痴漢

このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。

 

 

痴漢とは?

痴漢とはわいせつ目的で被害者の身体を触ることです。満員電車などで偶然手があたっただけの場合は、わいせつ目的がないので痴漢にはなりません。

 

痴漢をしたらどのような犯罪になるのでしょうか?

 

実は「痴漢罪」という犯罪はありません。ケースに応じて、①各都道府県の迷惑防止条例違反になる場合と、②刑法の強制わいせつ罪になる場合があります。

 

迷惑防止条例違反の最高刑は、都道府県によって異なりますが、懲役年か年です。これに対して、強制わいせつ罪の最高刑は懲役10年です。

 

このことからわかるように、痴漢の中でも悪質なケース、とりわけ、下着の中に手を入れて直接身体を触ったケースは強制わいせつ罪になります。

 

 

痴漢の刑罰

迷惑防止条例は都道府県ごとに定められています。東京1都3県の刑罰は以下の通りです。強制わいせつは刑法で定められていますので、刑罰は全国一律です。

 

 

都道府県

通常の場合

常習の場合

迷惑防止条例違反

東京都

6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金

1年以下の懲役または100万円以下の罰金

埼玉県

千葉県

神奈川県

1年以下の懲役または100万円以下の罰金

2年以下の懲役または100万円以下の罰金

強制わいせつ罪

6ヶ月〜10年の懲役

  

 

痴漢で逮捕される3つのケース

痴漢で逮捕されるときは、被害者や目撃者による現行犯逮捕として扱われます。逮捕されるのは以下の3つのケースです。

 

①その場から逃げようとしたとき

この場合、実際に痴漢をしたから逃げようとしたのだと判断され、逮捕されることが非常に多いです。

 

 

②本人が不合理な話をしているとき

痴漢の被害者や目撃者の言っていることに説得力があり、本人が痴漢をした疑いが強まっているにもかかわわらず、不合理な話を続けている場合も逮捕されることが多いです。

 

 

③身元が不安定な場合

本人が最初から痴漢したことを素直に認めていても、住居不定であったり身元引受人になってくれる家族・知人がいない場合は、逮捕されることが多いです。

 

 

痴漢で逮捕されることを防ぐために

痴漢で逮捕されるときは、上で説明した①か②のケースで逮捕されることが多いです。

 

逃げたときは、運が良ければ足がつかずにすみますが、後日逮捕されれば実名報道の可能性も高くなるので、弁護士としては決しておすすめできません。

 

実際に痴漢をしたのであれば、素直に事実を認めれば逮捕の可能性は下がります。

 

痴漢冤罪のケースでは、本人の言い分と相手の言い分のどちらに信用性があるかが決め手になります。本人の言い分が相手の言い分に比べて信用できると判断されれば、逮捕されることはないでしょう。

 

警察は、信用性を判断するにあたっては、話の内容だけではなく、本人の供述態度にも注目しています。動揺のあまり挙動不審になっていれば、それだけで信用できないとみなされ逮捕の可能性が上がります。

 

自分の考えを主張する際は、落ち着いて堂々と話をしてください。

  

 

 

痴漢と後日逮捕

痴漢は現行犯で逮捕されることがほとんどですが、後日逮捕されることもあります。

 

電車内の痴漢について後日逮捕のよくある流れをご紹介します(ウェルネスの弁護士が実際に取り扱ったケースをモデルとしています)。 

 

痴漢事件発生→被害者が被疑者の腕をつかむ→被疑者が駅ホームから逃走

警察が防犯カメラやSUICA利用履歴から被疑者を特定

警察が被疑者を尾行しばれないように写真撮影

警察が被害者に何人かの写真をみせて「この人に触られました」と被疑者を特定できるか確認→特定

警察が裁判所に被疑者の逮捕状を請求→逮捕状が出る

私服警察官が被害者と一緒に被疑者を待ち伏せ→被害者が被疑者を確認できればその場で逮捕


*⑥の時点で被疑者が再び逃げた場合、近日中に警察が被疑者の自宅に来る可能性が高いです

 

後日逮捕を回避するための方法として自首が考えられます

 

【関連ページ】

自首の相談は弁護士へ

痴漢で自首したときの流れと逮捕の可能性  

 

 

