業務上横領と自首
このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。
業務上横領で自首すべきでないケース
業務上横領のケースでは、刑事事件にまで発展しないことが少なくありません。特に、中小企業の場合は、オーナーの意向により、刑事事件化することよりも、被害の回収を優先するケースが多いです。
示談によって事件化を回避できる余地がある場合は、自首すべきではありません。まずは示談交渉に注力すべきです。
自首すれば警察としても事件として受理し、検察庁に送致する必要があります。裏づけ捜査のため、警察から会社や関係者にも連絡が入ることになります。会社としては刑事事件にすることまで考えていなかったとしても、警察から連絡があれば、被害届を出したり告訴することも考えられます。
そのため、示談することにより、事件化を防ぐことができるのであれば、自首するべきではありません。
業務上横領で自首した方がよいケース
大企業での業務上横領で、被害が数千万円に上り、一部しか弁済できないようなケースでは、警察に被害申告される可能性が高いです。
このようなケースでは、刑事事件化を防ぐことは難しいため、あらかじめ自首しておいた方がよいです。自首のメリットとしては、将来起訴されて刑事裁判になったときに減刑される余地が出てくるということです(自首減刑)。
【刑法第42条1項】
罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。
公務員による業務上横領のケースでは、数十万円程度の被害でも警察に被害申告されることがありますので、自首を検討した方がよいでしょう。
業務上横領で自首する際の3つのポイント
①なるべく早く出頭する
捜査機関が事件を把握し被疑者を特定すれば、その後に出頭しても自首にはなりません。会社が本人にヒアリングして、会計資料と金銭の動きを突き合わせ、横領の状況を把握すれば、いつでも警察に被害を申告できる状態になります。そうなる前に警察に出頭することが必要です。
②弁護士と一緒に出頭する
業務上横領は万引き等の単純な事件と異なり、捜査事項が多岐にわたり、担当者の負担も膨大なものになります。ご本人のみで出頭した場合、「とりあえずまた呼びますので今日は帰ってもらえますか。」等とうやむやにされてしまう可能性があります。
確実な自首を可能とするため、弁護士が事前に横領の手口や使途、金銭の流れ等をまとめた上申書を作成した上で、ご本人と一緒に出頭し、捜査員に提出します。
③罪名を間違えない
経済犯罪の要件は複雑です。ご本人が業務上横領と思っているケースでも、実際は詐欺や窃盗、背任に該当するケースが少なくありません。
上申書を作成する際に罪名を間違えたからといって、自首に該当しないということはありませんが、後々問題になることも考えられます。弁護士でも正しく理解していない方もいますので、経済犯罪に詳しい弁護士に相談してください。
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