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準抗告とは?抗告との違いや種類・流れについて解説

準抗告

 

 

このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。

 

 

準抗告とは?

準抗告とは、裁判官の処分に不服があるときに、弁護士や検察官が裁判所に対して、その処分の取消や変更を求めることです。

 

 

簡易裁判所の裁判官の処分に不服があるときは地方裁判所に、地方裁判所の裁判官の処分に不服があるときは同じ裁判所に処分の取消や変更を求めることができます。

 

 

準抗告の対象は「1人の裁判官によって行われた処分」です。この処分に対して準抗告を申し立てると、3人の裁判官が合議で判断します。

 

 

これら3人の裁判官の中には、もともとの処分をした裁判官は含まれません。処分に関わっていない3名の裁判官が審理することによって、公正な判断が期待できます。

 

 

弁護士だけでなく検察官も準抗告をすることができます。弁護士は、裁判官の処分だけではなく、検察官等のした処分に不服がある場合も準抗告をすることができます。

 

 

準抗告と抗告の違い

準抗告と抗告の違いは、対象となる処分をしたのが裁判官か裁判所かの違いです。「裁判官」の処分に対する不服申立てが準抗告、「裁判所」の処分に対する不服申立てが抗告です。

 

 

「裁判官と裁判所ってほとんど同じでは?」と思われるかもしれません。しかし、刑事手続では両者ははっきりと区別されています。

 

 

刑事手続の大きなルールとして、初公判前の処分は裁判官が行い、初公判後の処分は公判審理を担当する裁判所が行います。初公判前に処分を行った裁判官が、引き続き公判を担当することはありません。

 

 

このように初公判の前後で担当者を分ける理由は、裁判官が先入観をもたずに真っ白な状態で初公判に臨めるようにするためです。

 

 

そのため、準抗告の対象となる処分の多くは、「初公判までに裁判官がした処分」です。「初公判後に裁判所がした処分」に納得できないときは、準抗告ではなく抗告をすることになります。

*細かく言うと、初公判後も裁判官が行える処分はありますが、準抗告で問題になることはほとんどないため省略します。

 

 

準抗告できる裁判官の処分

準抗告の根拠は刑事訴訟法429条1項です。

 

 

【刑事訴訟法429条1項】

裁判官が左の裁判をした場合において、不服がある者は、簡易裁判所の裁判官がした裁判に対しては管轄地方裁判所に、その他の裁判官がした裁判に対してはその裁判官所属の裁判所にその裁判の取消又は変更を請求することができる。

 

1 忌避の申立を却下する裁判

2 勾留、保釈、押収又は押収物の還付に関する裁判

3 鑑定のため留置を命ずる裁判

4 証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人に対して過料又は費用の賠償を命ずる裁判

5 身体の検査を受ける者に対して過料又は費用の賠償を命ずる裁判

 

 

条文には準抗告の対象として5つのグループが列挙されています。それぞれのグループについて見ていきましょう。

 

 

1.忌避の申立てを却下する裁判

忌避の申立てとは、担当の裁判官について、公平な裁判を期待できない事情があるときに、その裁判官を担当から外すよう求める申立てです。

 

 

「公平な裁判を期待できない」例として、裁判官が事件の被害者であったり、被害者の親族であるケースが挙げられます。

 

 

弁護士が裁判官に対して忌避の申立てをして却下された場合、準抗告を申し立てることができます。

 

 

2.勾留、保釈、押収、押収物の還付に関する裁判

準抗告のなかで一番多いのが勾留と保釈に関する申立てです。準抗告の90%以上はこの類型になります。弁護士だけではなく検察官からの申立ても少なくありません。

 

 

勾留や保釈に関する処分は,初公判後は裁判所が行いますが、初公判前は裁判官が行います。裁判官が行ったこれらの処分に納得ができない場合は、準抗告を申し立てることができます。

 

 

