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スピード違反
このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。
目次
スピード違反が刑事事件になる3つのケース
スピード違反は多くの場合、行政処分である反則金を納付すれば、刑事事件になることはありません。
検挙されたスピード違反が刑事事件になるのは次の3つのケースです。
① 一般道で時速30キロ以上のスピード違反をしたとき ② 高速道路で時速40キロ以上のスピード違反をしたとき ③ ①、②よりも軽微な違反で反則金を納付しなかったとき |
スピード違反は道路交通法によって取り締まりの対象とされています。もっとも、発生件数が非常に多いことから、全てのスピード違反を刑事事件として処理すると、警察や検察、裁判所の処理能力をオーバーしてしまいます。
そのため、一般道で時速30キロ未満、高速道路で時速40キロ未満のスピード違反は、行政処分として反則金が科され、これを納付した場合は刑事事件として起訴されないことになっています。
これを交通反則通告制度といいます。
スピード違反の刑罰
スピード違反の刑罰は、6ヶ月以下の懲役または10万円以下の罰金です。
一般道で時速30キロ未満、高速道路で時速40キロ未満のスピード違反で、かつ、反則金を納めた場合は、刑事事件として処理されませんので、刑罰が科されることはありません。前科がつくこともありません。
スピード違反-罰金と懲役の分かれめは時速80キロ!
スピード違反が刑事事件として処理される場合、有罪判決を受けると6ヶ月以上の懲役か10万円以下の罰金が科されます。
それでは懲役になるケースと罰金になるケースの違いは何でしょうか?
それは「時速80キロ以上のスピード違反をしたかどうか」です。時速80キロというのは、車が走っていた速度ではありません。「車が走っていた速度」から「走っていた道路の制限速度」を引いた値が80以上であれば、公判請求され懲役刑を請求される可能性が高いです。
逆に80未満であれば略式裁判で罰金となります。
スピード違反のような交通違反は、他の刑事事件に比べて、事件ごとの個性があまりなく、公平な処分を図るために、明確な基準のもとで画一的に処理されます。
処分の基準が公になっているわけではありませんが、東京であれその他の地域であれ、時速80キロを基準として、それ以上の違反は公判請求されることが非常に多いです。
スピード違反と故意
スピード違反が成立するためには、スピード違反をしていることを認識している必要があります。それではスピード違反をしたことをどの程度まで認識していれば犯罪が成立するのでしょうか?
この点については自分が運転する車の速度を正確に認識している必要はありません。また、制限速度を正しく認識している必要もありません。
ばく然と「制限速度を超えて車を走行させている」という認識があれば、スピード違反の故意として十分とされています。
スピード違反で逮捕につながる4つのケース
スピード違反で検挙されても基本的に逮捕されることはありません。ただ、次の4つのケースでは逮捕されることがあります。
①劇場型のスピード違反
動画撮影をしながら、制限速度を大幅にオーバーする速度で車やバイクを走らせ、その状況をYoutube等にアップして、不特定多数の視聴者にアピールするケースです。動画を見ていた視聴者の通報がきっかけとなり逮捕されることが多いです。劇場型のケースでは、顔写真つきで実名報道されることも多いです。
②逃げたケース
白バイやパトカー、ネズミ捕りによって検挙された場合、警察官から停止するよう求められますが、振り切って逃走しようとした場合、「逃亡のおそれ」という逮捕の要件を満たし、逮捕されることがあります。振り切った場合でも、自動車のナンバーから身元を特定され、後日逮捕されることになります。
③前科多数のケース
スピード違反は、公判請求されてもいきなり実刑になるような犯罪ではありません。もっとも、交通犯罪の前科が複数あったり、執行猶予中の方は、スピード違反で実刑になることもあります。そのようなケースでは、「逃亡するかもしれない」と警察に判断され、逮捕の可能性が高くなります。
④出頭拒否または反則金未納のケース
スピード違反で検挙されると、警察から呼び出しがありますが、これを拒否し続けていると逮捕されることがあります。また、たとえ反則金で終わる事件であっても、催告を無視して反則金を支払わなければ、逮捕されることがあります。
警視庁では2018年に出頭や反則金の納付をしなかった交通違反者500名以上を一斉に逮捕しています。
【逮捕後の流れ】
スピード違反で検挙後の3つの流れ
①反則金で終わる場合
一般道で時速30キロ未満、高速道路で時速40キロ未満のスピード違反は、反則金の納付用紙を持って金融機関に行き、お金を払って終了です。前科はつきません。反則金を払わない場合は次の②に移行します。
②時速80キロ未満のスピード違反
検挙後にいわゆる赤切符を交付されます。その後、指定された日に裁判所に出頭し、<警察の取調べ→検察官による略式請求→裁判所での略式裁判→罰金の納付>を数時間で終わらせます。これを「三者即日処理方式」といいます。裁判所の有罪判決が言い渡されるので、前科がつくことになります。
③時速80キロ以上のスピード違反
検挙された後、警察署に出頭し取調べを受け、供述調書を作成します。その後、検察庁に出頭し検察官の取調べを受け、改めて調書を作成します。その後、検察官が裁判所に公判請求し、裁判所から自宅に起訴状が届きます。自白事件であれば、初公判は以下のページに記載されている通りに進むでしょう。
【関連ページ】
スピード違反で弁護士をつける必要はある?
