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即決裁判とは?流れや略式裁判との違いをわかりやすく解説

このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。

 

 

即決裁判とは

即決裁判とは、わかりやすく言うと、通常の刑事裁判に比べてスピーディーに審理や判決をする手続です。

 

次の3つの条件を満たしたときは検察官は即決裁判の申立てをすることができます。

 

① 犯罪事実が認定されることが明らかである

② 犯情が軽微である

③ 証拠調べが速やかに終る見込みがある

 

即決裁判の申立ては起訴と同時に書面で行います。

 

即決裁判のメリット

1.進行が速い

通常の刑事裁判では、起訴してから初公判が開かれるまで少なくとも1ヶ月程度かかります。

 

これに対して、即決裁判では、できる限り即決裁判の申立てがあった日から2週間以内に初公判を開くこととされています。

 

実際は、検察官が即決裁判の申立てをする1日、2日前に裁判所に報告し、申立て前に裁判所書記官から弁護士に初公判の日程調整の連絡が入ります。

 

また、通常裁判では、初公判の日に判決が言い渡されることはほとんどありません。初公判の1、2週間後にもう一度裁判所に行って、判決の言い渡しを受けることになります。

⇒刑事裁判の流れ

 

これに対して、即決裁判では、できる限り初公判と同じ日に判決を言い渡すことになっています。

 

このように、即決裁判では、通常裁判に比べ、短期間で刑事手続が終了することになります

 

2.必ず執行猶予がつく

即決裁判で懲役刑または禁錮刑を言い渡す場合は、必ず執行猶予がつきます。

 

通常の裁判では、弁護士から「執行猶予の可能性が高いので安心してください。」と言われても、確実な保証があるわけではありません。「そうはいっても実刑になるんじゃないか?」と不安に思ってしまうものです。

 

即決裁判では、懲役・禁錮の場合、確実に執行猶予がつくことがわかっているため、実刑判決の不安から完全に解放されます。

 

即決裁判のデメリット

1.事実誤認を理由とする控訴ができなくなる

即決裁判は、争いのない事件について簡単な手続で速やかに審理を行うための手続です。もし即決裁判の判決に対して事実誤認を理由として控訴できれば、裁判が長期化し、即決裁判にした意味がなくなってしまいます。そのため、即決裁判では事実誤認を理由とした控訴はできません。

 

即決裁判にするためには、被疑者や弁護士の同意が必要となるため、そのような制限を課しても問題ないと考えられています。

 

2.本人が軽く考えやすい

即決裁判は、原則として、起訴から2週間以内に判決が言い渡されます。懲役・禁錮の場合は、必ず執行猶予となり、刑務所行きになることはありません。

 

そのため、被告人によっては、「こんなに簡単に終わるんだ。」と軽く考えてしまい、じっくりと反省を深めることがないまま、再び同じ犯罪に手を染めてしまうこともあります。

 

即決裁判の流れ(イメージ)

7月1日

逮捕

7月3日

検察官による勾留請求

7月4日

裁判官による勾留決定

7月20日

被疑者が検察庁で即決裁判の説明を受け、同意書に署名・押印する

7月21日

弁護士が検察庁で即決裁判の同意書に署名・押印する

7月22日

起訴+即決裁判の申立て

8月1日

初公判→判決言渡し

 

即決裁判で死刑はあり?

法律で以下の刑罰が定められている事件については即決裁判を利用することができません。

 

① 死刑

② 無期懲役

③ 下限が1年以上の懲役・禁錮

 

このような重大犯罪については、慎重な審理が必要となるので、即決裁判になじまないためです。

 

【上の条件にあてはまる主な犯罪】

殺人罪、現住建造物放火罪、強盗罪、強制性交等罪、強制わいせつ致傷罪、危険運転致死罪

 

即決裁判の要件

即決裁判で審理・判決するためには次の要件を満たすことが必要です。

 

1.本人の同意があること

即決裁判には事実誤認を理由とする上訴ができない等のデメリットもあることから、利用するためには本人の同意が必要とされています。そのため、意思に反して即決裁判を強制されることはありません。

 

同意は口頭ではなく書面でなされる必要があります。有効な同意の前提として、検察官が即決裁判について本人にきちんと説明する必要があります。

 