痴漢と不起訴

迷惑防止条例違反のケース

初犯の方の場合、痴漢の被害者と示談をすれば、不起訴になる可能性が非常に高いです。示談が成立しなければ略式裁判罰金となるケースが多いです。

 

前科があれば、公判請求される可能性が高くなりますが、執行猶予中とか性犯罪の前科が複数あるといったケースでない限り、執行猶予になる見込みは十分にあります。

 

 

 強制わいせつのケース

強制わいせつは、以前は、告訴がなければ起訴することができない犯罪でしたが、2017年6月の刑法改正により、告訴がなくても起訴できるようになりました。

 

そのため、現在では、被害者と示談して告訴を取り下げてもらっても確実に不起訴になるとはいえません。ただ初犯の方の場合は、示談が成立すれば、よほど悪質なケースでない限り不起訴になることが多いです。

 

迷惑防止条例違反と異なり、強制わいせつ罪は懲役刑のみで罰金刑はありません。そのため、起訴されば、罰金について迅速に審理する略式裁判ではなく正式裁判で審理されます。

 

起訴された場合でも、示談がまとまれば執行猶予の可能性が高くなります。初犯の方であれば、示談なしでも執行猶予の見込みは十分にあります。

 

 

痴漢の弁護方針(罪を認める場合)

(1)示談をする

検察官は、痴漢の被疑者を起訴するか不起訴にするかを決めるに当たり、示談したかどうかを非常に重視します。そのため、被害者との間で示談が成立すれば、不起訴になる可能性が高まります。

 

示談する前に起訴されたとしても、その後に示談が成立すれば、執行猶予になる可能性が高まります。裁判官も刑罰の重さを判断するにあたり、示談の成否を非常に重視しているからです。

 

捜査機関は、加害者本人やご家族に被害者の電話番号などの個人情報を教えてくれませんので、示談交渉は弁護士が行うことになります。痴漢の被害者は大きな不安を抱いています。

 

弁護士としては、交渉全般を通じて、被害者の気持ちに細やかに配慮した姿勢が求められます。

 

【不起訴を獲得するために】

弁護士が、示談書と示談金の領収書を検察官に提出します。

 

 

(2)謝罪する

不起訴を獲得する上で示談は極めて重要ですが、大きな不安を抱いている被害者に対して、いきなりお金の話をするのは控えるべきです。まずは被害者の方に心からお詫びをすることが必要です。

 

ほとんどの被害者は加害者に直接会うことを希望されません。そのため、弁護士を通じて、謝罪文をお渡しすることにより、お詫びすることになります。

 

【不起訴を獲得するために】

弁護士が謝罪文の写しを検察官に提出します。また、本人に検察官の前で被害者に対するお詫びの気持を直接語ってもらいます。

 

 

(3)専門家のサポートを受ける

痴漢の常習者のなかには、痴漢から足を洗いたいという気持ちをもちながら、自分自身をコントロールできず、痴漢を繰り返してしまう人が少なからずいます。

 

そのような方に対しては、専門家の助けが必要です。医師やカウンセラーの治療を受けることによって、痴漢に走ってしまう傾向を根本から改善する必要があります。

 

【不起訴を獲得するために】

弁護士が、診断書や本人作成の通院報告書などを検察官に提出します。

 

  

(4)通勤経路を変更する

痴漢の被害者は、加害者に対して強い恐怖感を抱いています。

 

そのため、加害者としては、今後、被害者と同じ電車に乗り合わせないよう、可能であれば通勤経路の変更を検討した方がよいでしょう。示談書に、通勤経路の変更について明記することもあります。

 

【不起訴を獲得するために】

通勤経路を変更したことの証拠として、弁護士が新たな定期券の写しを検察官に提出します。

 

 

(5)その他の弁護活動

① 早期釈放を目指す

身体拘束されているときは、弁護士が早期釈放に向けた活動を行います。

 

② 寄付をする

示談が成立しなかった場合、反省の気持ちを示すために慈善団体等へ贖罪寄付(しょくざいきふ)をします。弁護士が寄付したことの証明書を検察官に提出します。

 

③ ご家族に協力してもらう

ご家族に本人を監督するよう約束してもらいます。不起訴を獲得するために、ご家族が本人を監督する旨の誓約書を証拠として提出します。

 

公判請求された場合は情状証人として、裁判官の前で、更生に向けて本人をどのようにサポートしていくのかを話してもらいます。

 

