の納付用紙が届きます。金融機関で所定の罰金を払えば手続は全て終了です。

略式裁判とは?罰金の金額や払えない場合について弁護士が解説

 

 

②正式起訴された場合

正式起訴された場合、検察庁で取調べを受けた日の約1か月後に裁判所から起訴状が届きます。非公開の略式裁判と異なり公開の法廷で審理されます。

 

 

裁判の流れは自白しているか否認しているかによって異なります。自白している場合は、起訴状が届いてからおおよそ2か月で終了することが多いです。

刑事裁判の流れは?

 

 

書類送検された後に取調べはある?

書類送検されると、検察官が被疑者を検察庁に呼び出して取調べを実施することが多いです。検察(事務)官から電話か書面で取調べ日程についての連絡が入ります。

 

 

指定された日時に予定が入っており行けない場合は、その旨を検察(事務)官に伝えれば、柔軟に調整してくれます。取調べで聞かれることは警察で聞かれたこととほぼ同じです。警察で追及されなかったことを検察官から詳細に追及されるようなことは少ないです。

 

 

弁護士に依頼して送検前に示談が成立した場合、弁護士は示談書の写しを警察に提出しています。示談書の写しは書類送検の際に捜査資料と共に検察官に引き渡されます。

 

 

痴漢や盗撮、万引きなど重大犯罪とまでは言えない事件で、送検前に示談が成立している場合、検察官の取調べなしで不起訴になることもあります。取調べがあったとしても説諭(お叱り)程度で終わることが多いです。

 

 

【検察官から示談を勧められたら?】

検察庁で取調べを受けた際、検察官から被害者との示談を勧められることがあります(取調べではなく電話で勧められることもあります。)

 

このような話があった場合、検察官は事前に被害者に電話して示談の意向があるということを確認していることが多いです。そのため、交渉すれば示談が成立する可能性が高いです。

 

もっとも、検察官が被疑者に被害者の名前や電話番号といった個人情報を教えることはありませんので、示談を希望するのであれば弁護士に依頼する必要があります。

 

 

書類送検されたら前科がつく?

前科とは過去に刑事裁判で有罪とされ処罰を受けたことを意味します。前科がつくのは刑事裁判で下された有罪判決が確定した時です。

 

 

書類送検は警察から検察官に捜査資料を引き継ぐことであり、起訴・不起訴の判断は送検後に検察官によって行われます。そのため、書類送検イコール前科というわけではありません。

 

 

とはいえ、書類送検後に何もせずに事件を放置していると、起訴される可能性が高くなっていきます。起訴されれば無罪判決とならない限り、前科がつくことになります。罰金や執行猶予判決であっても前科になります。

 

 

司法統計によれば起訴されて有罪判決となる確率は99.8%です(令和4年司法統計年報)。これに対して、送検された刑事事件が不起訴になる確率は約60%です(2022年版検察統計年報)。

 

 

前科を回避するためには、起訴された後に無罪を狙うよりも、不起訴を狙う方が現実的です。

 

 

粗暴犯や性犯罪など被害者のいる事件であれば、被害者との間で示談が成立すれば不起訴になる可能性が高まります。前科を回避したいという方はお早めに弁護士にご相談ください。

前科とは?前歴との違いや前科を回避する方法について解説

 

 

書類送検後の弁護士費用は?

多くの弁護士事務所では書類送検「前」に依頼した場合と書類送検「後」に依頼した場合で、弁護士費用に違いはありません。ウェルネス法律事務所も同じです。

 

 

ただ、ウェルネスでは以下の刑事事件については書類送検「後」のご依頼であれば、着手金万5000円(税込)からご利用いただけます。

 

 

・痴漢(迷惑防止条例違反)

・盗撮(撮影罪)

・暴行

【着手金5万5000円】痴漢・盗撮・暴行の弁護士費用

 

 

弁護士費用をできるだけ節約したいという方は、お気軽にウェルネス(03-5577-3613)までご連絡ください。

 

 

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