勾留請求とは?流れや阻止する方法について弁護士が解説

勾留請求

 

 

このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。

 

 

勾留請求とは?

勾留請求とは、検察官が裁判官に対して「被疑者を勾留してください。」と求めることです。

 

 

「勾留」とは逮捕の後に続く身柄拘束です。逮捕の期間は最長3日ですが、勾留の期間は原則10日で最長20日まで延長可能です。

 

 

勾留の要件は以下の通りです。

 

【勾留の要件】

(1)勾留の理由があること

①罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があること

②以下のいずれかに該当すること

A 住居不定

B 証拠隠滅のおそれがある

C 逃亡のおそれがある

(2)勾留の必要性があること

 

 

勾留請求の流れは?

警察は被疑者を逮捕すると、すぐに釈放しない限り、48時間以内に検察官に送致する手続をとらなければなりません。

 

 

送致を受けた検察官は、被疑者を取り調べたり捜査資料を検討して、勾留の要件にあてはまるか否かを判断します。検察官が「勾留の要件に該当する」と判断すると勾留請求します。

 

 

勾留請求のタイムリミットは検察官が被疑者を受け取った時から24時間です。通常は検察庁で被疑者を取り調べた当日に勾留請求します。

 

【一般的な勾留請求の流れ】

午前10時30分

被疑者が検察庁に連行される

午前11時~午前11時30分

検察官の取調べを受ける

午後1時

検察官が勾留請求書を副部長に提出する→副部長が決裁

午後0時

検察庁の職員が勾留請求書を裁判所の令状部に提出

 

 

勾留請求されたらどうなる?

勾留請求されたら、裁判官が勾留請求に理由があるかどうかを審査するために、被疑者の話を聞くことになります。この手続を勾留質問といいます。

 

 

裁判官も「勾留の要件に該当する」と判断すると、検察官の勾留請求を許可して勾留状を発付します。その結果、被疑者は勾留されます。

 

 

これに対して、裁判官が「勾留の要件に該当しない」と判断すると、検察官の勾留請求を却下します。その結果、被疑者は釈放されます。

【逮捕】勾留されなかったときの釈放の流れ-何時にどこに迎えに行く?

 

 

勾留請求されなかったらどうなる?

勾留請求されなければ、その日のうちに釈放されます。検察庁から警察署に戻されて釈放されますが、地域によっては検察庁で釈放されることもあります。

 

 

検察庁で釈放された場合、留置されていた警察署まで電車などで移動して私物を引き取りに行くことになります。警察署で釈放されるか検察庁で釈放されるかは各検察官の裁量によって決まるわけではなく、地域によって一律に決まっています。

 

 

例えば、東京都内では警察署で釈放されますが、神奈川県では検察庁で釈放されます。

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勾留請求書とは?

検察官は、勾留を請求するときは、「勾留請求書」という書面を作成します。勾留請求書は、全国どこの検察庁でも同じ書式が使われています。

勾留請求書の書式

 

 

検察庁で使われている「検察情報総合システム」というデータベースに被疑者の情報等を入力すると自動的に勾留請求書が作成されます。

 

 

勾留請求書の2枚目に「刑事訴訟法第60条第1項各号に定める事由」という欄があり、ここに担当検察官が、被疑者の勾留が相当であると考える理由を鉛筆(またはシャープペンシル)で箇条書きします。

 

 

明文化されたルールがあるわけではありませんが、慣例として、どの検察官も鉛筆(シャープペンシル)で記載します。

 

【鉛筆書きの例】

犯行の一部否認

重要な情状事実の否認

被害品の一部が未発見であり隠滅のおそれ

Vと被害状況についての供述が食い違っており、Vや関係者に対し威迫する等罪証隠滅のおそれあり

同居家族の監督能力なし

同種余罪あり

同種前科・前歴あり

執行猶予中

*V…業界用語で「被害者」の意味です。

 

勾留請求書を作成した後の流れは?

担当検察官は勾留請求書を作成した後、副部長に提出します。東京地検では午後4時までに副部長の決裁を受ける必要があります(ただし交通部は午後3時まで)。

 

 

他の多くの検察庁では、東京地検ほど多くの被疑者を扱っているわけではないので、締め切りはもっと早い時間になります。

 

 

ほとんどのケースでは、担当検察官の判断通りに副部長の決裁が下りますが、まれに決裁が下りずに、勾留請求されないこともあります。

 

 

副部長は決裁を終えると、勾留請求書の表紙に決裁印を押します。その後、検察庁の職員が他の被疑者の勾留請求書とまとめて裁判所の令状部に提出します。これによって勾留請求の手続が完了します。

 

 

勾留請求を阻止するための弁護活動

検察官が勾留請求をしなければ被疑者は釈放されます。弁護士は勾留請求を阻止するために、勾留の要件を満たしていないことを意見書に記載した上で、検察官に提出します。

 

 

意見書には逃亡や証拠隠滅のおそれがないことや勾留の必要性がないことを記載します。痴漢事件を例にとって、意見書でおさえるポイントを説明します。

 

【意見書に書くべきこと】

 

 

意見書で書くべきポイント

勾留の理由がない

逃亡のおそれがない

初犯であれば実刑判決を受ける可能性は低い

⇒逃亡する合理的な理由がない

証拠隠滅のおそれがない

痴漢の被害者は見知らぬ第三者⇒意図的に接触することができない

⇒証拠隠滅をすることができない

勾留の必要性がない

勾留されると解雇される可能性が高い

 

 

勾留請求を阻止することができれば、早期に釈放されますので、職場にも怪しまれずにスムーズに復帰できることが多いです。

 

 

勾留請求を阻止するためには一刻も早く弁護士へ依頼しよう!

逮捕されてから検察官の勾留請求まで短い場合は1日、長い場合でも2日しかありません。そのため、勾留阻止を目指すのであれば逮捕当日に弁護士に依頼する必要があります。国選弁護人は勾留されてからのスタートになりますので、検討対象から外れます。

 

 

逮捕当日に依頼できるのは私選弁護人と当番弁護士だけです。当番弁護士は依頼者が弁護士を選ぶことができないため、刑事事件の経験不足の弁護士がつくこともあります。

 

 

勾留阻止を目指すのであれば刑事弁護に精通した私選弁護人に依頼するのがベストです。

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