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赤切符とは?青切符との違いや後日の流れを元検察官が解説
このページでは、東京地検交通部で長年にわたって交通事件を担当していた元検察官が、赤切符についてわかりやすく解説しています。
赤切符とは
赤切符の正式名称は「交通切符告知票」です。長方形の5つの書類が複写式となっており、その1番最初の書類が赤色であることから、一般的に赤切符と呼ばれています。
5つの書類の内容は次の通りです。
区分 | 書類の名称 | 色 | 内容 |
第1票 | 告知票・免許証保管証 | 赤 | 裁判所で被告人に交付される略式命令の謄本となります。警察が免許証を預かった場合、免許証の保管証明もかねています。 |
第2票 | 交通事件原票 | 青 | 刑事事件の記録となる一番重要な書類です。この書類の一部は、検察官の起訴状、裁判官の略式命令となります。 手続きが終わった後は、犯歴票として、被告人の本籍地を管轄する地方検察庁において保管されます。 |
第3票 | 徴収金原票 | 黄 | 罰金刑を執行する際、検察庁の徴収担当係が使用します。罰金の徴収に関する執行内容が記録されるほか、労役場留置の内容なども記録されます。 |
第4票 | 交通法令違反事件簿 | 白 | 事件を取り扱った警察署又は交通機動隊が使用します。これらの書類は、行政処分の審査手続であったり、犯罪経歴(違反歴)の管理などに利用されます。 |
第5票 | 取締り原票 | 白 |
赤切符と青切符の違い
1.赤切符は刑事事件になる
青切符を交付されたケースでは、所定の期間内に反則金を納めれば、刑事手続に移行することはありません。これを「交通反則通告制度」といいます。
日々発生する数多くの交通違反について、刑事事件として捜査・起訴すると、警察・検察・裁判所のキャパシティを超えてしまうため、軽い違反については、反則金を払えば刑事手続に移行しないことになっています。
これに対して、赤切符を交付されたケースでは、交通反則通告制度は適用されません。通常の刑事手続と同様に、<警察の捜査→検察官への送致→起訴→裁判>という流れで処理されます。
2.赤切符は前科がつく
青切符で反則金を払っても前科はつきません。「前科」とは有罪の裁判を受けた事実を意味しますが、反則金は行政処分であって裁判ではないからです。
これに対して、赤切符を交付されると、原則として刑事裁判にかけられ有罪になるため、前科がついてしまいます。
⇒前科とは?前歴との違いや5つのデメリット、結婚・就職に影響は?
赤切符の2つの処分
刑事上の処分
赤切符を交付されると刑事事件として処理されます。違反者が容疑を認めるのであれば、通常は略式裁判で審理され罰金刑になります。懲役刑や禁錮刑になることはありません。
⇒略式裁判とは?正式裁判との違いや拒否すべきかを弁護士が解説
ただ、上で説明した通り、罰金刑であっても前科にはなってしまいます。
行政上の処分
赤切符が交付されるのは6点以上の交通違反です。そのため行政処分として、免許の停止や取消になります。90日以上の免許停止や免許取消になる場合は、処分を下される前に意見の聴取が実施されます。
赤切符の対象となる事件
赤切符は重大な交通違反をした場合に交付されます。
よくあるのは、「酒気帯び運転」(現行犯逮捕以外の事件)、「一般道の時速30キロ以上の速度超過」、「高速道路での時速40キロ以上の速度超過」のケースです。
「自動車の保管場所の確保等に関する法律違反」で赤切符を交付されることもあります。
人身事故の場合は、赤切符は交付されず通常の刑事事件として処理されます。また、極めて重大な交通違反をした場合も、赤切符は交付されず通常の刑事事件として処理されます。
例えば、時速80キロ以上の速度超過のケースでは、赤切符は交付されず、初犯であっても公判請求され、検察官から懲役刑を請求される可能性が高いです。
赤切符と三者即日処理
赤切符を交付されると、刑事手続になるため、<警察の捜査→検察官への送致→起訴→裁判>という流れをたどりますが、これらは1日で処理されます。
これを「三者即日処理方式」といいます。「三者」とは、警察、検察、裁判所のことです。これらの機関がお互いに協力して、多数の違反者の事件処理を1日で行います。
【赤切符】三者即日処理の流れ
三者即日処理は裁判所で行なわれます。東京、大阪などは、三者即日処理手続を専門に行う場所があります。
東京23区内 | 東京簡易裁判所墨田庁舎 |
大阪 | 大阪簡易裁判所交通分室 |
では、三者即日処理(東京23区内)の流れを見ていきましょう。
1.受付
出頭窓口で赤切符と免許証を提出します。
2.警察
警視庁交通部交通執行課の警察官が取調べを行います。必要に応じて供述調書を作成します。本人が事実関係を認めている場合、警察官は三者即日処理の対象事件として検察官に送致します
否認している場合は、三者即日処理不相当の事件となり、いったん帰ってもらいます。後日、事件を取り扱った警察署又は交通機動隊に出頭して、詳細な取調べを受け、通常の道路交通法違反事件として検察官に送致されます。
3.検察
検察官が取調べを行います。必要に応じて供述調書を作成します。
被疑者が自白している場合は、略式裁判の告知手続が行なわれます。被疑者が略式裁判に同意すれば、赤切符の略式命令に関する告知手続部分に署名・押印(指印)をして、告知手続が完了します。
その後、検察官は「交通事件原票」の起訴状部分に記名・押印をして起訴状を作成します。そして、赤切符、「交通事件原票」、「徴収金原票」を事務手続に回し、略式起訴します。
⇒略式裁判とは?正式裁判との違いや拒否すべきかを弁護士が解説
4.裁判所
略式起訴と同時に身分が被疑者から被告人にかわります。被告人は、裁判所の手続きが終わるまで、指定された待合室で待機します。
裁判官が略式命令を発付した後、裁判所書記官から呼び出しを受けて、その場で赤切符(略式命令謄本)を受けとります。
5.刑の執行
検察庁の徴収担当事務官から罰金の納付に関する告知手続が行なわれます。罰金の持ち合わせがあれば、窓口で仮納付をして終了します。
罰金の持ち合わせがない場合、検察庁の徴収担当事務官から、住所、勤務先、連絡先などを確認された後、納付書を交付されます。2週間以内に銀行で罰金を仮納付すれば、三者即決処理に関する手続は全て終了します。
2週間以内に仮納付しない場合、徴収担当の事務官から督促状と新たな納付書が自宅に送付されるので、期限内に納付すれば手続は終了します。
期限内に納付せず、検察庁からの連絡を無視し続けて罰金を納めない場合、最終的には労役場に留置されます。留置の期間は、1日あたり5000円で換算されます。
例えば、罰金10万円の場合、20日間労役場に留置され、刑務作業を行うことになります。