勾留状とは?記載内容や勾留状を取得する3つのメリットを解説

このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。

 

 

 

 

勾留状は起訴に発付されるものと、起訴に伴い発付されるものがありますが、このページでは起訴前のものに限定して解説しています。

 

 

勾留状とは

1.勾留状=裁判官の発する令状

勾留状とは、裁判官が発付する被疑者を勾留する旨の令状です。勾留状がないと被疑者を勾留することができません。

 

 

2.そもそも勾留とは?

勾留とは逮捕に続いて行われる身柄拘束です。逮捕は最長3日しかできませんが、起訴前の勾留は最長20日にわたって可能です。勾留の要件は次の通りです。

 

 

(1)罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があること

 

(2)以下の少なくとも一つに該当すること

 ①住居不定

 ②証拠隠滅のおそれがある

 ③逃亡のおそれがある

 

 

3.勾留状が発付されるまでの流れ

捜査機関の勝手な判断による勾留を防ぐため、勾留するか否かの判断は裁判官に委ねられています。

 

 

そのため、被疑者を勾留するためには、検察官が裁判官に対して勾留請求を行い、裁判官によって許可される必要があります。

 

 

裁判官は、検察から渡された捜査書類を検討した上で、被疑者に対して勾留質問を実施し、勾留の要件を満たしているか否かを検討します。

 

 

要件を満たしていると判断すれば、検察官の勾留請求を許可して勾留状を発付します。逆に要件を満たさないと判断すれば、勾留請求を却下して被疑者を釈放するよう指示します。

 

 

勾留状の記載内容

1.基本的な記載事項

勾留状には以下の情報が記載されています。

 

 

(1)被疑者についての情報

 ①氏名

 ②年齢、生年月日

 ③住居

 ④職業

(2)勾留される犯罪名、留置施設

(3)被疑事実の要旨

(4)勾留の理由(刑事訴訟法60条1項各号に定める理由)

(5)勾留状の有効期間

(6)勾留請求の年月日

(7)勾留状を執行した年月日時、執行場所、執行者の記名・押印

(8)勾留した年月日時、取扱者

 

 

2.勾留が延長された場合の記載事項

裁判官はやむを得ない事由がある場合は、検察官の請求により、最長10日の範囲で勾留を延長することができます。勾留を延長した場合は、勾留状の2枚目に次の事項が追加で書き込まれます。

 

 

(1)延長期間

(2)延長の理由

(3)延長を許可した裁判官の署名・押印

(4)勾留状を検察官に交付した年月日

(5)勾留状を被疑者に示した年月日時、取扱者の記名押印

 

 

(1)延長期間について

延長後の勾留は最長10日ですが、5日や7日等10日より短くなることも多々あります。

 

 

起訴される場合は勾留の満期日かその前日になることが多いので、勾留状を見てあらかじめ満期日を確認しておきます。

 

 

最短で保釈請求を行う場合は起訴当日に行います。満期日がわかれば起訴日を予測できるため、スムーズな保釈請求が可能になります。

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(2)延長の理由について

典型的な延長の理由としては、次の4点が挙げられます。

 

①被疑者取調べ未了

②被疑者共犯者取調べ未了

③関係人取調べ未了

④被疑者供述の裏付捜査未了

 

 

多くの裁判所では、これらの延長理由に対応したゴム印が用意されており、書記官が押していきます。

 

 

勾留状から何がわかる?

1.勾留されている理由がわかる

刑事訴訟法には、勾留の要件として、「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があること」のほかに、次の3つの事情が定められています。

 

 

①住居不定

②罪証隠滅のおそれ

③逃亡のおそれ

 

 

【刑事訴訟法60条1項】

裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することができる。

1 被告人が定まった住居を有しないとき。

2 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。

3 被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。

 

 

勾留状には「刑事訴訟法60条1項各号に定める事由」という欄があり、上の3つのどの要件に該当するのかが記載されています。

 

 

通常は「2,3号にあたる」等と簡潔に記載されているだけで、各要件に該当すると判断した具体的な事情までは記載されません。

 

 

準抗告の申立てや勾留取消請求をする際には、勾留状に記載されている要件にフォーカスして書面を作成することになります。

 

 

2.容疑がわかる

勾留状の「被疑事実の要旨」欄には、「別紙の通り」と記載されています。別紙は勾留状の一番最後に添付されており、被疑者がどのような容疑で勾留されているのかが記載されています。

 

 

罪名だけではなく、いつ、どこで、誰に対して、どのようなことをして、どのような被害が生じたのかが具体的に記載されています。

 

 

被疑者は勾留される前に逮捕されています。現行犯逮捕でない限り、逮捕される際に逮捕状を見せられますが、被疑者も気が動転しており、逮捕状の内容を正確に覚えている人はまずいません。

 

 

逮捕後に本人が警察官に「逮捕状をもう一度見せてください」と言っても見せてくれません。弁護士が逮捕状の開示を求めても、起訴前は見せてくれません。

 

 

勾留状を見ることによって、初めて容疑を正確に把握することができるのです。

 

 

勾留状を取得する3つのメリット

1.取調べに適切に対応できる

取調べに適切に対応するためには、そもそも被疑者がどのような容疑で逮捕・勾留されているのかを正確に把握することが必要です。

 

 

万引きのような単純な事件の場合は、勾留状がなくても容疑を把握することができますが、以下のようなケースでは、勾留状がないと容疑の把握が困難です。

 

 

☑ 被疑者が酒に酔って覚えていない場合

☑ 特殊詐欺のように大きな犯罪の一部のみ担当している場合

☑ そもそも身に覚えのない容疑で逮捕・勾留された場合

 

 

勾留状により容疑を正確に把握し、被疑者の認識とどの部分がずれているのかを確認することにより、捜査機関の対応を予測し、取調べに適切に対応できるようになります。

 

 

2.示談交渉の参考にできる

痴漢・強制わいせつといった性犯罪や、暴行・傷害といった粗暴犯では、被疑者と被害者の言い分が異なっていることが少なくありません。

 

 

勾留状には警察が考えている事件の概要が記載されています。警察のストーリーは被害者の言い分に沿って組み立てられていることが多いです。

 

 

勾留状を通じて被害者の言い分を把握することによって、示談交渉で被害者から指摘されることを予測することができ、あらかじめ対応策を考えておくことができます。

 

 

3.再逮捕・追起訴の有無を予測できる

業務上横領や背任など、長期間にわたって反復・継続して行われる犯罪については、勾留状を見ることによって、再逮捕追起訴の有無を予測することができます。

 

 

勾留状に記載されている被疑事実が、被疑者がした違法行為の全てを網羅している場合は、追加で逮捕・起訴する必要がないため、再逮捕や追起訴はないと考えられます。

 

 

逆に、勾留状に被疑者がした違法行為の一部しか記載されていない場合は、残りの違法行為について、再逮捕・追起訴の可能性が高いと予測することができます。

 

 

勾留状を取得する方法

1.国選弁護人の場合

国選弁護人は被疑者が勾留されてからしか選任されません。そのため、法テラスから国選事件の配点を受けた時点で既に勾留状は出ています。

 

 

東京都内では、弁護士が法テラスから電話で国選の打診を受け、受諾すればすぐに勾留状をFAXで送ってくれます

 

 

2.私選弁護人の場合

私選弁護人は、国選弁護人とは異なり、勾留前から選任することができます。

 

 

もし被疑者が勾留された場合は、国選のように法テラスは関与しないため、弁護士が裁判所に勾留状の謄本また写しの交付を請求して勾留状を取得します。

 

 

 

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