処分保留釈放とは?その後は不起訴になる?再逮捕は?

処分保留釈放

 

 

「詐欺容疑で逮捕の容疑者が処分保留で釈放」-このような報道を目にされた方もいるでしょう。処分保留釈放とはどういう意味でしょうか?

 

 

このページではウェルネス法律事務所の弁護士 楠 洋一郎が処分保留釈放についてわかりやすく解説しています。ぜひ参考にしてみてください!

 

 

 

処分保留釈放とは?

「処分保留釈放」とは検察官の処分の一つで、最終的な処分を決めずに「とりあえず」被疑者を釈放することです。

 

 

検察官が決める最終的な処分は、起訴か不起訴のいずれかです。そのため、処分保留で釈放された被疑者は、その後に必ず起訴されるか不起訴になります。

 

 

起訴されれば刑事裁判にかけられ、裁判官によって有罪・無罪や刑罰について判断されます。これに対して、不起訴になれば刑事裁判にかけられないため、処罰されたり前科がつくことはありません。

不起訴処分について

 

 

処分保留釈放になる理由は?

1.検察官の持ち時間は限られている

検察官はなぜ処分保留で被疑者を釈放するのでしょうか?

 

 

理由は、検察官が守らなければならないタイムリミットがあるからです。被疑者を逮捕できるのは最長で3日間ですが、一定の要件を満たせば、「勾留」という形で、引きつづき被疑者を拘束することができます。

 

 

被疑者を勾留できる期間は原則10日です。勾留が延長されるとさらに10日の限度で勾留できます。つまり勾留期間は最長で20日になります。

 

 

刑事訴訟法という法律で、検察官は、最長20日以内に、被疑者を起訴して刑事裁判にかけるか釈放するかを決めなければなりません。

 

 

【刑事訴訟法第208条】

①第二百七条の規定により被疑者を勾留した事件につき、勾留の請求をした日から十日以内に公訴を提起しないときは、検察官は、直ちに被疑者を釈放しなければならない。

②裁判官は、やむを得ない事由があると認めるときは、検察官の請求により、前項の期間を延長することができる。この期間の延長は、通じて十日を超えることができない。

 

 

2.時間切れになれば処分保留で釈放するしかない

刑事事件によっては、最長20日の勾留期間内に必要な捜査を尽くして、起訴するか不起訴にするかを決められないこともあります。

 

 

そのような場合、検察官が裁判官に、「起訴するかどうかまだ決められませんので、勾留期間を20日よりも延長してください。」と頼んでも、延長してくれません。

 

 

そのような理由で延長が認められると、法律で定められた逮捕や勾留の期間制限が骨抜きになってしまうからです。

 

 

そのため、検察官が20日の勾留期間内に起訴するか不起訴にするかを決められない場合は、いったん処分を保留にして被疑者を釈放するしかないのです。

 

 

処分保留釈放のタイミングは?

検察官が処分保留で被疑者を釈放するのは、「最長20日の勾留期間では起訴するか不起訴にするかを判断できないとき」です。

 

 

検察官は、起訴できるだけの証拠を集めようとして、勾留期間のギリギリまで捜査を続けます。そのため、処分保留で釈放されるタイミングは、勾留期間の最終日になることが多いです。

 

 

処分保留で釈放-その後は起訴?不起訴?

1.タイムリミットがなくなる

被疑者を処分保留で釈放すると、時効を除いて、処分にあたってのタイムリミットがなくなります。そのため、検察官もじっくり捜査をして、起訴するか不起訴にするかを判断することができるようになります。

 

 

2.1ケ月以内に不起訴になることが多い

処分保留で釈放したということは、勾留期間をフルに使って捜査してもなお起訴できるだけの証拠が得られなかったということですから、その後時間をかけて捜査しても状況が変わることは少ないです。

 

 

そのため、処分保留釈放後に起訴されるケースは決して多くはありません。ほとんどのケースで1か月以内に不起訴になります。

 

 

処分保留で釈放-再逮捕されることも

1.同じ事件で再逮捕されることはまずない

処分保留で釈放された事件で再逮捕されることはまずありません。同一の事件で再逮捕・再勾留が可能であれば、法律が逮捕や勾留について定めた厳格な期間制限が骨抜きにされてしまうからです。

 

 

本ページの筆者の弁護士 楠 洋一郎はこれまで2000件程度の刑事弁護を手がけてきましたが、同一の事件で再逮捕されたケースは一度もありませんでした。

 

 

2.別件で再逮捕されるケース

薬物事件や特殊詐欺のケースでは、処分保留で釈放された後に、別の事件で再逮捕されることがあります。

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再逮捕されるタイミングは最初の事件で処分保留釈放された直後です。時間があいてしまうと被疑者が警察署から出てしまい逃亡のおそれがあるためです。

 

 

実務では釈放手続をした直後に別件についての逮捕状を執行します。その後、再逮捕された事件と処分保留釈放された事件がまとめて起訴されることが多いです。

 

【特殊詐欺のケース】

3月1日午前9時

詐欺事件①で逮捕

3月1日午前9時

詐欺事件②で再逮捕

3月23日事件

詐欺事件①と②の両方で起訴

 

【薬物事件のケース】

3月1日午前9時

覚醒剤の所持罪で処分保留釈放

3月1日午前9時

覚醒剤の使用罪で再逮捕

3月23日事件

覚醒剤の所持罪と使用罪の両方で起訴

 

 

処分保留で釈放されたらどうする?

処分保留で釈放され、再逮捕されなければ、晴れて自由の身になります。もっとも処分が保留された状態であり刑事手続が終わったわけではありません。

 

 

それでは、釈放されたらどのように動けばよいのでしょうか?容疑を認めている自白事件と認めていない否認事件にわけて解説します。

 

 

1.自白事件で処分保留釈放された場合の対処法

自白事件で処分保留釈放されたケースの多くは、示談が成立しています。示談が成立していれば、何もしなくても不起訴になる可能性が非常に高いです。

 

 

性犯罪で逮捕された被疑者が、釈放後に性依存症のクリニックに通院している場合は、通院証明書などを提出してもよいでしょう。

 

 

2.否認事件で処分保留釈放された場合の対処法

否認事件で処分保留釈放された場合は、警察や検察から、改めて取調べをしたいとして呼び出されることがあります。呼び出しを受けた場合は出頭を拒否すべきです。

 

 

判例上、逮捕・勾留中は「取調べ受忍義務」といって取調べを受ける義務があるとされていますが、釈放後は取調べを受ける義務はないとされています。

 

 

そのため、出頭を拒否しても問題ありません。同一事件での再逮捕は原則として許されませんので、出頭を拒否したとの理由で再逮捕されることもないでしょう。

 

処分保留釈放と弁護士

国選弁護人の場合は、被疑者が処分保留で釈放されると業務が終了します。起訴前の国選弁護人は勾留されている間しか利用できないからです。

 

 

私選弁護人の場合は、処分保留釈放になった後も継続的に活動することが可能です。

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