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勾留質問とは?裁判官が釈放するか勾留するかを決める手続
このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しております。
勾留質問とは?
勾留質問とは裁判官が被疑者と面接して勾留するかどうかを決める手続です。
まず検察官が裁判官に対して被疑者の勾留を請求します。勾留質問は、検察官の勾留請求を受けて、請求に理由があるか否かを判断するために、実施されます。
ほとんどの検察庁では、勾留質問は勾留請求と同じ日に実施されますが、東京地検では、被疑者の人数が多いため1日ではさばききれず、勾留請求の翌日に実施されます。
勾留質問の流れ
勾留質問の流れは次の通りです。
①検察官が被疑者の勾留請求を決めた後、事件の記録一式に勾留請求書をつけて、裁判所に提出します。
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②裁判官が、検察官から提出された記録をひと通り確認します。
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③裁判官が書記官と一緒に勾留質問室に入り、被疑者と面接します。検察官の取調べと異なり、護送の警察官は部屋の外で待機します。部屋の中にいるのは裁判官、書記官、被疑者の3人だけです。
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④裁判官が被疑者に対して、氏名・年齢・住居・職業を確認した後、「ずっと黙っていることもできますし、一つ一つの質問に対して黙っていることもできます。」と言って黙秘権の告知をします。
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⑤裁判官が、勾留請求書に書かれている被疑事実を被疑者に読み聞かせ、「これに対して何か言いたいことはありますか?」と尋ねます。被疑者が何か発言した場合は、その内容を勾留質問調書に記載します。
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⑥裁判官が被疑者に対して弁護人選任権について説明します。
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⑦被疑者を退室させた後、裁判官が勾留請求を許可するかどうかを決めます。許可する場合は、勾留状を発付し、記録を検察官に戻します。勾留請求を却下する場合は、勾留請求書に「勾留請求却下」のゴム印を押して記録を検察官に戻します
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⑧勾留請求を許可した場合は、被疑者は、原則10日、最長20日間留置されます。この間に検察官は被疑者を起訴するか釈放するか決めなければいけません。
勾留請求を却下した場合、検察官は警察に被疑者を釈放するよう指示します。
弁護士であれ、検察官であれ、裁判官の判断に不服がある場合は、裁判所に準抗告を申し立てることができます。
勾留質問の実情
裁判官は、中立の立場から検察官の勾留請求に理由があるかどうかを判断します。といっても、被疑者の話を時間をかけて親身に聞いてくれるわけではありません。
勾留質問ははっきり言ってやっつけ作業になっています。東京地裁のような大きな裁判所では、裁判官は一人あたり20人程度の被疑者を担当しています。
裁判官はいったん勾留質問室に入ると、ほぼぶっ続けで被疑者の勾留質問をこなしていきます。一人当たり5分から10分くらいで、流れ作業のように次から次へと進めていきます。
帰りの護送バスが出発する時間帯も決まっていますので、「とにかく早く終わらせよう。」と考えている裁判官が多いです。
そのため、建前上は、被疑者は言い分を述べることができるとされていますが、実際は、時間をかけて話をできるような雰囲気ではありません。話をしようとしても、「検察官に言ったことと同じですね。」等と裁判官に短くまとめられてしまうことが多いです。
実際は、「あっという間に終わってしまい何も言えなかった。」と感じる被疑者がほとんどです。
勾留を阻止するためにできること
裁判官は勾留質問で、親身になって被疑者の話に耳を傾けてくれるわけではありません。
そのため、勾留を阻止するためには、勾留質問の前日までに、弁護士が被疑者と接見して意見書を作成し、勾留質問が始まる前に裁判官に提出しておくことが大切です。
勾留質問が始まる前であれば、ほとんどの裁判官は弁護士と面接してくれます。勾留質問が始まる前に、弁護士が裁判所で被疑者と接見することもできます。
勾留質問の前に意見書を提出した上で、弁護士が裁判官に面接して、特に強調したい点を伝えます。その直後に被疑者と接見し、裁判官から聞いた情報を、被疑者にフィードバックして勾留質問に備えてもらいます。
【勾留阻止の弁護活動】(イメージ)
7月1日午後6時 |
弁護士が被疑者と接見 |
7月2日午前11時 |
弁護士が意見書を裁判所に提出 |
7月2日午前11時10分 |
弁護士が裁判官と面接 |
7月2日午前11時20分 |
弁護士が被疑者と接見 |
7月2日午後3時 |
勾留請求却下 |
7月2日午後6時30分 |
警察署で釈放 |
勾留質問のQ&A
Q:被疑者は勾留質問で裁判官と面接した際、裁判官から自分が釈放されるかどうか教えてもらえますか?
A:裁判官は、勾留質問を始める前に記録を読んで勾留請求を却下するかどうかを決めていることが多いです。
もし勾留請求を却下するつもりであれば、勾留質問で被疑者に、「本日釈放しますが、警察や検察から呼ばれた場合はきちんと出頭してくださいね。」と言うことが多いです。出頭する旨の誓約書にその場で署名・指印させる裁判官もいます。
そのようなことを言われず淡々と進められた場合は勾留される可能性が高いです。
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