成年後見人の横領

このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。

 

 

成年後見人が横領すると何罪になる?

成年後見人とは、認知症などで判断能力が不十分な方(被後見人)のために、財産管理や身上監護をする人のことです。親族等の請求によって家庭裁判所によって選任されます。

 

近年、成年後見人が被後見人の財産を横領するケースが増えています。成年後見人は、被後見人の財産管理という「業務」を担っていますので、成年後見人が被後見人の財産を横領すると業務上横領罪が成立します。

 

業務上横領罪の刑罰は10年以下の懲役です。

 

成年後見人の横領と刑事事件

成年後見人の横領が家庭裁判所に発覚すると、そのような後見人に業務を任せるわけにはいかないため、裁判所が職権で、新たな成年後見人を選任します。横領という重大な問題が発生しているので、新たな成年後見人は、被後見人の親族からではなく、弁護士から選任されます。

 

被後見人は判断能力が不十分ですので、示談交渉は新たに成年後見人に選任された弁護士と行うことになります。成年後見人の弁護士は、家庭裁判所と協議した上で、示談するか否か、示談の条件などの方針を決めていきます。

 

被後見人との間で示談が成立すれば、通常、刑事事件になることはありません。逆に、示談が成立しなければ、刑事告訴される可能性が高いです。成年後見人の横領は数百万円以上の多額になるケースが多く、弁済しなければ逮捕・起訴され、実刑判決になる可能性が高いです。

横領で逮捕されるケースとされないケース

 

また、刑事事件と並行して、民事でも損害賠償請求訴訟を提起されることになります。

 

親族後見人でも刑は免除されない

(1)親族間の犯罪に関する特例

窃盗罪については、被害者が加害者の配偶者、直系血族、同居の親族の場合は、刑が免除されます(刑法244条1項)。これを親族間の犯罪に関する特例といいます。この特例は、<家庭内の金銭トラブルについては、国家が介入するのではなく家庭内の判断に委ねるべき>との考えに基づきます。

 

横領罪、業務上横領罪にもこの特例が準用されています(刑法255条)。

 

(2)親族後見人には親族間の犯罪に関する特例は準用されない

後見人である配偶者や子、同居の親族が、被後見人の財産を横領した場合にも、親族間の犯罪に関する特例が準用されれば、処罰されないことになります。

 

しかし、判例では準用が否定されています(最高裁平成24年10月9日決定)。成年後見人は被後見人の財産を誠実に管理する法的義務を負っていて、その業務は公的な性格をもっているので、単純な家庭内のトラブルとはいえないからです。

 

横領した親族後見人の刑事弁護

新たに成年後見人に選任された弁護士と交渉し、示談を成立させることが最も重要な弁護活動になります。示談をするためには、横領した金銭を全額弁償することが必要です。一括で支払うことが難しい場合は、資産や収入の状況を説明し、分割弁済に応じてもらえるよう交渉することになります。

 

また、親族後見人が被後見人の身の回りの世話に不可欠な役割をはたしており、他に代わるべき存在がいない場合は、刑事告訴よりも示談が優先される傾向にあるといえます。刑事告訴して親族後見人が逮捕・起訴され、実刑判決を下されると、親族の中で誰も被後見人を介護する人がいなくなり、被後見人にとってかえって不利益な状態になってしまうからです。

 

なお、成年後見人の業務としては、財産管理と身上監護がありますが、「身上監護」とは、施設の入所手続や医療費の支払い等を行うことであって、実際に見の回りの世話をすることではありません。そのため、新たに成年後見人が選任されたからといって、被後見人の介護の問題が全て解決するわけではありません。

 

ウェルネスの解決事例

①事案の概要

ご依頼者が認知症になった親族の成年後見人をしていましたが、その親族から約3000万円を横領した事件

 

②弁護士の活動

ご依頼者は、ふだんから被後見人の身の回りの世話をしており、近々同居して介護する予定でした。他の親族は、健康上の理由により、被後見人の介護を行える状態ではありませんでした。

 

ウェルネスの弁護士が、新たに後見人に選任された弁護士に、他の親族の診断書等を提出し、被後見人の福祉の観点からも、示談を前向きに検討していただきたいと主張しました。こうした活動の結果、長期の分割払いでの示談が成立し、刑事事件にならずに解決しました。

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