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背任・特別背任に強い弁護士

背任 

 

 

☑ 背任が会社に発覚した

☑ 背任で家宅捜索を受けた

☑ 背任したので会社と示談したい

☑ 特別背任で東京地検特捜部から連絡がきた

 

 

このような方のために、背任・特別背任で知っておくべきことを弁護士 楠 洋一郎がまとめました。ぜひ参考にしてみてください。

 

 

 

背任の刑罰

背任罪の刑罰は5年以下の懲役または50万円以下の罰金です。同種の犯罪である業務上横領罪(10年以下の懲役)に比べて刑罰が軽くなっています。

 

 

背任の構成要件

4つの構成要件

犯罪が成立するための要件を構成要件といいます。背任罪の構成要件は、他人の事務を処理する者が、図利加害目的で、任務に反した行為をして、本人に財産上の損害を与えることです。

 

 

整理すると次の4つの要件に分解することができます。

 

①他人の事務を処理する者

②図利加害目的

③任務違背

④財産上の損害

 

それぞれの構成要件についてみていきましょう。

 

 

①他人の事務を処理する者

「他人の事務を処理する者」の例として、法人の取締役や理事、従業員が挙げられます。

 

 

借りたお金を返すことは「他人の」事務ではなく、「本人の事務」と考えられています。そのため、借金を返済できなかっただけで背任罪になるわけではありません。

 

 

②図利加害目的

「図利目的」とは自己または第三者の利益を図る目的のことです。「加害目的」とは本人に損害を加える目的です。

 

 

「自分の利益にもなるし、会社の利益にもなると思ってやった。」というように、図利目的と本人(会社)の利益を図る目的が併存していても、本人の利益を図る目的がメインと言えなければ、図利加害目的の要件を満たします。

 

 

③任務違背

任務違背とは本人からの委託の趣旨に反する行為をいいます。委託の趣旨に反するかどうかは、行為者と本人との契約内容や当時の状況をふまえてケースごとに判断されます。

 

 

株式投資や先物取引といった冒険的取引を任されていた場合は、損失が出たからといって直ちに任務違背になるわけではありません。もっとも、冒険的取引であっても、委託の趣旨に反して取引を行った場合は、任務違背になります。

 

 

④財産上の損害

財産上の損害については経済的な観点から柔軟に判断されます。

 

 

例えば、不正融資のケースでは、銀行から融資先に貸付金が移転しても、銀行には貸付債権が発生するため、法律的には損害がないように見えます。しかし、融資先が倒産寸前であれば、貸付金を回収できないリスクが高いので損害として扱われます。

 

 

背任の時効

刑事事件の時効

背任罪の時効は背任行為から5年です。

 

 

民事事件の時効

背任は民事事件にもなり得ます。民事事件の時効は、背任行為が発覚したときから3年または背任行為の時から20年です。

 

 

背任の事例

①銀行の支店長が、回収が困難であることを知りつつ、倒産間近の取引先に融資をして、お礼に金品をもらった。

 

 

②会社の調達部門の責任者が、取引先と結託して、あえて割高な金額で物品を購入し、正当な金額との差額を着服した

 

 

背任と業務上横領の違いは?

背任と業務上横領は「本人の信頼を裏切る行為により財産上の損害を与えた」という点で共通しています。両者はどのように区別されるのでしょうか?

 

 

ポイントは「自分が管理している物」をとったかどうかです。仕事で自分が管理している物をとった場合は、業務上横領になります。

 

 

【典型的な業務上横領】

客から集金したお金を自分の物にした

 

 

業務上横領は「自分が管理している物」を対象にしているという点で範囲が明確です。また、業務上横領(10年以下の懲役)の方が背任(5年以下の懲役または50万円以下の罰金)よりも刑罰が重くなっています。

 

 

そのため、両方の犯罪の要件を満たす場合は、業務上横領罪のみが成立します。

 

 

特別背任とは

会社の取締役、監査役、執行役など会社法で定められている一定の者が背任行為をすると、特別背任罪になります(会社法960条)。

 

 