 

痴漢の弁護方針(無罪を主張する場合)

初動が肝心

痴漢の容疑をかけられた場合、現場での本人の言動が後々まで大きな意味をもつことになります。

 

痴漢をしていないのであれば、現場から逃げたり、謝罪したり、その場で示談の申入れをすることは控えるべきです。

 

そのようなことをすれば、後の刑事裁判で無罪を主張しても、検察官から「痴漢をしていないんだったらなぜ逃げたんですか?」と追及され、裁判官にも「被告人の言っていることは信用できない」と思われてしまいます。

 

痴漢をしていないのであれば、その場で毅然と「やっていない」と明言すべきです。スマートフォン等を使用してご自身や関係者の発言を録音しておくのがベストです。

 

 

痴漢で逮捕されたら

近年、「客観的な証拠がなく冤罪を生みやすい」という痴漢の特質がクローズアップされています。

 

以前は、痴漢を否認した場合、長期の身体拘束を覚悟しなければなりませんでした。しかし、近年は、裁判官も痴漢冤罪に目を向けるようになっており、逮捕されても勾留されない運用が定着しつつあります。

 

否認しているからとって釈放をあきらめる必要はありません。一日も早い釈放を目指すべきです。

早期釈放を実現する

 

 

捜査機関に自白調書をとらせない

痴漢事件においては、多くの場合、被疑者と被害者(と称する人物)の発言以外に目ぼしい証拠はありません。そのため、「被疑者の言っていることが信用できるか否か」が大きなポイントになります。

 

例えば、被疑者が本当は痴漢をしていないにもかかわらず、取調べの際、捜査機関の圧力に屈してしまい、「痴漢しました」と自白してしまったとします。

 

その場合、後の刑事裁判において、「自分はやっていません」と言ったとしても、検察官から「取調べのときは自白してましたよね?」と突っ込まれ、裁判官にも信用性を疑われることになります。

 

痴漢事件の場合、供述以外に目ぼしい証拠がないことから、捜査機関は否認を続ける被疑者に対して、あの手この手を使って自白するよう働きかけます。

 

不起訴処分や無罪判決を目指すのであれば、このような働きかけに屈しないことが重要になります。ご本人が捜査機関のプレッシャーに屈しないよう、弁護士が継続的にバックアップしていきます。

 

 

被害者供述の信用性を争う

痴漢の刑事裁判においては、「被害者(と称する人物)の言っていることが信用できるか否か」も大きなポイントとなります。

 

人間の記憶は時の経過とともに衰えていくものですが、取調べが進むにしたがって、被害者の供述がより詳しくなっていくことがあります。

 また、異なる時点で作られた別々の供述調書の間で、供述内容が不自然に変化していることもあります。

 

これらは取調官による誘導や働きかけ、被害者の迎合的態度を強く示しています。弁護士が被害者の供述調書を検討したり反対尋問を行うことによって、これらの不合理な変遷を明らかにします。

 

 

痴漢の再現実験をする

被害者の供述が信用できると認められるためには、動かしがたい事実と矛盾していないことが必要です。

 

痴漢の被害者は、供述調書で、電車内での自分と被疑者との位置関係やどのように触られたか等を述べています。

 

もし、被疑者と被害者の身長・体格・腕の長さなどの動かしがたい事実を前提として、「被害者が述べている位置関係で」、「被害者が述べている方法で」痴漢をすることが物理的に不可能であったり、明らかに不自然であったりする場合、被害者の供述は信用できないということになります。

 

このような観点から、被害者が言っていることの信用性を検討するために、弁護士が、動かしがたい事実を前提として、被害者が述べている状況を物理的に再現できるか否かを検証します。

 

 

【関連ページ】

否認事件の刑事弁護

取調べで黙秘したらどうなるか

 

 

オーダーメイドの痴漢弁護

このページでご紹介している痴漢の弁護方針は一つの例にすぎません。

 

同じ痴漢であっても、事件が異なれば、求められる弁護活動も違ってきます。ウェルネスの弁護士は、数多くのノウハウに基づき、一つ一つの事件に対応した完全オーダーメイドの弁護活動を行います。

 

 

【痴漢事件のページ】

痴漢で逮捕された時に弁護士ができることや選び方、費用について

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痴漢(本ページ)

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