一度同意しても、判決の言渡しまではいつでも撤回することができます。同意を撤回すると即決裁判は取り消され、通常裁判に移行します。

 

2.弁護士の同意があること

即決裁判を利用するためには弁護士の同意も必要です。弁護士が反対意見を表明していない限り、積極的な同意がなくても、検察官は即決裁判を申し立てることができますが、その場合、弁護士は同意するか否かを速やかに明らかにしなければいけません。

 

3.本人が初公判で有罪であると認めること

即決裁判は、争いのない事件について、簡易な手続きで審理する制度です。本人が無罪を主張する場合は、本格的な審理が必要になるので、即決裁判の申立てを却下し、通常の刑事裁判で審理することになります。

 

4.弁護士が公判廷に出席すること

即決裁判では、判決に不満があっても事実誤認を理由として控訴することはできません。このように、即決裁判は本人にとって不利益な面もあることから、弁護士がいなければ即決裁判で審理をすることができないとされています。

 

検察官が即決裁判の申立てをした場合、もし本人に私選弁護士がいなければ、国選弁護が選任されます。

 

即決裁判と略式裁判の違い

即決裁判は法廷で審理されますが、略式裁判は書面で審理されます。略式裁判では法廷が裁判の舞台になることはありません。そのため、被告人や弁護士が法廷で言い分を主張する機会がありません。

 

略式裁判は即決裁判よりもさらに簡易な手続ですが、法廷で言い分を述べることができないため、100万円を超える罰金や懲役・禁固刑を科すことはできません。

 

一般的には、検察官が「罰金が相当」と判断した場合は即決裁判ではなく、略式裁判を請求をします。そのため、即決裁判で罰金刑が科されることはまずありません。

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即決裁判と保釈

保釈請求が認められるためには、証拠隠滅のおそれがないことと逃亡のおそれがないことが必要です。

 

1.証拠隠滅のおそれ

検察官が即決裁判を申し立てたということは、有罪認定が容易な事件であり、本人も事実関係について争っていないはずです。そのようなケースでは、証拠隠滅のおそれは低いと言えるでしょう。

 

2.逃亡のおそれ

即決裁判では、原則として2週間以内に判決が下され、懲役・禁錮の場合は必ず執行猶予がつきます。すぐに自由の身になれるわけですから、逃亡のおそれは低いといえるでしょう。

 

このように、即決裁判になるケースでは証拠隠滅のおそれも逃亡のおそれも低いため、通常の刑事裁判に比べて、保釈の成功率は格段に高くなります。

保釈に強い弁護士

 

即決裁判の利用状況

即決裁判は決して多く利用されているわけではありません。2018年に全国の地方裁判所で取り扱った下記事件のうち即決裁判になった事件は次の通りです。

 

 

終局総人員

即決裁判

即決裁判の割合

大麻取締法違反

1531

92

6%

入管法違反

1472

61

4.1%

麻薬及び向精神薬取締法違反

324

6

1.9%

窃盗

10928

26

0.2%

覚せい剤取締法違反

8363

91

1.1%

 

薬物犯罪が目立ちますが、薬物事犯は被害者が存在せず、本人の供述と薬物の鑑定書が犯罪立証のための主要な証拠になります。そのため、本人が自白していれば事案が明白といえ、即決裁判になじむといえます。

 

即決裁判と弁護士

1.即決裁判にするために弁護士がすべきこと

即決裁判を申し立てることができるのは検察官のみです。本人や弁護士から申し立てることはできません。

 

ただ、弁護士が検察官に対し、即決裁判の要件を満たすことを指摘して、即決裁判を申し立てるよう促すことはできます。

 

起訴の直前になってから検察官に即決裁判を促しても応じてくれないため、余裕をもって即決裁判の申立てを促すべきです。

 

2.即決裁判申立て後に弁護士がすべきこと

検察官は、即決裁判の申立てをしたときは、できるだけ速やかに証拠を開示することになっています。通常の刑事裁判であれば、起訴されてから証拠が開示されるまで約3週間かかりますが、即決裁判では1週間以内に開示されることが多いです。

 

証拠開示から公判までほとんど時間がないため、弁護士が速やかに内容を検討し、被告人や情状証人と打ち合わせをして立証準備を行います。

 

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