ケース

釈放

準抗告の申立人

検察官の勾留請求を認める裁判

釈放されない

弁護士

検察官の勾留請求を却下する裁判

釈放される

検察官

保釈請求を却下する裁判

釈放されない

弁護士

保釈請求を認める裁判

釈放される

検察官

 

 

保釈に関する準抗告は、保釈請求が許可されたけれども、保釈金額や保釈条件に納得がいかない場合も申し立てることができます。

 

 

勾留請求が却下された場合や保釈が許可された場合に検察官が準抗告を申し立てると、申立てが棄却されるまで、当初の裁判の執行が停止され、被疑者や被告人の釈放手続はストップされます。

 

 

逆に言うと、被疑者や被告人が釈放された後に検察官が準抗告を申し立ててくることはありません。

 

 

押収や押収物の還付に関する裁判について準抗告としては、捜索差押え令状によって対象物が特定されていないとして準抗告が申し立てられたケースで、差押許可の裁判が取り消された例があります(東京地裁昭和33年6月12日)。

 

 

令状に基づいて差押えが実施された後は、差押えの裁判に対して準抗告を申し立てることはできません。この場合、捜査機関の差押え処分に対して準抗告(後述)を申し立てることになります。

 

 

3.鑑定留置を命ずる裁判

責任能力に問題があると、たとえ起訴されても心神喪失で無罪になったり、心神耗弱で刑が軽くなることがあります。心神喪失の疑いが濃厚であれば、検察官が不起訴にすることもあります。

責任能力とは?無罪になる理由や精神鑑定の3つのタイプを解説

 

 

責任能力について判断するために、一定の期間、被疑者や被告人を病院や拘置所に収容し、精神科医の診察を集中的に受けさせることがあります。これが鑑定留置です。

 

 

【刑事訴訟法167条1項】

被告人の心神又は身体に関する鑑定をさせるについて必要があるときは、裁判所は、期間を定め、病院その他の相当な場所に被告人を留置することができる。

 

 

精神鑑定は検察官が起訴・不起訴の判断をするために必要になることから、鑑定留置は、起訴前に実施されることが多いです。その場合、検察官の請求を受けて裁判官が鑑定留置を決定します。

 

 

この決定に対して弁護士が準抗告を申し立てることができます。なお、鑑定留置を求める請求が裁判官によって却下されたときは、検察官も準抗告を申し立てることができます。

 

 

4.証人等に対して過料または費用の賠償を命ずる裁判

証人尋問は公判で行われるのが原則ですが、検察官が請求した場合には、裁判官の許可を得て初公判前に行われることがあります。

 

 

初公判前に証人尋問が行われたケースで、証人が指定された期日に裁判所に出頭しない場合、裁判官は10万円以下の過料や費用の賠償を命じることができます。

 

 

【刑事訴訟法150条1項】

召喚を受けた証人が正当な理由がなく出頭しないときは、決定で、十万円以下の過料に処し、かつ、出頭しないために生じた費用の賠償を命ずることができる。

 

 

この裁判に納得がいかない証人は準抗告を申し立てることができます。

 

 

5.身体検査を受ける者に対して過料または費用の賠償を命ずる裁判

鑑定人や裁判官の身体検査を受けることを拒んだ場合、裁判官によって10万円以下の過料や費用の賠償を命じられることがあります。

 

 

【刑事訴訟法137条1項】

被告人又は被告人以外の者が正当な理由がなく身体の検査を拒んだときは、決定で、十万円以下の過料に処し、かつ、その拒絶により生じた費用の賠償を命ずることができる。

 

 

この裁判に納得がいかない場合、過料や費用賠償の命令を受けた者が準抗告を申し立てることができます。

 

 

準抗告できる捜査官の処分

検察官・検察事務官・司法警察職員(まとめて「捜査官」といいます)がした次の2つの処分についても、裁判所に準抗告を申し立てることができます。

 

 

