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前科とは?前歴との違いや5つのデメリット、結婚・就職に影響は?

このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。

 

 

前科とは?

前科とは、有罪の刑事裁判を受けたことです。刑事裁判が確定した時点で前科になります。不起訴処分になった場合は、刑事裁判にはなりませんので、前科はつきません。

不起訴処分

 

逮捕されたからといって、必ず前科がつくわけではありません。逮捕された後に起訴され、有罪の刑事裁判が確定して初めて前科になります。逮捕されても、不起訴になれば前科はつきません。

 

罰金や科料も前科になる

有罪の裁判にともない刑罰が言い渡されます。刑罰の種類は、死刑、懲役、禁固、罰金、拘留、科料の6種類です。罰金と科料はどちらも財産刑ですが金額に違いがあります。科料が1万円未満の財産刑、罰金が1万円以上の財産刑です。

 

罰金や科料も有罪の裁判である以上、前科がつくことになります。

 

罰金や科料は、略式裁判という簡単な裁判で審理されることが多いです。略式裁判の結果は、略式命令という書面で本人に告知されます。この場合も有罪の裁判を受けたことに変わりはありませんので、前科がつくことになります。

 

前科と前歴の違い

前歴とは、警察や検察などの捜査機関によって捜査の対象にされたことです。起訴前も含まれるという点で前歴は前科よりも広い概念です。不起訴になれば前科はつきませんが、被疑者として犯罪捜査の対象となっているので前歴はつきます。

 

警察署で始末書を書いただけで帰されたような場合は、捜査対象の被疑者として扱われておらず、前歴にもなっていないことが多いです。供述調書を作成したり、身元引受人に警察署まで迎えにきてもらった場合は、刑事事件として立件されており、前歴としてカウントされる可能性が高いです。

 

前科と前歴の具体例

 ケース

前歴

前科

逮捕されたが、処分保留で釈放され、その後不起訴になった

×

逮捕・勾留された後に起訴され、懲役1年・執行猶予3年の判決を受けた

逮捕されず在宅で捜査を受けていたが、不起訴処分になった

×

逮捕されず在宅で捜査を受けていたが、略式起訴され30万円の略式命令を受けた。

*前歴は前科に吸収されますので、前歴と前科の両方に○がつく場合は、前科1犯としてカウントされます。

 

前科が知られることはある?

前科は戸籍謄本にも住民票にも記載されません。罰金以上の前科に限り、本籍がおかれた市区町村の犯罪人名簿に記録されますが、一般の方は閲覧できませんし、前科について問い合わせても教えてくれません。

 

検察庁のデータベースには、科料や拘留を含め全ての前科が本人が死亡するまで保存されていますが、これも一般の方は閲覧できませんし、問い合わせても教えてくれません。

 

また、裁判所や警察、検察庁が本人の勤務先に前科について報告することもありません。そのため、実名報道されたり本人が言わない限り、前科が事件に関係のない一般の方に知られることないでしょう。

 

前科の5つの不利益

前科に伴う不利益は次の通りです。

 

①就職後に経歴詐称になりうる

判例上、前科は、履歴書の賞罰欄に記入しなければならないとされています。賞罰欄のない履歴書であれば、前科を記入する必要はありません。前歴にとどまる場合は、賞罰欄があったとしても、記入する必要はありません。

 

選考時のエントリーシートについても同様に考えることができます。履歴書については、本人が賞罰欄がないものを用意すればすむ話ですが、エントリーシートは、会社が用意するので、賞罰欄があれば前科を記入する必要があることになります。

 

賞罰欄に前科を記入しなかった場合、前科が会社に発覚すると経歴詐称による懲戒解雇の可能性がでてきます。もっとも、事件について実名報道されていない限り、前科が会社に発覚する可能性は低いです。

 

②海外渡航が制限される可能性がある

【日本からの出国について】

執行猶予付きの懲役刑または禁固刑の判決を受け、猶予期間が経過していない場合、パスポートの申請をしても発行されないことがあります(旅券法13条1項3号)。

 

パスポートを申請する際、申請書に質問が書かれており、それぞれの質問に対して「はい」か「いいえ」にチェックを入れて回答します。前科に関する質問として、「現在日本国法令により、仮釈放、刑の執行停止又は執行猶予の処分を受けていますか。」という質問があります。

 

これらに該当する方はこの質問に「はい」と回答することになります。その結果、判決謄本や渡航事情説明書の提出を求められ、特別の審査を受けることになります。審査の結果、パスポートが発行されない場合や、渡航先が制限されることがあります。

 

仮釈放や執行猶予中であるにもかかわらず、上記の質問に対して、「いいえ」と回答すれば、旅券法違反で逮捕・起訴されることがあります。刑罰は5年以下の懲役または300万円以下の罰金です(両方科されることもあります)。

 

【渡航先への入国について】

前科があるとビザ免除プログラムを利用できず、観光旅行に行くだけでも時間をかけてビザを取得しなければならない場合があります。

 

ビザを申請した際、渡航先の大使館から犯罪経歴証明書(無犯罪証明書)の提出を求められることがあります。犯罪経歴証明書は、申請者の求めに応じて、警察によって作成される書類で、申請者の前科の時期や内容が記載されています。

犯罪経歴証明書についての警視庁のページ

 

犯罪経歴証明書により渡航先に前科が明らかになり、ビザを取得できないこともあります。実際にビザを取得できるかどうかは、渡航先の入国管理の運用によって異なります。

 

弁護士事務所のホームページの中には、「渡航先の大使館に問い合わせてください」と書かれているところもありますが、実際は、大使館に問い合わせても、明確な回答が得られないことが多いです。

