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業務上横領の示談書の作り方を弁護士が解説-書式あり
このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。
目次
業務上横領の示談書はどうやって作るの?
業務上横領の示談においては、横領した金額を全額会社に弁済することが原則です。ただ、業務上横領は、窃盗などの単純な刑事事件に比べて、被害額が大きくなりがちです。
もし、一括で示談金を支払うのが難しければ、会社と交渉して分割払いでの示談を目指すことになります。
分割払いのケースでは、途中で返済が滞るリスクがありますので、会社としては、分割払いを受け入れる代わりに、連帯保証人を立てることや、公正証書を作成すること、あるいはその両方を求めてくることが多いです。
本ページでは、以下のような業務上横領のケースで、示談書をどのように作ればよいのか弁護士 楠 洋一郎が解説します。
【ケース】
①横領した金額…1000万円
②示談金は毎月10万円の100回の分割払い
③父が連帯保証人になる
④公正証書を作成する
業務上横領の示談書:頭書き
示談書の始めに、当事者の名前を記載して、示談が成立したことを明らかにします。
【弁護士が作った頭書きの書式】
「第1条 株式会社〇〇(以下「甲」という)と○○(以下「乙」という)及び〇〇(以下「丙」という)との間で、次のとおり示談及び連帯保証契約が成立したので、その証として本書面3通を作成し、甲乙丙各1通ずつ保管する。」
*甲が会社、乙が横領の加害者、丙が連帯保証人です(以下同じ)。
業務上横領の示談書:債務弁済条項
示談書の中で、横領した金額を特定し弁済することを約束する条項を付加します。
【弁護士が作った債務弁済条項の書式】
「第2条 乙は、甲の従業員として勤務していた期間、~したことにより、甲に対し、本日現在、金1000万円の債務を負担していることを承認し、以下の条項に従い弁済することを約した。」
*「~」の部分は事件によって異なります。
業務上横領の示談書:支払い条項
債務弁済条項で記載した債務をどのようなスケジュールで返していくのかを記載します。
毎月の返済金額については、無理なく返せる金額にしておかないと、途中で不履行となってしまい、再びトラブルになりかねません。自分で交渉するのが難しい場合は弁護士に依頼するとよいでしょう。
【弁護士が作った支払条項の書式】
「第3条 乙は、前条記載の金1000万円を分割して、甲に対し、2019年4月から2027年7月まで毎月末日までに金10万円を甲の指定する銀行口座に振り込む方法によって支払う。なお、振込手数料は乙の負担とする。」
*毎月10万円の100回払いになります。
*振込手数料は加害者側が負担するのが一般的です。
業務上横領の示談書:期限の利益喪失条項
分割払いのように即時に一括で支払う必要のないことを「期限の利益」といいます。期限の利益喪失条項があれば、不払いがあった場合に期限の利益がなくなり、残金を直ちに一括で支払う義務が生じます。
業務上横領の示談書についても期限の利益喪失条項が付加されることが多いです。
【弁護士が作った期限の利益喪失条項の書式】
「第4条 乙は、前条の分割金の支払いを怠り、その額が金20万円に達した場合、甲からの通知催告がなくとも、当然に期限の利益を失い、甲に対し、第2条記載の金額から既払額を控除した金額、及び、これに対する期限の利益を喪失した日の翌日から支払済みまで年5パーセントの割合による遅延損害金を直ちに支払う。」
*うっかり期日までに支払うことを忘れていただけで期限の利益を失うのは加害者にとって酷ですので、ひと月あたりの返済金額の倍額を支払わなかったときに期限の利益が喪失するとの内容で交渉するのがよいでしょう。
*遅延損害金の利率は5%か10%が一般的です。
業務上横領の示談書:連帯保証条項
長期の分割払いで示談を希望するのであれば、連帯保証人をつけることは避けられないでしょう。連帯保証人には配偶者や親がなるのが一般的です。
【弁護士が作った連帯保証条項の書式】
「第5条 丙は、乙の委託により、甲に対し、本日、乙の甲に対する上記債務について連帯して保証する旨約し、乙と連帯してこれを支払う。」
*丙が連帯保証人です。
業務上横領の示談書:刑事事件に関する条項
業務上横領で逮捕されたり起訴されることを防ぐため、刑事事件化を阻止するための条項を付加します。示談金を一括で支払った場合は、無条件で事件化阻止の条項を入れてもらえることが多いです。
分割払いの場合は、条件つきの条項となるのが一般的です。
【弁護士が作った刑事事件に関する条項の書式】
「第6条 甲は、乙が第3条の分割金の支払を怠りその額が金20万円に達しない限り、捜査機関に対し、本件不法行為について被害届または告訴状を提出せず、かつ、その他の方法で被害の申告をしない。」
会社が既に被害届や告訴状を提出している場合は次のような条項にすべきです。
「第6条 甲は、本件について乙を許し、本件についての被害届または告訴を速やかに取り下げるものとする。」
業務上横領の示談書:守秘義務条項
業務上横領で示談が成立しても、会社から事件についての情報が外部に広まってしまうと再就職や今後のキャリアに悪影響が生じるおそれがあります。そのため、示談書には守秘義務条項を入れます。
【弁護士が作った守秘義務条項の書式】
「第7条 甲と乙及び丙は、本件及び本示談書の内容につき、捜査機関に開示するなど合理的な理由のある場合を除き、第三者に開示しない。」
*既に刑事事件化している場合は、加害者側から、示談書を警察の担当者や検察官に提出する必要があります。会社も、自社の従業員や取締役、株主に開示する必要が生じる場合があります。そのため、守秘義務条項には「合理的な理由がある場合を除き」といった例外を入れた方がよいでしょう。
業務上横領の示談書:公正証書に関する条項
公正証書にする場合は、その旨の文言を追加します。
公正証書の中に、「強制執行を認諾する」という文言があれば、民事訴訟をしなくてもすぐに給与差押えなどの強制執行をすることができるため、会社は執行認諾文言がついた公正証書を求めてくるはずです。
【弁護士が作った公正証書に関する条項の書式】
「第8条 甲、乙、丙は、本示談書の内容について、強制執行認諾文言を付した公正証書を作成することとする。なお、上記公正証書の作成費用は乙が負担する。」
業務上横領の示談書:精算条項
示談をして示談金を全て支払ったにもかかわらず、後日会社から再び損害賠償を請求されればたまったものではありません。
精算条項があれば、示談書で約束した義務に違反しない限り、紛争の蒸し返しを防ぐことができ、最終的な解決が保証されます。
【弁護士が作った精算条項の書式】
「第9条 甲と乙及び丙は、本件に関し、本示談書に記載されたもののほかに、甲と乙及び丙との間には何らの債権債務関係が存在しないことを相互に確認する。」
業務上横領の示談書:署名・捺印する
示談書の末尾に甲の代表取締役・乙・丙がそれぞれ署名(記名)・捺印します。弁護士を立てた場合は弁護士が代理人として署名(記名)・捺印します。
上で紹介したものは最低限の内容です。実際には、会社や加害者の状況によって示談書の内容は異なってきます。ご自身にとって最も有利な示談書を作成するためには、弁護士のサポートを受けた方がよいでしょう。
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