歯科医院での横領について弁護士が解説

このページは弁護士 楠 洋一郎が作成しています。

 

 

 

 

歯科医院での横領の手口

歯科医院での横領は、患者から医療費として支払われたお金の管理を任されている職員が銀行に入金する前に着服する手口によって行われることが多いです。

 

 

点数計算等がある保険診療よりもバレにくい自由診療で行われるのが通常です。

 

 

発覚の流れはこうです。

 

 

まず、患者から支払われている金額と歯科医院の口座に入金されている金額が頻繁に違っていることが病院側に判明します。

 

 

病院側が職員のシフト表を確認すると、特定の職員が出勤しているときだけ、金額の差異が出ていることに気づきます。

 

 

その後、問題の職員を呼び出してヒアリングし自供を得ます。密かに防犯カメラを設置して、横領している決定的な場面を証拠として残しているケースもあります。

 

 

歯科医院での横領は何罪?

歯科医院で金銭管理を任されていた職員が横領すると、業務上横領罪が成立します。

 

 

業務上横領罪の罰則は10年以下の懲役です。罰金刑はないので、初犯であっても起訴されれば公開の法廷で審理され、検察官から懲役刑を請求されることになります。

 

 

歯科医院での横領の特徴

1.若い女性が横領していることが多い

歯科医院での横領は歯科助手と事務を兼務している若い女性職員であることが多いです。

 

 

横領した金銭でホストクラブに通ったり男性へ貢いでいることが多く、発覚した時点で横領金を使い果たしているケースがほとんどです。

 

 

2.歯科医院側にも弁護士がつくことが多い

大手の歯科医院の場合、顧問弁護士が告訴などの刑事手続や損害賠償請求などの民事手続を代理することが多いです。

 

 

顧問弁護士がいない中小規模の歯科医院であっても、責任者である院長はふだんの診療に忙しいため、弁護士を雇うことが多いです。

 

 

3.本人ではなく親に請求がいくことが多い

歯科医院での横領は、若い女性職員によってなされることが多く、ほとんどのケースで横領金は散財され残っていません。

 

 

そのため、歯科医院は、加害者本人ではなく、親に対して返金を求めてくることが多いです。

 

 

4.仮差押えされる可能性は低い

横領の被害者側に弁護士が入ると、加害者の不動産や預金の仮差押えをしてくることが多いです。

 

 

もっとも、上で述べた通り、歯科医院での横領は若い女性職員によってされることが多く、資産がないことは病院側もわかっているため、仮差押えをしてくるケースは少ないです。

業務上横領と仮差押え

 

 

歯科医院での横領-親に法的責任はあるか?

歯科医院での横領事件では、横領した本人は若い女性で資産がないことが多いため、病院側の弁護士は、本人の親にコンタクトをとって損害賠償を請求してくることが多いです。

 

 

もっとも、たとえ親であっても、歯科医院と身元保証契約を締結していない限り、法的な責任は負いません。

 

 

身元保証契約を締結している場合でも、有効期間は最長5年に制限されています(期間を定めていない場合は3年)。

業務上横領と身元保証人-どこまで責任を負うのか?

 

 

歯科医院で横領した場合の対処法

1.文書に署名・押印しない

「このままだと娘さんが逮捕・起訴され刑務所に入ることになる」

「実名報道され再就職や結婚もできなくなる」

 

 

病院側の弁護士からこのように言われた親は、大きなショックを受けることでしょう。

 

 

そのような状況で、病院側の弁護士から書面を見せられて、署名・押印を迫られることがあります。書面には横領したとされる金額や親が連帯保証する旨の文言が記載されています。

 

 

もっとも、歯科医院での横領事件については、病院側によって十分な調査が尽くされておらず、実際の横領金額よりも多額の請求をされることが少なくありません。慰謝料や弁護士費用として数百万円上乗せされていることもあります。

 

 

そうはいっても、その場で署名・押印してしまうと、動揺していたという理由で書面の有効性を否定することは難しいです。

 

 

そのため、その場で文書に署名・押印はせずに、いったん持ち帰って弁護士に相談してください。この点については、親だけではなく本人も同様です。

 

 

2.弁護士に依頼する

親が法的責任を負わないとしても、娘が勤め先に多大な被害を与えたという負い目があるため、疑問を感じても歯科医院側の弁護士に対して反論するのは難しいです。

 

 

そのため、こちらも弁護士をつけて交渉した方がよいでしょう。弁護士が受任すればその後の交渉は全て弁護士が行うため、歯科医院側の弁護士から娘や親に直接連絡が入ることもなくなります。

 

 

弁護士が適正な金額で示談がまとまるよう歯科医院側の弁護士と交渉します。

 

 

3.示談をまとめるためには親も協力すべき

身元保証していない限り、親が子の横領について法的責任を負うことはありません。

 

 

もっとも、歯科医院での横領事件では、加害者が独力で弁済するだけの資産を持っていないことが多いため、示談を成立させるためには親としても弁済に協力すべきでしょう。

 

 

具体的には、以下の方法が考えられます。

 

①親が一括で歯科医院に返済し娘から分割で返してもらう

②娘の連帯保証人なる

 

 

 

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