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不起訴とは?無罪との違いや前歴・罰金との関係
このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。
不起訴とは
不起訴の意味
不起訴とは、簡単にいうと被疑者を刑事裁判にかけないことです。刑事裁判が開かれないので、事件について審理されたり判決を受けることはありません。
起訴と不起訴の違い
不起訴と正反対の処分は起訴です。起訴とは被疑者を刑事裁判にかけることです。被疑者が起訴されると「被告人」と呼ばれ、裁判の当事者として、審理を受け裁かれることになります。
起訴・不起訴は誰が決める?
被疑者を起訴するか不起訴にするかは裁判官ではなく検察官が決めます。これを検察官の起訴独占主義といいます。
不起訴であれば前科はつかない
前科とは「刑事裁判で有罪判決を受けた経験があること」です。不起訴処分になれば、刑事裁判にならないため、当然ですが有罪判決を受けることもありません。そのため前科はつきません。
不起訴は意外に多い
検察官が扱う刑事事件の約6割が不起訴になります。逆に、起訴されれば、99%以上の確率で有罪となります前科がつきます。そのため、前科を避けるためには、無罪判決ではなく不起訴を狙うべきです。
不起訴の種類
不起訴処分は、不起訴の理由に応じて全部で20種類ありますが、代表的なものは、①嫌疑なし、②嫌疑不十分、③起訴猶予の3つです。
1.嫌疑なし
嫌疑なしとは、被疑者が犯人でないことが明らかなとき、または、犯罪を認定する証拠がないことが明らかなときに出される不起訴処分です。真犯人が見つかった場合や被疑者にアリバイがある場合は嫌疑なしで不起訴になります。
2.嫌疑不十分
嫌疑不十分とは、被疑者が犯人であることや犯罪の成立について十分な証拠がなく、起訴しても有罪にもち込めないと検察官が判断したときに出される不起訴処分です。
嫌疑なしと異なり完全にシロというわけではありませんが、刑事裁判では、被告人が罪を犯したことを検察官が証明できなければ無罪になるため、証明できるだけの十分な証拠がない場合は、嫌疑不十分で不起訴にします。
3.起訴猶予
起訴猶予とは、犯罪を証明するだけの十分な証拠があり、起訴しようと思えばできるものの、行為の内容や示談がまとまっていること等さまざまな事情を考慮して、検察官が起訴しないと判断したときに出される処分です。不起訴の約90%が起訴猶予です。
その他の不起訴処分として、「被疑者死亡」、「親告罪の告訴取消し」、「時効完成」、「心神喪失」などがあります。
不起訴と無罪の違いは?
不起訴は被疑者を刑事裁判にかけないことですので、裁判官によって有罪か無罪か判断されることはありません。
これに対して、無罪は、被疑者を刑事裁判にかけ、裁判官による審理を経た後に、判決として言い渡されるものです。
このように両者は別物ですが、嫌疑なし・嫌疑不十分で不起訴になった場合は、検察官が「起訴しても有罪に持ち込めない」と判断したわけですから、無罪に準じるものとみなせます。
一方、起訴猶予で不起訴となった場合は、犯罪を立証するだけの証拠があり起訴することもできたわけですから、有罪に準じることになります。
不起訴でも前歴はつく
前歴とは、「刑事事件の被疑者として捜査の対象になった経験があること」です。不起訴になっても被疑者として捜査を受けている以上、前歴はつきます。
ただ、前歴のデメリットは、「再び罪を犯したときに処分が重くなる可能性が高くなる」ということくらいです。
⇒前科とは?前歴との違いや5つのデメリット、結婚・就職に影響は?
不起訴と罰金の関係は?
刑事罰金を科すことができるのは裁判しかありません。不起訴とは被疑者を裁判にかけないことです。そのため、不起訴になれば裁判で罰金を科されることもありません。
逆に、罰金刑になれば不起訴にならなかったことを意味します。通常、罰金は略式裁判という簡単な裁判で科されます。略式裁判は書面のみで審理され法廷は開かれませんが、れっきとした裁判です。
⇒略式裁判とは?正式裁判との違いや拒否すべきかを弁護士が解説
「罰金を支払えという書面が家に届いたが、裁判所に一度も行っていないので不起訴ではないのか?」と思われるかもしれません。
しかし、略式起訴された上で略式裁判で審理されていますので、不起訴になったわけではありません。罰金であっても前科はついています。
不起訴を獲得するための方法
1.容疑を認めているケース
起訴猶予または告訴取消(親告罪の場合)による不起訴処分の獲得を目指します。被害者のいる事件については、被害者と示談をして許してもらえれば、不起訴の可能性が高くなります。
親告罪については、示談をして告訴を取り消してもらえば、確実に不起訴になります。
刑事事件の被害者は加害者とコンタクトをとりたくないと思っているため、示談交渉は弁護士を通して行うことになります。
被害者のいない事件については、再発防止プランをきちんと実行し、検察官に納得してもらうことが必要です。弁護士が本人やご家族と協議して再発防止プランをたて、取り組み状況を証拠化して検察官に提出します。
2.容疑を否認しているケース
嫌疑なしまたは嫌疑不十分による不起訴処の獲得を目指します。取調べにおいて自白調書をとられてしまうと起訴される可能性が高まります。
自白調書をとらせないよう、取調べにおいては黙秘で対応することが基本です。弁護士が接見したり、取調べに同行することで本人をサポートします。
不起訴処分告知書とは
不起訴になれば検察官から「不起訴処分告知書」と呼ばれる証明書をもらうことができます。弁護士をつけていれば弁護士が本人の代わりに不起訴処分告知書を取得してくれるでしょう。
弁護士をつけていない場合は、本人が担当の検察官に申請することにより交付してもらうことができます。
不起訴処分告知書の詳細は以下のページをご覧ください。
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