覚せい剤等のあおり・唆し 

このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。

 

 

【覚せい剤等のあおり・唆し】ネットへの書込みで逮捕されることも

インターネットの掲示板で、隠語を使って覚せい剤や大麻の買い手を募集する書き込みがしばしばされています。

 

書き込みをした人が、実際には覚せい剤や大麻を持っておらず、冗談半分で投稿したとしても、麻薬特例法違反で逮捕されるリスクがあります。

 

【覚せい剤等のあおり・唆し】ネットへの書込みと麻薬特例法違反

麻薬特例法は、違法薬物の濫用を公然とあおり、唆した者に対し、3年以下の懲役または50万円以下の罰金を定めています(同法9条)。

 

麻薬特例法が規制の対象としている薬物(規制薬物)は、覚せい剤、大麻、コカイン、ヘロイン、あへん、MDMA、ゴメオ等です。ラッシュ等の一部の脱法ドラッグを除きほとんどの違法薬物が対象とされています。

 

インターネットを通じて規制薬物の売買がひんぱんにされており、社会問題になっていることから、規制薬物の売買を助長するあおりや唆しも処罰の対象とされているのです。

 

インターネットの掲示板やTwitterなどのSNSへの書込みは、不特定多数の人が見ることができるため、麻薬特例法の「公然」の要件を満たします。

 

書きこみの内容が覚せい剤や大麻の買い手を募るものであれば、「規制薬物の濫用をあおり、唆したという要件も満たします。

 

文字による書き込みだけではなく、規制薬物の効果を吹聴しながら自分で使用している動画を投稿した場合も、違法薬物の濫用をあおり、唆したといえるでしょう。実際に、大麻を吸引している画像をTwitterにアップロードして逮捕されたケースもあります。

 

また、「シェア希望」といった「一緒に使いませんか?」という趣旨の書込みも「あおり、唆し」にあたります。男性同性愛者の掲示板ではこのような書き込みが散見されます。

 

【覚せい剤等のあおり・唆し】捜査の流れ

(1)サイバーパトロール

警察のサイバー犯罪対策課が掲示板やSNSをパトロールし、違法性が疑われる書き込みがあれば、IPアドレス等から書き込みした人物を特定します。

 

(2)強制捜査

警察が被疑者の自宅を捜索します。もし、覚せい剤や大麻などの違法薬物を発見した場合は、すぐに簡易鑑定をして、陽性であれば所持容疑で現行犯逮捕します。

 

違法薬物が見つからなくても、規制薬物の濫用をあおり、唆したとして、麻薬特例法違反で令状逮捕することもあります。また、掲示板への書込みに使用したパソコンやスマートフォン、Wi-Fiルーターを押収します。

 

(3)尿検査

家宅捜索を実施した後、被疑者を警察署に連れて行き尿を採取します。尿は科捜研で鑑定され、違法薬物の反応が出れば、使用罪で逮捕します(大麻については使用罪はありませんので逮捕することはありません)。

 

【覚せい剤等のあおり・唆し】どのような処分になるのか

(1)違法薬物を所持・使用していた証拠がある場合

家宅捜索で覚せい剤などの違法薬物が発見されたり、尿検査で薬物反応がでれば、所持罪や使用罪で起訴され懲役刑となる可能性が高いです。前科・前歴がなければ執行猶予がつくでしょう。

覚せい剤

大麻

 

(2)違法薬物を所持・使用していた証拠がない場合

① あおり・唆しを認めているケース

自分が書き込んだ隠語が麻薬特例法が規制している薬物(規制薬物)を指すことを認めていれば、略式裁判で罰金になる可能性が高いです。前科・前歴がなく、他に一切怪しい書込みをしていなければ、起訴猶予による不起訴処分になることもあります。

 

② あおり・唆しを否認しているケース

自分が書き込んだ隠語が覚せい剤などの規制薬物をさしていることを否認した場合は、公判請求されるか嫌疑不十分で不起訴処分になるかのどちらかです。

 

検察官が、「隠語が規制薬物をさしていることを裁判で立証できない」と判断したときは不起訴処分になり、「立証できる」と判断したときは公判請求されます。公判請求されても薬物犯罪の前科が複数あったり、執行猶予中でない限り、実刑判決になる可能性は低いです。

 

隠語については、問題になっている書込みだけではなく、その書込みを見た人との間で交わされたメールの内容や掲示板での一般的な使われ方などから、総合的に判断されます。

 

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