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刑事事件の身元引受人
刑事事件に関連して「身元引受人」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。このページでは、身元引受人の条件やデメリット、身元引受人がいない場合等について弁護士 楠 洋一郎が解説しています。
家族や上司を身元引受人にしなくて済む方法も解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
身元引受人とは
刑事事件における身元引受人は、「本人が間違った行動に走らないよう監督する人」という意味で使われています。
「間違った行動」の例として真っ先に挙げられるのが逃亡と証拠隠滅です。その他の例として、警察署への不出頭、さらなる犯罪行為、被害者へのお礼参り、自殺などが考えられます。
被疑者や被告人がこういったことをしないよう監督する人が身元引受人というわけです。
刑事事件で身元引受人が必要になるとき
被疑者や被告人の身柄が拘束されていれば、留置施設で24時間体制で監視されるため、身元引受人の出番はありません。
身元引受人は被疑者や被告人の身柄が解放されるときにはじめて必要になります。被疑者や被告人であっても身柄を解放された後は自由に行動することができるので、間違った行動に走らないように身元引受人に監督してもらう必要があるのです。
それでは身元引受人が必要となるケースを個別にみていきましょう。
1.取調べを受けたが逮捕されないケース
刑事事件で身元引受人が必要になる場面としてまず考えられるのは、初めて警察署で取調べを受けた後です。取調べの結果、警察が「逮捕するまでの必要はない。」と判断した場合は、身元引受人に連絡をして署まで本人を迎えにきてもらいます。
2.逮捕後に警察の判断で釈放するケース
被疑者を逮捕したけれども検察官に送致せずすぐに釈放する場合、身元引受人に連絡して署まで迎えにきてもらいます。痴漢や交通事故、交通違反で被疑者が現行犯逮捕されたケースでは、このパターンが多いです。
3.逮捕後に検察官が勾留請求しないケース
警察が被疑者を逮捕すると、すぐに釈放しない限り、48時間以内に検察官に送致する手続しなければいけません。送致を受けた検察官が逃亡のおそれや証拠隠滅のおそれがあると判断すれば、裁判官に勾留を請求します。どちらのおそれもないと判断すれば勾留を請求しません。
勾留を請求しない場合は、被疑者はその日に釈放されますが、検察官の判断で身元引受人に迎えに来てもらうことがあります。
4.裁判官が勾留請求を却下するケース
裁判官が検察官の勾留請求を許可すれば被疑者は勾留されます。却下すれば被害者は勾留されずにその日のうちに釈放されます。
裁判官が検察官の勾留請求を許可するか却下するかを判断するにあたって、身元引受人についても考慮します。すなわち、きちんとした身元引受人がいれば、勾留請求が却下され釈放される可能性が高まります。
5.保釈請求をするケース
起訴されたら保釈を請求することができます。法律で保釈の条件として身元引受人が必要とされているわけではありませんが、事実上、身元引受人を立てないと保釈が許可される可能性が低くなります。
6.執行猶予を求めるケース
勾留中の被告人について執行猶予を求める場合、身元引受人に裁判所に来てもらい、情状証人として、被告人を監督する意思があることや具体的な監督の方法を話してもらいます。
刑事事件の身元引受人の条件は?
刑事事件の身元引受人になれる条件については、法律で決められているわけではありません。ただ、誰でもなれるわけではなく、本人を監督するのにふさわしい人が身元引受人になります。具体的にみていきましょう。
1.同居の家族
最もよくある身元引受人は同居の家族です。同居していれば本人を間近で監督することができますし、日常的にコミュニケーションをとる機会があるため、監督者としてふさわしいと判断されます。
2.同居していない家族・親族
同居の家族がいない場合や、刑事事件になっていることを同居の家族に知られたくない場合は、実家の親や近くに住んでいる兄弟に身元引受人になってもらうことが多いです。
同居の家族に比べると監督の実効性という点では劣りますが、家族である以上、一定のサポートを期待できるため、問題なく身元引受人になれるでしょう。
3.職場の上司
一人暮らしで実家が遠方にある場合や身寄りがない場合は、職場の上司に身元引受人になってもらうことがあります。
職場の上司であれば、日常的に本人とコミュニケーションをとっているでしょうし、上下関係があり生活指導になじむことから問題なく身元引受人になれるでしょう。
4.彼女
家族にも職場の上司にも知られたくないという場合は、彼女に身元引受人になってもらうこともあります。ただ、一口に彼女といっても関係は様々です。
婚約している彼女や同棲している彼女であれば問題なく身元引受人になれるでしょう。交際期間が短い場合や元彼女の場合は、身元引受人として認めてくれないこともあります。
5.友人
他に適切な身元引受人がいない場合は、友人が身元引受人になれることもあります。SNSや電話等で本人と日常的に連絡をとりあっていることが前提となるでしょう。
単なる知り合いや何年も連絡をとっていない友人が、身元引受人として認められる可能性は低いです。
刑事事件で身元引受人がいない場合はどうなる?
