処分保留釈放とは?タイミングや起訴・不起訴との関係について

処分保留釈放

 

 

このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。

 

 

 

 

処分保留釈放とは?

「容疑者を処分保留で釈放しました」

 

 

ニュースや新聞で、このように報道されていることがあります。処分保留釈放とは、検察官が処分を決めずにとりあえず被疑者を釈放することです。

 

 

処分保留で釈放する理由

検察官はなぜ処分保留で被疑者を釈放するのでしょうか?

 

 

それは、検察官が厳しいタイムリミットの中で仕事をしているからです。

 

 

被疑者を逮捕できるのは最長で日間です。逮捕の後に一定の要件を満たせば、「勾留」という形で、引きつづき被疑者を拘束することができます。被疑者を勾留できる期間は最長20日です。

 

 

刑事訴訟法という法律で、検察官は、この20日以内に、被疑者を起訴して刑事裁判にかけるか、釈放するかを決めないといけないことになっています。

 

 

もっとも、刑事事件によっては、20日以内に必要な捜査をして、起訴するか不起訴にするかを決められないこともあります。

 

 

そのような場合、検察官が「起訴するかどうかまだ決められませんので、勾留を20日よりも延長してください。」と裁判官に頼んでも、延長してもらえません。

 

 

そのような理由で延長が認められると、法律で厳しく定めたルールが骨抜きになってしまうからです。

 

 

そのため、検察官が、20日の勾留期間では起訴するか不起訴にするかを判断できない場合は、いったん処分を保留して、被疑者を釈放するしかないのです。

 

処分保留釈放のタイミング

検察官が処分保留で被疑者を釈放するのは、「20日の勾留期間では起訴するか不起訴にするかの判断がつかないとき」です。

 

 

そのため、処分保留で釈放するタイミングは、勾留期間の最後の方になることが多いです。具体的には、勾留19日目とか20日目に釈放することが多いです。

 

処分保留釈放後の流れ

いったん処分保留で釈放すると、「いつまでに○○しないといけない」という厳しいルールはなくなります。そのため、検察官もじっくり捜査をして、起訴するか不起訴にするかを判断することができます。

 

 

もっとも、処分保留で釈放したということは、勾留期間をフルに使って捜査してもなお起訴できるだけの証拠が得られなかったということですから、その後時間をかけて捜査しても状況が変わることは少ないです。

 

 

そのため、処分保留釈放後に起訴されるケースは決して多くはありません。ほとんどのケースで1か月以内に不起訴になります。

 

 

処分保留釈放と再逮捕

処分保留で釈放された後に起訴されることはほとんどありません。

 

 

ただ、覚せい剤事件オレオレ詐欺など再逮捕がありうるケースでは、1件目の事件で処分保留釈放になった直後に、2件目の事件で再逮捕され、その後、1件目と2件目でまとめて起訴されることがありますので注意が必要です。

 

【処分保留釈放後に再逮捕→起訴される流れ】

8月1日

オレオレ詐欺①で逮捕

8月22日

オレオレ詐欺①で処分保留釈放→オレオレ詐欺②で再逮捕

9月11日

オレオレ詐欺①とオレオレ詐欺②でまとめて起訴される

 

 

処分保留釈放になるかどうかを知る方法

処分保留釈放になるか否かは、弁護士が検察官に問い合わせれば教えてくれます。勾留満期日の1週間前に尋ねても通常教えてくれませんが、満期日の前日や当日に確認すれば教えてくれるでしょう。

 

処分保留釈放と弁護士

国選弁護人の場合は、被疑者が処分保留で釈放された時点で業務が終了します。起訴前の国選弁護人は、被疑者が勾留されている間しか利用できないからです。私選弁護人の場合は、処分保留釈放になった後も継続的に活動することが可能です。

 

 

【関連ページ】

起訴前の流れ(逮捕・勾留あり)