業務上横領と労基署の解雇予告除外認定

労基署

 

 

業務上横領が会社に発覚すると、横領した社員は会社の調査を受けることになります。調査が一段落すると、自宅待機を命じられることが多いです。

 

 

この間に、労働基準監督署から自宅に封書が届くことがあります。開封すると「解雇予告除外認定について」という書面が入っており、次のような文章とともに日時と場所が指定されています。

 

 

「貴方に係る解雇予告除外認定申請が株式会社○○よりありました。ついては申請理由等について事情をお尋ねしたいので、下記により来署して下さい。」

 

 

このページでは、多数の業務上横領を取り扱ってきた弁護士 楠 洋一郎が、解雇予告除外認定の意味や労基署への対応方法について解説しています。ぜひ参考にしてみてください。

 

 

業務上横領と解雇予告除外認定

「あなたを今日付けで解雇します。」

 

 

いきなりこんなことを言われれば誰しも動揺してしまうでしょう。

 

 

従業員にも生活があります。そのため、会社が従業員を即時に解雇するときは、1ヶ月分の給与に相当する額を支払う必要があります(労働基準法20条1項)。

 

 

これを解雇予告手当といいます。

 

 

ただし、これには例外があります。解雇されることについて従業員に責任があるケースです。

 

 

従業員に落ち度があって即時解雇されても仕方がないといえるケースでは解雇予告手当を支払う必要がないと定められています(同条2項)。

 

 

もっとも、会社の一存で「あなたに責任があるので解雇予告手当を払わない。」と決めることはできません。会社が解雇予告手当の支払いを免れるためには、そのことを労働基準監督署に認めてもらう必要があります。

 

 

これが「解雇予告除外認定」です。会社が労基署に除外認定を申請すると、労基署は従業員からも事情をヒアリングします。そのため、労基署は従業員にヒアリングの日時と場所を指定した通知書を発送するのです。

 

 業務上横領と労基署への対応

業務上横領が会社に発覚した後、指定された日時に労基署に行くと、労働基準監督官のヒアリングを受けることになります。

 

 

監督官はヒアリングの内容をふまえて解雇予告除外認定を出すかどうかを判断します。それでは、労基署から呼び出しを受けた場合、どのように対応すればよいのでしょうか?

 

 

厳しい言い方になってしまいますが、業務上横領のケースでは、従業員が労基署に行って弁明しても除外認定を阻止することは難しいです。業務上横領は単なる能力不足とか怠慢というレベルを超えた犯罪行為だからです。

 

 

「自分の仕事が正当に評価されていなかった。」

「上司からパワハラを受けていたのに会社は何もしてくれなかった。」

「残業代が全く出なかったので少しくらいはいいだろうと思った。」

 

 

このような辛い事情があったかもしれません。しかし、だからといって会社のお金を横領してよいということにはなりません。

 

 

労基署からの呼び出しに応じることは義務ではありません。労基署に行かない場合は、会社の申請に異議がないものとして扱われますが、労基署は警察ではありませんので、家宅捜索されたり逮捕されることはありません。

 

 

そのため「労基署に行かない」という選択もあり得ます。弁護士がついている場合、労基署に行くかどうかは弁護士に相談して決めるとよいでしょう。

 

 

もしまとまった金額を弁済できるのであれば、早期に会社と示談交渉を始めます。示談が成立し懲戒解雇を撤回してもらえれば、除外認定の申請は取り下げられるでしょう。

 

業務上横領で解雇予告の除外認定を阻止できるケース

業務上横領が発覚した後、労基署から呼び出しを受けたケースでは、解雇予告の除外認定を阻止することは難しいです。

 

 

もっとも、「横領していないのに会社から横領したと言われている」というケースでは除外認定を阻止できる余地が十分にあります。

 

 

労基署のヒアリングには弁護士が同席することもできますので、このようなケースでは弁護士に同行してもらうとよいでしょう。

 

 

除外認定を阻止することができれば、横領の事実がないことが推認されますので、刑事事件化を阻止できる可能性も高くなります。

 

 

ウェルネスの弁護士は、労基署のヒアリングに同行し、除外認定を阻止した実績が複数あります。いずれのケースでも刑事事件化することなく解決できました。

 

 

【業務上横領と労基署への対応】ウェルネスの解決事例

事案の概要

ご本人が前任者から経理を引き継いだが、慣れていなかったこともあり、従業員が立替払いした経費を精算する際、領収書をもらっていなかったり、もらった後に適切に管理しておらず、使途不明金が発生してしまいました。会社は横領したと疑い、労基署に除外認定の申請をしました。

 

 

弁護活動

弁護士がご本人と一緒に労基署に行き、横領ではないことを監督官に説明しました。その結果、除外認定はされませんでした。その後、解雇予告手当が発生していることを前提として、会社と示談が成立し、刑事事件化を阻止しました。

 

 

 

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