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微罪処分とは?流れや対象となる犯罪、デメリットを弁護士が解説
このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。
微罪処分とは?
警察が認知して立件した事件は、検察官に引き継ぐことが原則です。検察官へ事件を引き継ぐことを「送致」といいます。
検察官は、送致を受けた事件について、起訴するのか不起訴にするのかを判断します。
しかし、これには例外があり、一定の条件を満たせば、検察官に送致せずに警察署限りで事件を終わらせることができます。これが微罪処分です。
微罪処分になると、検察官に送致されることはありません。1か月ごとに他の微罪処分とまとめて「月報」という形で各地方検察庁のトップ(検事正)に報告されるだけです。
事件を起訴することができるのは検察官のみです。微罪処分は、警察署限りの処分となるため、起訴されることはなく、前科がつくこともありません。ただし前歴としてカウントされます。
微罪処分の2つのメリット
1.前科がつかない
微罪処分になれば前科はつきません。微罪処分になると警察限りで終了しますが、警察官には事件を起訴する権限がないからです。
そのため、微罪処分になれば確実に不起訴になります。起訴されない以上、刑事裁判を受けることはないため、前科がつくこともありません。
2.早期に終了する
逮捕・勾留されなければ、検挙されてから起訴・不起訴が決まるまでおおむね3カ月~半年程度かかります。その間、警察署で1~3回、検察庁で1、2回取調べを受けることになります。
これに対して、微罪処分であれば、検挙当日に1回取調べを受けるだけで事件が終了することも少なくありません。
微罪処分の2つのデメリット
1.家族や上司に知られる
警察が微罪処分として扱うときには、逮捕しないで在宅事件として捜査を進めます。そのため、警察に代わって本人を監督してもらうため、身元引受人に警察署まで迎えに来てもらいます。
身元引受人には家族になってもらうことが多いです。家族が遠方にお住まいであれば、職場の上司になってもらうこともあります。そのため、身近な人に知られてしまうというデメリットがあります。
「家族や上司に事件について知られたくない」という場合は、弁護士が身元引受人になれることもあります。 |
2.前歴がつく
微罪処分になれば前科がつくことはありませんが、「前歴」として捜査機関のデータベースに登録されます。
前歴がついたからといって実際上の不利益はありませんが、万一、何らかの罪を犯して検挙されると、初犯の方に比べて処分が重くなる可能性が高くなります。
⇒前科とは?前歴との違いや5つのデメリット、結婚・就職に影響は?
微罪処分の根拠
微罪処分の根拠は「刑事訴訟法」という法律です。
【刑事訴訟法246条】 司法警察員は、犯罪の捜査をしたときは、この法律に特別の定のある場合を除いては、速やかに書類を及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない。但し、検察官が指定した事件については、この限りではない。 |
246条の但書きで、「検察官が指定した事件」については送致する必要がないとされています。この規定をふまえて、昭和25年に、検事総長から各地方検察庁のトップ(検事正)に宛てて「送致手続きの特例に関する件」という通達が出されました。
この通達にもとづき、各地検の検事正が、管轄の県警本部長に対して、微罪処分の取り扱い基準を定めた通達を出して、運用基準を定めています。
微罪処分の対象になる犯罪
どのような犯罪が微罪処分として扱われるかは、各地方検察庁の検事正の指示に基づき、都道府県の警察ごとに決まっています。そのため、全国一律の基準はありませんが、通常は、以下の犯罪が微罪処分の対象とされています。
窃盗、占有離脱物横領、横領、詐欺、盗品等譲受け、賭博、暴行
上記の犯罪のうち特に軽微なものだけが微罪処分として扱われます。なお、痴漢や盗撮、強制わいせつなどの性犯罪は微罪処分の対象にはなりません。
微罪処分の5つの要件
微罪処分の要件は全国一律に決められているわけでありませんが、どの地域でも以下の5つが事実上の要件とされていることが多いです。
①被害額が2万円以下であること
②犯情が軽微であること
③被害回復がなされていること
④被害者の処罰感情が厳しくないこと
⑤素行不良者ではないこと
*前科や前歴があれば素行不良者と認定されやすくなります
例えば、以下のようなケースでは、上の5つの要件を全て満たしているため、微罪処分になる可能性が高いです。
初犯者が衝動的にコンビニで100円のパンを万引きしたが、店と示談が成立し、許してもらった。 |
万引きのケースでは、偶発的な犯行であれば犯情が軽微といえますが、余罪が多数ある場合や転売目的があれば、犯情が軽微とはいえず微罪処分にはならないでしょう。
微罪処分の流れ
万引き(窃盗)の微罪処分のよくある流れは次の通りです。
①万引きをして店員に捕まる
②警察署に連行される
③取調べを受け上申書と供述調書を作成する
④親が警察署に迎えに来る⇒身柄請書にサインする
⑤警察官が本人と親を被害店舗に案内する⇒警察官の立ち会いのもと買取弁償する
微罪処分と弁護士
微罪処分にされるためには、被害が回復されており、被害者が厳しい処罰感情をもっていないことが必要になります。
弁護士を通じて、被害者と示談をすることができれば、「示談金の支払い」という形で被害は回復されたことになります。
また、「許す」とか「刑事処罰を求めない」という文言が入った示談書にサインしてもらえれば、被害者が処罰感情を持っていないことを警察に納得してもらうことができます。
もし微罪処分として扱われなかったとしても、示談が成立していれば、送致後に速やかに不起訴になる可能性が高まります。
そのため、被害者がいる事件であれば、軽微なものであっても、弁護士に依頼した方がよいでしょう。