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情状証人とは?メリット・デメリットや本番で役に立つ5つのポイント

情状証人

 

このページはウェルネス法律事務所の弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。

 

 

情状証人とは?

情状証人とは、刑事裁判で、被告人の刑が少しでも軽くなるよう、被告人の人となりやふだんの生活状況、今後の更生に向けてどのように監督していくのか等についてお話しする証人です。

 

 

情状証人に出廷してもらうのは被告人が罪を認めている自白事件の公判です。否認して無罪を主張している公判では、情状証人に出廷してもらうことはありません。

 

 

情状証人が証言するメリットは?

 情状証人が証言するメリットは、裁判で被告人に有利な証言をしてもらうことにより、減刑が期待できることです。

 

 

情状証人の証言だけで大幅な減刑までは期待できませんが、判決書に情状証人が法廷で被告人を監督することを誓約している。」等と明記され、量刑にあたって一定程度考慮してもらえます。

 

 

裁判官が実刑にするか執行猶予にするか迷っているケースでは、情状証人の存在が決め手になって執行猶予になることもあります。

 

 

情状証人のデメリットは?

1.偽証罪で逮捕・起訴されるリスク

情状証人が意図的に嘘の証言をすると偽証罪になり、逮捕・起訴されるリスクがあります。

偽証罪とは?成立要件や罰則・時効について解説

 

 

実際は被告人と同居していないのに「同居しています。」と証言して逮捕された情状証人もいます。

 

 

「事実だと思って証言したが勘違いで事実ではなかった」場合は、あえて嘘をついているわけではないので偽証罪にはなりません。そのため、誠実に対応している限り偽証罪で逮捕・起訴されることはありません。

 

 

2.監督しきれなかった場合でも責任なし

情状証人が法廷で「被告人を監督することを誓います。」と証言した後に、十分な監督ができず、被告人が再犯をしてしまった場合、情状証人は責任を負わなければならないのでしょうか?

 

 

このような場合でも、情状証人が責任を負うことはありません。「監督します」という気持ちに嘘偽りがなければ、結果的に監督しきれなかったとしても偽証罪が成立することはありません。

 

 

情状証人は誰がなる?

情状証人で最も多いのは被告人の家族です。妻や親など被告人と同居している家族がベストです。

 

 

情状証人の尋問で最も意味があるのは、「被告人を監督します。」と証言してもらうことです。「監督する」と証言してもらうために出廷してもらうと言っても過言ではありません。

 

 

被告人と同居していれば、毎日被告人と顔を合わせているわけですから、別居している家族よりも効果的に被告人を監督することができます。

 

 

被告人が一人暮らしで同居の家族がいない場合や、同居の家族がいるけれども高齢で病気がちといった場合は、別居の家族に情状証人になってもらいます。職場の上司や雇用主に情状証人になってもらうこともあります。

 

 

彼女は情状証人になれる?

彼女であっても情状証人になれます。「裁判所に対するアピール」という意味では同居の家族がベストですが、同居の家族がいない場合は彼女に情状証人になってもらってもよいでしょう。

 

 

被告人と婚約していたり、交際期間が長い場合は、彼女であっても家族に準じる-*存在とみなされます。

 

 

彼女が被告人と同棲していれば、別居している家族より彼女に情状証人になってもらった方が監督の実効性をアピールできることもあります。

 

 

情状証人の人数は?

情状証人の人数は法律で決まっているわけではありません。

 

 

通常は、家族の一人に情状証人になってもらいます。複数の家族を情状証人として申請しても、「一人で十分」として裁判所に却下されることが多いです。

 

 

家族に加えて、職場の上司を情状証人として申請した場合は、どちらも採用されることが多いです。監督する場面や監督の仕方といった点で、家族と職場の上司は自ずと異なってくるため、役割が重複しているとはいえないからです。

 

 

情状証人が証言するタイミングは?

被告人が罪を認めている場合は、重大な事件を除き、初公判1回で審理が終了することが多いです。そのため、情状証人の尋問も初公判で行われることになります。

 

 

追起訴されたケースでは、情状証人の尋問は、一番最後の公判で実施されることが多いです。

 

 

オレオレ詐欺など、多くの追起訴が見込まれる事件では、最初の起訴から半年以上経ってから情状証人の尋問が行われることもあります。

 

 

情状証人の尋問の流れは?