身元引受人は被疑者や被告人を解放するにあたって、その身柄を託す人です。警察官や検察官、裁判官は、安心して身柄を託せる人物がいるからこそ、釈放という決定をすることができるのです。
身元引受人がいなければ、捜査機関や裁判所は釈放することに慎重にならざるをえません。身元引受人がいれば問題なく家に帰れるケースであっても、身元引受人がいない場合は逮捕されてしまうこともあります。
既に逮捕されている場合、身元引受人がいれば、1日、2日で釈放されるようなケースでも、身元引受人がいない場合は、勾留されてしまうことがあります。保釈請求をしたときに身元引受人がいなければ、裁判官は保釈を許可することに抵抗を覚えるでしょう。
このように身元引受人がいなければ、釈放の時期が遅れていくことになります。
刑事事件の身元引受人は何をするの?
刑事事件の身元引受人は被疑者や被告人を監督することを求められます。といっても、本人が外出するたびに付き添ったり、家の中でずっと監視していないといけないわけではありません。現実問題としてそのようなことは不可能です。
身元引受人になったからといって、警察や裁判所から何かをするように求められるわけではありません。定期的に「きちんと監督していますか?」と電話がかかってくるわけでもありません。
そのため「何もしない」という対応も可能です。ただ、身元を引き受けた以上は、全く無関心というのはいただけません。本人の生活状況や警察へ出頭する日時について関心をもつ姿勢は必要でしょう。
また、身元引受人の監督状況が、本人の処分に影響することがあります。とりわけ薬物事件や性犯罪など依存性が強い犯罪については、本人が更生するためには身元引受人の監督が不可欠です。
そのため、身元引受人が熱心に監督していることを検察官や裁判官に理解してもらえれば、不起訴や執行猶予の可能性が高まるでしょう。
刑事事件の身元引受人にデメリットはある?
刑事事件の身元引受人になることにデメリットはあるのでしょうか?
結論から言うと法的なデメリットはありません。たとえ本人が逃げたり、証拠を隠滅しても、身元引受人が積極的に協力していない限り、ペナルティを受けることはありません。
ただ、これには例外があります。保釈中の身元引受人が保釈金を負担している場合です。この場合、もし本人が逃亡したり証拠を隠滅すると、保釈が取り消され保釈金が没収されてしまいます。
そのようなケースを除いて法的なデメリットはありません。
弁護士が刑事事件の身元引受人になれる?
次の2つのケースでは、弁護士であっても身元引受人になれることが多いです。
①弁護士が本人の自首に同行して警察署で身元引受人になる場合
②警察から任意の出頭を要請されたとき
①の場合は、弁護士が身柄請書を持参して本人と一緒に警察に行きます。②の場合は、取調べの前日までに、弁護士が身柄請書を警察の担当者にお送りしておきます。
弁護士が身元引受人になれば家族や上司に連絡がいくこともないでしょう。
なお、本人が逮捕されているときは、身元引受人の条件として、「釈放後に効果的に監督を行えるか」ということがよりシビアに問われるため、弁護士が身元引受人になることはできないとお考えください。
弁護士が刑事事件の身元引受人になります!
警察署で取調べを受けることになれば、警察が家族や上司に連絡し、身元引受人として迎えに来てもらうことが多いです。これから取調べを受ける方は、次のようなことを考えて不安な気持ちになっているのではないでしょうか?
☑ 妻に知られると離婚される
☑ 両親に心配をかけたくない
☑ 上司に知られると会社をクビになる
このような方はぜひウェルネス(03-5577-3613)へご相談ください。ウェルネスの弁護士がご家族や上司に代わってあなたの身元引受人になります。
身元引受人サービスの弁護士費用…5万5000円(税込)
*本サービスの対象は警察から任意の出頭を求められた方です。
*逮捕・勾留されている方の身元引受人は対象外となります。
*示談などその他の弁護活動は含まれていません。
なお、ご家族と同居されている方は、弁護士が身元引受人になるだけでは十分ではありません。
詳細は以下のページをご覧ください。
⇒刑事事件が家族に知られるタイミングと知られないようにする方法
【刑事事件】身元引受人のQ&A
Q1:逮捕されない場合は警察から必ず身元引受人を立てるよう求められますか?
ほとんどのケースで身元引受人を立てるよう求められますが、次の3つのケースでは求められないこともあります。
① 軽微な事件で、本人が自白しており、逃亡・証拠隠滅の可能性が低いと考えられるケース
例)軽犯罪法違反で本人が自首した場合
② 否認事件で、必ずしも嫌疑が濃厚とはいえないケース
例)痴漢事件で被害者が酒に酔っており供述の信用性に問題がある場合
③ 警察が近々逮捕を予定しているケース
例)尿検査で覚せい剤の陽性反応がでた場合
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