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業務上横領と身元保証人-どこまで責任を負うのか?

このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。

 

 

身元保証人とは?

身元保証人とは、従業員である本人が勤務先の会社に対して損害を与えた場合に、本人と共に賠償責任を負う人です。本人が入社する際、会社から求められて、親が身元保証書に署名・捺印して身元保証人になるケースが多いです。

 

本人が会社に損害を与えた場合、会社は本人に賠償請求してもいいですし、いきなり身元保証人に請求することもできます。本人に資力がない場合は、会社は身元保証人からお金を回収しようとするでしょう。

 

業務上横領と身元保証人

身元保証人が会社から損害賠償を請求される事例でよくあるのは、本人が会社のお金を横領してしまった業務上横領のケースです。

 

本人が会社のお金を横領した場合は、身元保証人も責任を負うことになります。ただ、身元保証人の責任は、民事上の賠償のみであり、刑事事件についてまで責任を負うわけではありません。

 

そのため、本人と共同して横領していたというのであればともかく、そのような事情がなければ、身元保証人が業務上横領で逮捕・起訴されることはありません。

 

身元保証人が責任を負わなくてもよいケース

①勝手に身元保証書を出された場合

本人が勝手に身元保証書に親の名前を書いてハンコを押して、会社に提出した場合、そもそも親に身元保証人になるという意思が存在しないため、身元保証人にはなりません。

 

したがって、原則として親が保証責任を負うことはありません。

 

②有効期間が経過した後

身元保証契約は、事前に責任の範囲が決まっているわけではなく、予想外に大きな責任を負う可能性があることから、身元保証人を保護するため、「身元保証に関する法律」によって有効期間が次のように決められています。

 

 

契約期間を定めていない場合

契約期間を定めた場合

更新した場合

有効期間

最長

5年以上の期間を定めた場合、5年に短縮される

最長

5年以上の期間を定めた場合、5年に短縮される

 

そのため、①契約期間を定めていない場合は契約時から年、②契約期間を定めている場合は、契約時から最長でも年、②更新した場合も更新時から最長でも年の間に生じた損害についてのみ保証責任が生じます。

 

それ以降に本人がした横領について身元保証人が責任を負うことはありません。

 

③限度額の定めがないケース

改正民法の施行される2020年4月以降に締結された身元保証契約については、身元保証人が負担する賠償金額の上限(極度額)が定められていない場合は、契約が無効になりますので、身元保証人が責任を負うことはありません。

 

身元保証人の責任が認められるケース

身元保証人が自分で身元保証書に署名・捺印したときは、当然、保証責任を負うことになります。

 

それでは次のケースではどうでしょうか?

 

息子から「この紙にサインしてハンコを押して。」と言われ、身元保証書の内容をよく見ずに、軽い気持ちで署名・捺印してしまった。その時点では、まさか自分が損害賠償を請求されることになるとは思っていなかった。

 

この場合、民事裁判で「身元保証書の内容をよく確認していなかったので保証責任は負わない。」と主張しても認められないでしょう。

 

本人が身元保証書に署名・捺印している以上、契約は有効なものとして扱われます。錯誤があるので身元保証契約は無効なようにも思われますが、身元保証書の内容を確認せずに署名・捺印してしまったという重大な過失があるため、無効を主張しても認められないでしょう。

 

では次のケースではどうでしょうか?

 

息子から「この紙にサインしてハンコを押して。」と言われ身元保証書を渡された。父は書面を読んだ上で、息子に対して、「私の代わりにサインしてハンコを押して会社に出しといて。」と言った。息子は父の代わりに身元保証書に署名・捺印して、会社に提出した。

 

このケースでは、身元保証書に署名・捺印したのは息子ですが、父の意思に基づくものである以上、身元保証契約は有効なものとして扱われます。仮に父が書面の内容をよく読まずに、息子に署名・捺印させた場合も、父に重大な過失があるといえるので、身元保証は有効なものとして扱われます。

 

身元保証人の責任は本人と同じ?

たとえ身元保証人として責任を負う場合であっても、責任の程度は必ずしも本人と同じではありません。

 

身元保証人は本人の近親者や友人が何の見返りもなしになることが多く、責任の範囲も明確ではないことから、本人と同一の責任を負わせると身元保証人に酷な結果になります。

 

そのため、「身元保証に関する法律」で、裁判所は、本人の監督についての勤務先の過失や身元保証をすることになった経緯などを踏まえて、責任を負う金額を判断することとされています。

 

裁判になれば、身元保証人が責任を負うべき金額はかなり減額されることが多いです。5割以上減額されることも少なくありません。

 

業務上横領の身元保証人はどうすべきか?

業務上横領のケースでは、本人と会社との間で示談が成立すれば、逮捕や起訴を防げる可能性が高いです。そのため、身元保証人が本人の親である場合は、示談の成立を最優先すべきです。

 

業務上横領では、<数千万円単位のお金を横領したが、とったお金はほとんど残っておらず、身元保証人にもまとまった資産がない>というケースが多いです。

 

このようなケースでは分割払いの示談を目指すことになりますが、支払いの確実性を担保するため、会社は示談に際して、身元保証人に対して連帯保証人になることを求めてきます。

 

民事裁判になれば、「身元保証に関する法律」によって、身元保証人の責任はかなり減額されますが、示談は裁判前の和解ですので、このような減額ルールは適用されません。

 

身元保証人が本人の親である場合は、示談が成立しなければ、自分の子が逮捕・起訴される可能性が高まることから、示談をまとめることを最優先とし、全額について連帯保証することになっても示談を成立させるべきです。

 

もっとも、高齢の親である身元保証人に対して唯一の資産である自宅を売却するように迫られているようなケースでは、民事裁判になれば身元保証人の責任がかなり減額されることを主張して、会社と交渉することも考えられます。

 

また、身元保証人が親ではなく友人である場合は、全額について連帯保証までする必要はありませんので、会社が減額してくれないのであれば、民事裁判で、賠償額を争った方がよいでしょう。

 

まずは弁護士にご相談ください。

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