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横領
☑ 家族が横領で逮捕された
☑ 横領で家宅捜索を受けた
☑ 横領の被害者と示談をしたい
このような方々のために、横領事件の加害者弁護に特化した弁護士が、横領事件の加害者側が知っておくべきことをまとめました。ぜひ参考にしてみてください。
目次
横領罪の3つの類型
横領罪には単純横領罪、業務上横領罪、遺失物横領罪の3つのタイプがあります。
| 要件 | 刑罰 | 具体例 |
単純横領罪 | 自己の占有する他人の物を横領すること | 5年以下の懲役 | 期限を過ぎてもレンタカーを返還せず使い続けた |
業務上横領罪 | 業務上自己の占有する他人の物を横領すること | 10年以下の懲役 | 従業員が顧客から集金したお金を着服した |
遺失物横領罪 | 占有を離れた他人の物を横領すること | 1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料 | 路上に放置されていた自転車を乗り逃げした |
以下では主として業務上横領罪について解説しています。
横領と逮捕・勾留
刑事事件として捜査された横領事件(単純横領・業務上横領・遺失物横領すべて含む)で、加害者が逮捕されたケースは15%です。
*2020年版の検察統計年報に基づく数値です。
かなり低いとも思われますが、刑事事件になった横領の約90%が刑罰の軽い遺失物横領です。業務上横領だけでみると逮捕率はかなり上がると思われます。
逮捕後に勾留される確率は91%、勾留期間(原則10日・最長20日)が延長される確率は59%です。
業務上横領で逮捕されやすいケース
大企業や官公庁は、コンプライアンスの観点から、職員の不祥事に対して厳しく対処することが求められます。そのため、これらの組織で横領した場合は、被害届や告訴状を提出され、逮捕される可能性が十分にあります。
成年後見人や弁護士・司法書士が横領した場合も事件化すれば逮捕されることが多いです。
中小企業の場合は、警察に申告するか否かは経営者の意思によるところが大きいです。加害者が逮捕されても、横領されたお金を回収できるわけではないことから、示談交渉に前向きな経営者も少なくありません。
そのため、交渉により事件化を回避できることが多々あります。刑事事件にならなければ逮捕されることはありません。
業務上横領で逮捕されるタイミング
業務上横領が刑事事件になったとしても、すぐに逮捕されるわけではありません。逮捕されるのは、早くて発覚してから数か月後になります。複雑な横領事件の場合、1年以上たってから逮捕されることもあります。
捜査機関はいったん加害者を逮捕すれば、最長でも23日以内に取調べを終え、起訴するか釈放するかを決めなくてはいけません。
そのため、複雑な横領事件については、逮捕前に何度か任意で取調べを行い、全体像を把握してから逮捕することが多いです。
それほど複雑な事件でなければ、捜査員がいきなり自宅に来て逮捕することもあります。警察は逮捕する前に加害者の行動を確認するため、加害者を尾行したり、自宅近くに車をとめて観察します。
ご不安な点があればお早めに弁護士にご相談ください。
業務上横領の取調べ
1.加害者の取調べ
業務上横領は巧妙に反復継続して行われることが多く、捜査も容易ではないことから、県警本部の捜査二課から所轄の警察署に捜査員が派遣され、加害者の取調べをすることが多いです。金銭の流れを追跡する財務分析官が派遣されることもあります。
業務上横領で逮捕・勾留された場合、他の犯罪に比べ、取調べの回数が多くなります。余罪も含めほぼ毎日、長時間の取調べが行われます。行き過ぎた取調べがないよう弁護士が目を光らせます。
2.家族の取調べ
業務上横領のケースでは、加害者の家族も警察の取調べを受けることになります。警察からは主として、横領期間中の加害者の暮らしぶり、特にお金の使い方について尋ねられます。
家族はあくまで参考人扱いとなるのが原則ですが、横領行為に加担したと疑われるような事情がある場合、被疑者として取調べを受けることもあります。
警察から呼出しがあった場合は弁護士にご相談ください。
業務上横領と再逮捕・追起訴
業務上横領は長期間にわたり反復・継続して行われることが多いです。業務上横領の時効は7年ですが、逮捕状に過去7年以内の全ての横領が記載されているわけではありません。。
警察は証拠が揃っている一部の横領で加害者を逮捕し、余罪については、再逮捕や追起訴(同一の被告人に対してある事件で起訴した後に別の事件で起訴すること)という形で進めることが多いです。
保釈請求は、弁護士がこれ以上再逮捕がないということを検察官に確認した上で行ないます。
【関連ページ】
再逮捕とは?報道や執行猶予との関係など「気になること」を全解説
業務上横領と保釈
保釈には被告人の権利として認められる権利保釈と裁判官の裁量によって認められる裁量保釈の2種類があります。
権利保釈は法律で定められた例外に当たらない限り必ず許可されます。
業務上横領のケースでは、着服行為を反復・継続していることが多いですが、このように常習性がある場合、上で述べた例外にあたり権利保釈は許可されません。
もっとも、裁量保釈が許可される余地は十分にあります。早期の保釈を目指す場合は、起訴前から弁護士と打ち合わせを重ね保釈の準備を進めていきます。