1.接見の日時・場所・時間の指定に関する処分

捜査官は、捜査のために必要があるときは、起訴前に限り、弁護士が被疑者と接見する日時・場所・時間を指定することができますが、指定した日時が遅すぎたり、時間が短すぎたりするときは、弁護士が準抗告を申し立てることができます。

弁護士の接見

 

 

2.押収または押収物の返還に関する処分

押収された物が容疑と関係ないものであったり、差押えの必要がなかったりする場合は、準抗告の申立てをすることができます。

 

 

通常は、弁護士が検察官に対して押収物の返還を求めたのに返還されない場合に準抗告が申し立てられます。差押処分が取り消されれば、検察官の指揮により、押収された物が返還されることになります。

 

 

【刑事訴訟法430条】

1.検察官又は検察事務官のした第三十九条第三項の処分又は押収若しくは押収物の還付に関する処分に不服がある者は、その検察官又は検察事務官が所属する検察庁の対応する裁判所にその処分の取消又は変更を請求することができる。
2.司法警察職員のした前項の処分に不服がある者は、司法警察職員の職務執行地を管轄する地方裁判所又は簡易裁判所にその処分の取消又は変更を請求することができる。
3.前二項の請求については、行政事件訴訟に関する法令の規定は、これを適用しない。

 

 

準抗告の流れ

準抗告をする際は、弁護士が裁判所に準抗告申立書を提出します。平日の昼過ぎまでに申立書を提出すると、当日中に結果が出ることが多いです。遅くとも翌日には結果が出るでしょう。

 

 

ただし、土日祝日に準抗告の結果が出ることは通常ありません。

 

 

裁判所には準抗告のみを担当している部署はありません。複数の裁判官が当番制で準抗告を担当しています。当番になった裁判官は、通常業務をこなした後に準抗告の検討にとりかかることが多いので、結果は夕方以降に出ることが多いです。

 

 

遅い場合は午後8時以降に結果が出ることもあります。結果が出ると裁判所書記官が弁護士に電話で一報を入れます。

 

 

裁判所からの連絡が夜遅くになる場合に備えて、準抗告申立書に弁護士の携帯電話番号を記載しておきます。

 

 

弁護士の準抗告が認められ勾留や保釈却下の裁判が取り消された場合は、検察官がさらに不服を申し立てない限り、どんなに夜遅くても被疑者・被告人は釈放されます。

 

 

検察官から準抗告された場合は、「夜遅くに釈放されることもありますよ。」と事前に弁護士が本人や家族に伝えておく必要があります。

 

 

準抗告が認められる確率は?

2021年版の弁護士白書によれば、2020年に裁判官の処分に対して申し立てられた準抗告は1万5347件、そのうち認められた件数は2907件で、認容される確率は約20%です。

 

 

5件に1件と確率は低いですが、準抗告を申し立てるデメリットもありませんので、処分に納得できなければ、積極的に準抗告を申し立てるべきです。

 

 

勾留されたら準抗告で釈放を目指す

1.勾留に対する準抗告を申し立てるケース

弁護士にとって最も一般的な準抗告は勾留に関する準抗告です。

 

 

警察は被疑者を逮捕すると48時間以内に検察官に送ります。検察官は被疑者を取り調べ、逃亡や証拠隠滅のおそれがあると判断すると、24時間以内に裁判官に勾留請求します。

 

 

裁判官は勾留質問をした上で被疑者を勾留するか釈放するかを決定します。もし勾留された場合、釈放を求めるために準抗告を申し立てます。

 

 

2.準抗告申立ての内容

勾留に関して準抗告を申し立てる場合、勾留の要件を満たしていないことを弁護士が準抗告申立書に記載し裁判所に提出します。

 

 

具体的な事情は以下のページをご覧ください。

早期釈放につながる10のポイント

 

 

準抗告は処分の取消や変更を求めるものですが、処分が出た後に新たに発生した事情を主張してもよいとされています。例えば、勾留後に示談が成立したことを準抗告申立ての際に主張することが考えられます。

 

 

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