特別背任罪の刑罰は10年以下の懲役または1000万円以下の罰金です。懲役刑と罰金刑の両方が科されること(併科)もあります。

 

 

重要な役職にある者が背任行為をすると、会社に深刻な影響を及ぼすことが多いため、通常の背任罪よりも刑罰が重くなっています。

 

 

特別背任と経営判断の原則

会社経営をしていく上でリスクはつきものです。

 

 

会社の利益を図るために、取締役がリスクをとって経営判断をしたところ、それが裏目に出て損失が膨らんでしまった-このようなケースは少なくありません。

 

 

大きな損失が出てしまうと、会社のためにした行為であっても、後に経営権をめぐる紛争が生じ、特別背任罪として告発されることがあります。

 

 

会社経営は、多くの事情を考慮して行われる高度に専門的な判断です。また、経営の専門家である取締役には広い裁量があります。そのため、当時の状況を前提として著しく不合理でない限り、取締役の経営判断は尊重されるべきです。

 

 

このような考え方を経営判断の原則といいます。会社の利益のためにした行為が裏目に出てしまった場合は、弁護士が経営判断の原則をもとに、「任務違背」に当たらないことを主張します。

 

 

背任の逮捕率

2020年に刑事事件として取り扱われた背任事件のうち逮捕されたケースは15%です。そのうち勾留されたケースは100%、勾留が延長されたケースは82%です。

 

*2020年版検察統計年報をベースにしています(特別背任罪は含まれていません)。

 

 

背任は巧妙なスキームで実行され、複数の人物が絡んでいることが多く、捜査に時間がかかります。そのため、いったん逮捕されると2,3日で釈放される可能性は低いです。

 

 

もっとも、起訴前に被害者と示談が成立すれば処分保留で釈放され、その後に不起訴になる可能性が高くなります。示談が成立していれば、仮に起訴されても保釈が許可される可能性が高いです。

 

【関連ページ】起訴前の流れ(逮捕・勾留あり)

 

背任の不起訴率

2020年に刑事事件として取り扱われた背任事件のうち不起訴になったケースは79%、起訴されたケースは21%です。起訴されたケースのうち93%が公判請求、7%略式請求されています。

 

*2020年版検察統計年報をベースにしています(特別背任罪は含まれていません)。

 

 

起訴される確率はそれほど高くありませんが、起訴されれば、簡易な略式裁判で審理されるケースは少なく、9割以上が公開法廷で審理され、検察官から懲役刑を請求されます。

 

 

背任と示談

背任は会社を舞台にして行われることが多い犯罪です。背任が刑事事件となり広く報道されると、企業イメージが悪化するリスクがあることから、会社にとっても示談で穏便に解決するメリットがあります。

 

 

背任事件は本質的には会社内の問題ですので、社会的に影響力が大きな組織は別として、告訴状や告発状が提出されなければ、捜査機関が独自に捜査に入ることはありません。

 

 

告訴状や告発状が受理される前に示談で解決すれば、事件化を阻止することができます。刑事事件になってしまった場合でも、示談が成立すれば不起訴や執行猶予の可能性が高くなります。

 

 

背任事件では被害金額が大きくなりやすく、一括で示談金を支払えないケースが多いです。そのようなケースでは、分割払いの示談をすることになります。

 

背任・特別背任と特捜部

社会的に影響力のある法人を舞台とする背任・特別背任事件に関しては、東京地検特捜部または大阪地検特捜部が捜査の指揮をすることがあります。日本大学の背任事件についても東京地検特捜部が捜査を手がけています。

【特捜部】特捜検事の仕事や1日の流れを解説

 

 

特捜部が指揮する背任・特別背任事件は、複雑なスキームが組まれ、巨額の金銭が動いているケースが多いです。事案の真相を解明するために、特捜検事によってほぼ毎日長時間の取調べが実施されます。

 

 

ウェルネスの弁護士は特捜事件の弁護経験があります。また、東京地検特捜部で捜査にあたっていた元検察官の顧問もおります。背任・特別背任の容疑で東京地検特捜部から連絡がきた方はお気軽にご相談ください。

 

 

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