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覚醒剤・大麻のあおり、唆しとは?麻薬特例法違反について弁護士が解説
ネット掲示板やSNSで、売人が隠語を使って覚醒剤や大麻の買い手を募集していることがあります。YouTube等で大麻の効用について得意げに配信している動画もあります。
実際は違法薬物を所持・使用しておらず、冗談半分でそのような書き込みや配信をしたとしても、違法薬物の濫用等をあおったり唆(そそのか)したとして、麻薬特例法違反で逮捕・起訴されるリスクがあります。
このページでは麻薬特例法違反(あおり、唆し)について、薬物犯罪に詳しい弁護士 楠 洋一郎が解説しています。ぜひ参考にしてみてください!
目次
【覚醒剤・大麻】麻薬取締法違反(あおり、唆し)とは?
違法薬物の濫用等を公然とあおったり唆したりすると麻薬特例法違反になります。麻薬特例法の正式名称は、「国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律」です。
違法薬物の濫用等を公然とあおったり唆したりすると、薬物犯罪を助長することになるため、あおりや唆し自体が犯罪として処罰されるのです。
麻薬特例法違反(あおり、唆し)の罰則は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金です。
【麻薬特例法】
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【覚醒剤・大麻】麻薬特例法違反(あおり、唆し)の対象は?
麻薬特例法違反(あおり、唆し)の対象となる薬物(規制薬物)は以下の通りです。ラッシュなど薬機法で規制されている指定薬物は対象外とされています。
規制薬物 | 規制している法律 |
覚醒剤 | 覚醒剤取締法 |
大麻 | 大麻取締法 |
あへん、けしがら | あへん法 |
麻薬(コカイン、ヘロイン、MDMA等)、向精神薬 | 麻薬及び向精神薬取締法 |
【覚醒剤・大麻】麻薬特例法違反(あおり、唆し)の要件は?
1.麻薬特例法(あおり、唆し)の「公然」とは
麻薬特例法違反(あおり、唆し)が成立するためには、違法薬物の濫用等を「公然」とあおったり唆したりする必要があります。
「公然」とは、不特定・多数の人が認識できる状態のことを言います。ネット掲示板、SNS、オープンチャットへの書き込みは、不特定多数の人が見ることができるため、「公然」の要件を満たします。YouTube等の動画配信も不特定多数の人が見ることができるため、「公然」にあたります。
2.麻薬特例法(あおり、唆し)の「あおり、唆し」とは
「あおり」、「唆し」とは、言葉や絵、動画等により、人に薬物犯罪等を実行したり規制薬物を濫用する決意を生じさせることです。それらを既に決意している人の決意を強めることもあおりや唆しになります。
「あおり」は人の感情に訴えて決意を生じさせたり強めること、「唆し」は人の理性に影響を与えて、決意を生じさせたり強めることです。
ネット掲示板やSNSで規制薬物の隠語を使って「売ります」と書き込むと、規制薬物の濫用をあおり、唆したという要件に該当します。
文字による書き込みだけではなく、規制薬物の効果を吹聴している動画を配信した場合も、規制薬物の濫用をあおり、唆したといえるでしょう。実際に、大麻を吸引している動画をアップロードして逮捕されたケースもあります。
また、「シェア希望」といった「一緒に使いませんか?」という趣旨の書き込みも「あおり、唆し」にあたります。男性同性愛者の掲示板でこのような書き込みが散見されます。
【覚醒剤・大麻】麻薬特例法違反(あおり、唆し)の捜査の流れ
①サイバーパトロール
警察のサイバー犯罪対策課がネット掲示板やSNS、YouTube等をパトロールし、違法性が疑われる書き込みがあれば、IPアドレス等から書き込んだ人物を特定します。
②強制捜査
警察が裁判官の令状をとって被疑者の自宅を捜索します。
捜査員が被疑者の自宅で覚醒剤や大麻などの違法薬物を発見した場合、その場で簡易鑑定をして、陽性であれば違法薬物の所持容疑で現行犯逮捕します。
違法薬物が見つからなくても、麻薬特例法違反(あおり、唆し)で令状逮捕することもあります。また、ネット掲示板やSNSへの書き込みに使用したスマートフォンやパソコン、Wi-Fiルーターを押収します。
③尿検査
家宅捜索を実施した後、被疑者を警察署に連れて行き尿を採取します。
尿は科捜研で鑑定され、違法薬物の反応が出れば使用罪で逮捕される可能性が高いです。
その後の流れは逮捕された場合と逮捕されなかった場合で異なってきます。詳しくは以下のページをご覧ください。
逮捕された場合⇒逮捕後の流れや釈放のタイミングについてわかりやすく解説
逮捕されない場合⇒在宅事件の流れは?逮捕される刑事事件との違いや起訴・不起訴について
【覚醒剤・大麻】麻薬特例法違反(あおり、唆し)で起訴される?
1.容疑を認めているケース
被疑者が規制薬物を示すものとして隠語を使ったと認めているケースでは、略式起訴され罰金になる可能性が高いです。
⇒略式裁判とは?罰金の金額や払えない場合について弁護士が解説
罰金であっても前科はついてしまいます。
薬物犯罪の前科があれば、正式起訴されて公開法廷で審理され、検察官から懲役刑を請求される可能性が高くなります。
麻薬特例法違反(あおり、唆し)は重大犯罪というわけではありませんので、前科・前歴がなく、他に類似の書き込みをしていなければ、起訴猶予で不起訴処分になることもあります。不起訴になれば前科はつきません。
2.否認しているケース
自分が使った隠語が規制薬物を意味することを知らなかったと主張する場合は、嫌疑不十分で不起訴になるか正式起訴されるかのどちらかになります。
検察官が「隠語が規制薬物を意味することを被疑者が知っていたこと」を裁判で立証できないと判断すれば、嫌疑不十分で不起訴にします。逆に、「立証できる」と判断すれば正式起訴します。
正式起訴されても初犯であれば、執行猶予がつく可能性が高いです。
「隠語が規制薬物を意味することを知っていたか否か」は、問題になっている書き込みだけではなく、その書き込みを見た人との間でなされたやりとりや、他の人と隠語についてどのようなやりとりをしていたか等の事情から総合的に判断されます。
【覚醒剤・大麻】麻薬特例法違反(あおり、唆し)で不起訴になるには?
1.容疑を認めているケース
容疑を認めている場合は、以下の活動が考えられます。
①反省文を作成する
②贖罪寄付をする
③家族に監督プランを記載した陳述書を作成してもらう
弁護士が不起訴を求める意見書を作成し、反省文、贖罪寄付の証明書、家族の陳述書と一緒に検察官に提出します。
2.容疑を否認しているケース
容疑を否認している場合、「隠語が覚醒剤を意味することを知っていました。」といった調書をとられると、起訴されて有罪になる可能性が高くなります。
取調べで不利な調書をとられないよう、黙秘するか自分の認識(知らなかった)を伝えた上で調書への署名・指印を拒否すべきです。まずは薬物事件に強い弁護士にご相談ください。
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