横領と不起訴
単純横領罪の不起訴率は63%、業務上横領罪の不起訴率は51%、遺失物横領罪の不起訴率は86%です。
*2020年版の検察統計年報に基づく数値です。
遺失物横領罪は起訴されても罰金で終わるケースが多いです。単純横領罪と業務上横領罪には罰金刑がないので、起訴されると執行猶予がつかない限り、刑務所で懲役刑に服することになります。
着服金額が数百万円にのぼる業務上横領の場合、示談が成立しなければ、初犯であっても起訴され実刑となる可能性が高いです。逆に示談が成立すれば執行猶予がつく可能性が高いです。
業務上横領と詐欺
業務上横領罪は自分で管理している金銭を着服した場合に成立します。
勤務先の会社に対する水増し請求は、もともと自分で管理していたお金を着服したわけではないので、業務上横領罪にはなりません。この場合は会社の担当者をだましているので詐欺罪が成立します。
【水増し請求の例】 下請け業者と結託し、下請け業者から自己の勤務先に過大な請求をさせ、本来の金額との差額を着服するケース |
業務上横領罪にせよ詐欺罪にせよ、法定刑(懲役10年以下)は同じで、罪質も共通しているため、事件の流れや弁護活動に大きな違いはありません。
業務上横領と示談
1.示談のメリット
横領で逮捕されても、その後に示談が成立すれば、不起訴の可能性が高まります。検察官は起訴するか否かの判断するにあたり、示談を非常に重視しているからです。
業務上横領のケースでは、会社としても横領の事実が公になることは避けたいとの判断から、示談が成立することが多いです。告訴状が出される前に示談が成立すれば、刑事事件にならずに終了します。
2.示談交渉は早めにスタート
単純横領や遺失物横領も含め、横領事件では、性犯罪や暴力犯罪と異なり、被害者側に示談交渉を拒否されることはほとんどありません。
いったん起訴されてしまうと、その後に示談が成立しても裁判はストップしません。そのため、できるだけ早期に示談交渉を開始すべきです。
3.横領の示談金の相場
業務上横領の示談金は、横領した金額がベースになります。金額が大きい場合は、分割払いで示談に応じていただけるよう弁護士が会社と交渉します。
単純横領罪や委託物横領罪については、横領した物を返還するのが原則です。
拾った財布や放置自転車を横領した場合は、持ち主の心情として「同じ物を使いたくない」という気持ちがあるため、同等品の購入費用をベースとして慰謝料を上乗せすることになります。
レンタカーを横領したケースでは、レンタカー会社の逸失利益が示談金のベースになるでしょう。
横領と示談以外の弁護活動
1.供託する
被害者から賠償金の受けとりを拒否された場合は、賠償金を供託します。一定の要件を満たせば、たとえ被害者が受けとりを拒否しても、供託することができます。
供託することによって、被害回復に尽力していることを検察官や裁判官にアピールできます。
2.浪費癖を治す
横領したお金で多額のブランド品を購入したり、ギャンブルに興じる方もいます。浪費癖が事件の背景にある場合は改善が必要です。買物依存やギャンブル依存になっている場合は依存症治療のクリニックに通院してもらいます。
3.債務整理をする
借金が横領の原因になっている場合は、弁護士が債務整理をします。
自己破産をする場合は、破産手続の準備段階から特定の債権者に弁済することが禁止されるため、弁護士が会社に事情を説明して、破産手続が終わるまで返済を猶予してもらいます。その間に資金をためておき、免責後にまとまったお金を会社に弁済することになります。
4.家族に監督してもらう
生活環境を立て直すためには家族の協力が必要です。家族には日常生活の中で本人を監督してもらいます。起訴された場合は家族に情状証人として出廷してもらいます。
⇒情状証人とは?尋問の流れや本番で役に立つ4つのポイントを弁護士が解説
横領の弁護方針(無罪を主張する場合)
1.横領罪の成立要件を検討する
単純横領罪や業務上横領罪が成立するためには、委託に基づいて占有している他人の物を違法に取得したことが必要です。
そのため、①委託があったのか、②本人が目的物を占有していたのか、③目的物は「他人の物」といえるのか(本人の物と考える余地はないか)、④目的物を違法に取得したのか(委託者のためにする意思はなかったのか)といった点について弁護士が検討し、横領罪の成立要件を満たしていないと考えられる場合、その点を検察官や裁判官に指摘します。
2.被害者側の言い分を検討する
業務上横領罪の多くは、被害届の提出や告訴など被害者側のアクションをきっかけとして捜査が始まります。既に被害者が民事訴訟を提起していることもあります。
なかには会社内部の権力闘争や民事訴訟を有利に運ぼうとして、相手を告発する者もいます。
弁護士が被害者側の言い分を検討したり、裁判で反対尋問を行うことによって、被害者の供述に信用性がないことを明らかにします。
オーダーメイドの弁護活動
このページでご紹介している弁護方針は一つの例にすぎません。事件によってベストな弁護活動は異なります。ウェルネスでは、数多くのノウハウに基づき、一つ一つの事件に対応した完全オーダーメイドの弁護活動を行います。
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