情状証人の尋問の流れは以下のとおりです。

 

①裁判長に指示され傍聴席から証言台に移動します

②証言台の前に立ち、正面に座っている裁判官の方を向いて、「嘘をつきません。」と書かれた宣誓書を声に出して読み上げます。

③証言台の前に着席します。

④弁護士が主尋問をします10分程度の場合が多いです)。

⑤検察官が反対尋問をします主尋問よりも短くなることが多いです)。

情状証人が反対尋問をのりきるための3つのポイント

⑥裁判官が補充尋問をします全く尋問しないこともあります)。

⑦尋問が終了します⇒傍聴席に戻ります。

 

 

【詳細ページ】情状証人の尋問当日の流れは?弁護士が解説

 

 

情状証人が注意すべき5つのポイント

1.前を向いて発言する

情状証人は、裁判官の目の前にある証言台に座って証言します。弁護士と検察官は、証言台の両サイドに互いに向かいあう形で座っています。

 

 

このような位置関係のため、弁護士や検察官は、情状証人の横から質問しますが、質問に答える際は、正面に座っている裁判官の方を向いて発言してください。

 

 

横にいる弁護士や検察官を見て発言すると、裁判官が聞き取りづらくなりますし、録音マイクが音声を拾えずうまく録音できないことがあるからです。

 

 

2.質問が終わってから発言する

弁護士や検察官の質問と情状証人の発言が重なってしまうと、うまく聴きとれませんし、録音にも支障があります。弁護士や検察官の質問を最後まで聞いてから発言してください。

 

 

反対尋問で検察官から事前に予測していた質問をされると、「予想通りだ!」と思って、質問が終わる前に発言してしまうことが多いのでご注意ください。

 

 

3.聞かれたことに対して簡潔に答える

裁判官は、情状証人が長々と話を続けることを嫌がります。ポイントを絞って端的に答えるようにしましょう。

 

 

弁護士としても一つの質問で複数のことを聞くのではなく、情状証人が簡潔に答えることができるよう、シンプルな質問に分解して聞くといった工夫が必要です。

 

 

4.答えを丸暗記しない

情状証人の尋問は弁護士の主尋問から始まります。弁護士は、事前に主尋問でどのようなことを聞くのかを情状証人に伝えておきます。

 

 

情状証人のなかには、主尋問への回答を丸暗記しようとする方もいます。ただ、丸暗記で対応しようとすると、発言がロボットのように不自然になってしまい、かえって逆効果です。思い出せないと緊張で言葉が出てこなくなることもあります。

 

 

丸暗記するのではなく、大体の流れやキーワードを頭に入れておき、細かい内容はその場で考えて発言した方が自然な印象を与えます。

 

 

5.具体的なことを話す

証言台で「被告人を監督します。」と言うだけでは説得力がありません。具体的にどのように監督するのかについても言及した方が裁判官の印象がよくなります。

 

 

例えば、覚醒剤事件の情状証人であれば、「今後、不定期に被告人の部屋や持ち物を確認し、違法薬物がないかどうかをチェックします。もし、違法薬物があれば、警察に通報します。」等と具体的に証言した方がよいでしょう。

 

 

情状証人の服装は?

情状証人として出廷する際は、スーツやそれに準じた服装で裁判所にお越しください。

 

 

情状証人が証言する時間はせいぜい10分から20分です。裁判官は情状証人の人となりについて事前に説明を受けているわけではありません。

 

 

短い時間で「この証人であれば被告人を監督できる。」と思ってもらうためには、外見的な印象も大切です。

 

 

裁判員裁判の場合、裁判員は一般の方であり、見た目で判断してしまいがちなので、印象を良くすることはより一層重要になります。

 

 

【男性の情状証人の服装】

濃紺のスーツに、白のシャツ、小紋のついた紺色のネクタイが最も無難な選択です。スーツは濃いグレーでもよいでしょう。

 

 

【女性の情状証人の服装】

スーツまたはそれに準じた服装でお越しください。香水や派手なアクセサリーは控えた方がよいでしょう。

 

 

情状証人がいない場合はどうする?

☑ 家族が遠方に住んでいる

☑ 上司が多忙で裁判に来れない

 

 

このような理由で情状証人がいない場合は、家族や上司に「被告人を監督することを誓約します。」といった誓約書を書いてもらい、証拠として裁判所に提出します。

 

 

情状証人の証言と同じで、誓約書にも具体的な監督方法を記載した方がよいでしょう。

 

 

家族には情状証人として出廷してもらい、上司は仕事の予定が入っており無理を言えないので誓約書を作成してもらうといったように、人によって使い分けることもあります。

 

 

情状証人はお金をもらえる?

証人として出廷すれば、裁判所から日当が支給されます。金額は8000円程度です。ただ、裁判所から日当をもらえば、裁判所から被告人に対して同じ金額の請求がいくことになります。

 

 

そのため、情状証人は日当を放棄するのが通常です。

 

 

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