 

信頼性の高い情報を得るためには、渡航先の移民弁護士に問い合わせる必要がありますが、それ自体が大きな手間になってしまいます。

 

③資格に基づく活動が制限されることがある

医師や弁護士、介護福祉士、証券外務員などほとんどの国家資格は、前科によって一定の制約が科されます。すなわち、前科があると、国家試験に合格しても免許が与えられなかったり、保有している免許が取り消されることがあります。

 

例えば、医師の場合は、罰金以上の前科があれば、医師国家試験に合格しても、医師免許が与えられないことがあります。医師として活動中に罰金以上の前科がついた場合は、医師免許の取消しや医業停止の可能性があります。

 

国家公務員については、禁錮以上の刑が確定すると、一定期間、公務員試験を受けられなかったり、失職することになります。

 

④新たに犯罪を犯したときに処分が重くなりやすい

警察は被疑者を逮捕するか否かを決めるにあたって、前科の有無や内容も判断材料にします。例えば痴漢のケースで本人はやっていないと否認していたとしても、痴漢の前科があれば、全く前科がない方に比べて逮捕されやすくなります。

 

検察官も被疑者を起訴するかどうかを判断するにあたって、前科の有無や内容を参考にします。現に問題になっている犯罪と同じ種類の前科があれば、「犯罪傾向が進んでいる」として、起訴される可能性が高くなります。

 

裁判官も、判決を出すにあたり、前科の有無や内容を参考にします。もっとも、「前科があるから今回の事件もやったに違いない。」等と前科があることを理由として有罪を認定することは原則として許されません。

 

ただ、他の証拠から有罪を認定した上で、「刑罰の程度」を判断するにあたって、前科があることを理由として刑罰を重くすることは許されますし、実務でも、前科があれば刑罰が相対的に重くなることが多いです。

 

とりわけ、前科が執行猶予判決で、その猶予期間中に新たな犯罪を犯して刑事裁判になった場合、新たな犯罪で実刑判決になる可能性が非常に高くなります。そうなると執行猶予も取り消され、2つの実刑判決を合計した期間、刑務所に入ることになります。

 

⑤その他の不利益

薬物犯罪の前科がある場合は、警察に職務質問された際、やましいところがなくてもすぐに解放してもらえないことが多いです。

 

警察官によって職務質問の現場で前科の照会が行われ、薬物犯罪の前科があることが判明すると、「鞄の中を見せろ」と言われたり、車の中を捜索されたり、尿検査を促されることが多いです。

 

また、公職選挙法等の前科がある場合は、一定期間、選挙権や被選挙権が停止されることがあります。

 

前科をつけないようにするために

前科をつけないようにするためには、犯罪の種類や本人の認否に応じて、適切な弁護活動をすることが必要です。

 

統計データによると、起訴されれば、99.9パーセント以上の確率で有罪判決が下されます。一方、起訴される割合は立件された事件の約5割にとどまります。そのため、前科をつけないようにするためには、不起訴処分を獲得することが決定的に重要です。

 

本人が容疑について否認しているのであれば、「嫌疑なし」または「嫌疑不十分」による不起訴を目指します。当初は否認していても、捜査機関のプレッシャーに負けてしまい、「私がやりました」という自白調書をとられてしまうと起訴される可能性が高くなります。

 

弁護士が本人とひんぱんに接見したり、不当な取調べに対して抗議したりして、自白調書がとられないようにします。

否認事件の刑事弁護

 

本人が容疑について認めているのであれば、「起訴猶予」による不起訴を目指します。起訴猶予を獲得するためには、何よりも被害者と示談をすることが大切です。

示談の相談は弁護士へ

 

被害者がいない犯罪の場合は、反省の気持ちを示すために贖罪寄付をしたり、再発防止のプランを作成・実践することにより、起訴猶予による不起訴を目指します。

贖罪寄付

 

詳しくは刑事事件の経験豊富な弁護士に相談してください。

 

前科の抹消

刑法には前科の抹消についての規定があります。ポイントを絞って整理すると次のようになります。

刑罰の種類

前科抹消の要件

禁固刑、懲役刑

刑期を終えた後に罰金以上の刑に処せられないで10年を経過したとき

罰金以下の刑

罰金支払い後、罰金以上の刑に処せられないで5年を経過したとき

 

前科抹消の主な効果は次の3つです。 

 

①本籍地の犯罪人名簿から抹消される

②前科による資格の制限を受けなくなる

③履歴書の賞罰欄に前科を記載する必要がなくなる。

 

前科が抹消されても、過去に刑の言渡しを受けたという事実そのものがなくなるわけではありません。そのため、検察庁のデータベースには前科情報が一生残ります。

 

新たな犯罪を起こしたときには、抹消された前科も新たな犯罪の処分に影響を与えることがありますが、10年以上経過していれば、殺人等の重大犯罪を除いて、処分に影響することはほとんどないでしょう。

 

前科についてのご質問

Q:前科が結婚する際に障害になることがありますか?

一般の方は前科を調べることができないので、実名報道された場合や前科について知っている共通の知人がいない限り、前科が交際相手に発覚することはありません。そのため、結婚の障害にはなりません。

 

Q:前科があると住宅ローンの審査に通らないと聞いたことがありますが本当でしょうか?

金融機関であっても、前科の有無や内容について知ることはできませんし、そもそも融資審査の項目にもなっていませんので、前科自体が住宅ローンの審査に影響することはありません。

 

Q:17歳の時に刑事事件を起こして少年院に入ったことがあります。これは前科になるのでしょうか?

家庭裁判所による審判は、前歴にはなりますが前科にはなりません。

 

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