スピード違反で検挙された場合、①反則金で終わる場合と②時速80キロ未満のスピード違反については、弁護士をつけても処分が軽くなることはないと思われます。そのためこれらのケースで弁護士をつける必要はないでしょう。
もっとも、これらのケースであっても、「自分はスピード違反をしていない。」という否認事件の場合は、弁護士をつけた方がよいです。
一方、③時速80キロ以上のスピード違反では、正式裁判になるため弁護士をつけた方がよいです。
違反速度が時速80キロ~82キロ前後で、公務員など執行猶予がついても懲役刑になると失職してしまう方の場合、早期に弁護活動に着手することにより、公判請求を回避できる余地もあります。
【関連ページ】
スピード違反の弁護士の選び方
弁護士に依頼する場合は、スピード違反の刑事裁判を担当したことがある弁護士に依頼した方がよいでしょう。
ただ、時速80キロ以上のスピード違反でも、前科が複数あるとか、執行猶予中でない限り、いきなり実刑になることはありません。
そのため、「スピード違反の刑事裁判で執行猶予をとったことがある」というのは何の実績にもなりません。
可能であれば「スピード違反の刑事裁判で罰金をとったことがある」弁護士に依頼した方がよいでしょう。 ウェルネスの弁護士も罰金の獲得実績があります。
スピード違反の5つの弁護活動
スピード違反の弁護活動としては次の5つが考えられます。
①反省を示す
本人にスピード違反についての反省文を書いてもらい、弁護士を通じて検察官や裁判官に提出します。どうして被害者のいないスピード違反が犯罪とされているのかについて掘り下げて書くとよいでしょう。反省の気持ちを示すために、ボランティア活動に従事してもらうこともあります。
②贖罪寄付をする
反省の気持を形にするため、弁護士を通じて、慈善団体や弁護士会に贖罪寄付を行い、寄付の証明書を検察官や裁判官に提出します。
⇒贖罪寄付
③違反車両を処分する
生活していく上で自動車の運転が必須でない場合は、スピード違反をした車を売却してもらうこともあります。この場合、弁護士を通じて、検察官や裁判官に売買契約書や名義変更後の車検証を提出します。
④家族に監督してもらう
家族に監督プランを書いた陳述書を作成してもらい弁護士が検察官に提出します。起訴された場合は、家族に情状証人として出廷してもらいます。
⑤社会的不利益が大きいことを示す
公務員や医師など懲役刑を言い渡されることにより失職や業務停止、解雇の可能性がある場合は、検察官や裁判官に事情を説明します。
スピード違反の行政処分
スピード違反で検挙された場合、刑事事件になるか反則金で終わるかにかかわらず、下表の違反点数が付加されます。免許停止などの処分の前歴がない場合は、6点で免停30日、12点で90日となります。
【一般道路】
違反速度 |
点数 |
前歴なし |
前歴1 |
前歴2 |
50km以上 |
12点 |
停止90日 |
取消し1年 |
取消し1年 |
30km以上50km未満 |
6点 |
停止30日 |
停止90日 |
取消し1年 |
25km以上30km未満 |
3点 |
|
|
停止120日 |
20km以上25km未満 |
2点 |
|
|
停止90日 |
20km未満 |
1点 |
|
|
|
【高速道路】
違反速度 |
点数 |
前歴なし |
前歴1 |
前歴2 |
50km以上 |
12点 |
停止90日 |
取消し1年 |
取消し1年 |
40km以上50km未満 |
6点 |
停止30日 |
停止90日 |
取消し1年 |
25km以上40km未満 |
3点 |
|
|
停止120日 |
20km以上25km未満 |
2点 |
|
|
停止90日 |
*前歴…過去3年以内に免許停止・免許取り消しを受けた回数。1年以上無事故無違反でリセットされます。
最も重い免許停止90日が見込まれる場合、処分を受ける前に意見の聴取手続が開かれます。
行政処分と刑事裁判は全く別の手続ですので、刑事裁判の前に行政処分が行われることもありますし、後になることもあります。
刑事弁護と行政処分の軽減のための活動は共通するところが多いので、弁護士に刑事弁護を依頼している場合は、意見の聴取についても代理人になってもらい、弁護士に意見書を提出してもらうとよいでしょう。
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