現行犯逮捕とは?逮捕状なしで誰でもできる逮捕を弁護士が解説

現行犯逮捕

 

逮捕には、通常逮捕、緊急逮捕、現行犯逮捕の3つの種類がありますが、このページでは現行犯逮捕について解説します。

 

 

このページは元東京地検特捜部の検察官が執筆し、弁護士 楠 洋一郎が監修をしています。

 

 

  

 

現行犯逮捕とは

今、目の前で犯罪を行っている者、または、犯罪を行った直後の者を現行犯人といい、現行犯人を逮捕することを現行犯逮捕といいます。

 

【現行犯逮捕の条文:刑事訴訟法213条】

現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。

 

 

準現行犯逮捕とは

目の前で犯罪が行われていたり、犯罪をした直後というわけではありませんが、次の2つの要件に該当する場合は、現行犯人とみなされます。

 

 

【要件①】以下の4つのいずれかに該当する

①犯人と呼ばれて追いかけられているとき

②凶器などの犯罪に利用したと思われる物を所持しているとき

③服に返り血がついているなど、犯罪の顕著なこんせきがあるとき

④氏名などを尋ねられて逃げようとするとき

 

【要件②】罪を行い終わってから間がない明らかに認められる

 

このタイプの現行犯人を逮捕することを準現行犯逮捕といい、現行犯逮捕と同じように扱われます。このページでは狭義の現行犯逮捕と準現行犯逮捕をまとめて現行犯逮捕と表記しています。

 

現行犯逮捕は逮捕状なしでできる

通常逮捕のケースでは、警察官が裁判官に逮捕状を請求し、裁判官が逮捕してよいかどうかを審査して、逮捕してよいと判断した場合に逮捕状を発付します。警察官はこの逮捕状を被疑者に示して逮捕します。

 

 

これに対して、現行犯逮捕のケースでは、犯罪と犯人が明白であり誤認逮捕のおそれがないと考えられること、犯人が目の前にいて逮捕状の準備をしている時間がないことから、逮捕状なしで逮捕できます。

 

 

現行犯逮捕は一般人でもできる

通常逮捕できるのは捜査機関の人間のみですが、現行犯逮捕は誰でもすることができます。一般人による現行犯逮捕を私人逮捕といいます。

 

 

被疑者に対して「逮捕する!」と言う必要はなく、身体の一部をつかんだ時点で逮捕と評価されます。私人逮捕した場合は直ちに被疑者を捜査機関の人間に引き渡さなければいけません。

 

現行犯逮捕は意外に多い!?

2019年の警視庁統計によれば、警視庁管内の刑法犯の送致件数は2万4902件、そのうち現行犯逮捕された件数は5007件で、約20%になります。

 

 

緊急逮捕の件数は51件、通常逮捕の件数は5579件ですので、逮捕されたケースの半分近くは現行犯逮捕ということになります。

 

 

現行犯逮捕の流れ

現行犯逮捕された後は最寄りの警察署に連行され、すぐに取調べが始まります。その後の流れは通常逮捕と同様です。

起訴前の流れ(逮捕・勾留あり)

 

 

警察の担当者は現行犯逮捕手続書という書面を作成します。現行犯逮捕手続書には、犯行の状況、逮捕の日時と場所、逮捕者、逮捕に至る状況、被疑者の反応などを記録します。

 

 

私人逮捕の場合は、逮捕者からも事情を聴きます。

 

 

現行犯逮捕できないケース

①30万円以下の罰金、②拘留、③科料にあたる罪については、次の2つの要件のいずれかを満たさない限り、現行犯逮捕はできません。

 

要件1.犯人の住居または氏名が明らかでないとき。 

要件2.犯人が逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。

 

 

【法定刑が30万円以下の罰金,拘留,科料に当たる罪の例】

罪名等

法定刑

過失建造物等浸害罪

20万円以下の罰金

過失往来危険罪

30万円以下の罰金

変死者密葬罪​

10万円以下の罰金又は科料

過失傷害罪

30万円以下の罰金又は科料

侮辱罪

拘留又は科料

軽犯罪法違反

拘留又は科料

 

 

現行犯逮捕されやすい事件

現行犯逮捕されやすい事件は次の通りです。

 

痴漢

被害者や目撃者に私人逮捕されて駅事務所に連れて行かれ、駅事務所に来た警察官に引き渡されます。

 

 

盗撮

スカレーター上で盗撮しているときに前に立っていた被害者や後ろにいた目撃者に見つかり私人逮捕されることが多いです。

 

 

暴行・傷害・器物損壊

お酒が入り、抑えが効かなくなっている状態で暴力をふるったり、店の物や看板を壊したりして、駆けつけた警察官に現行犯逮捕されることがよくあります。

 

 

窃盗

現行犯逮捕が最も多いのは万引きです。店の従業員や警備員によって私人逮捕されます。下着泥棒が住人や目撃者に見つかって私人逮捕されることもあります。

 

 

詐欺

詐欺の現行犯逮捕で昔からよくあるのが無銭飲食です。特殊詐欺で被害者がだまされていることに気づいた場合は、だまされたふり作戦が実施され、事情を知らない受け子が詐欺未遂で現行犯逮捕されます。

 

 

薬物犯罪

警察の職務質問を受け、所持品検査で覚せい剤や大麻らしき物が発見されると、その場で試薬を使った予試験が実施されます。陽性反応が出れば薬物所持で現行犯逮捕されます。

 

 

銃刀法違反

警察の所持品検査を受けた際、所持しているナイフが発見され、刃体の計測を受けて銃刀法違反に該当すれば、現行犯逮捕されることがあります。

 

 

交通事件

交通事故では、死亡事故は現行犯逮捕されることが多いです。特に、無免許、酒気帯び・酒酔い運転,危険運転致死のケースでは、ほぼ確実に現行犯逮捕されます。

 

 

通常の死亡事故の場合でも、遺族感情への配慮や被疑者の自殺防止のために現行犯逮捕することがありますが、すぐに釈放されることが多いです。

 

 

交通違反

交通三悪(無免許・酒気帯び・酒酔い)は、現行犯逮捕される確率が高いです。特に、年2回、春と秋に行われる「全国交通安全運動」期間中の検問等で「無免許・酒気帯び・酒酔い」が発覚した場合には、ほぼ間違いなく現行犯逮捕されます。

 

現行犯逮捕されたら弁護士を呼ぼう

もし事件を起こして現行犯逮捕された場合は、すぐに最寄りの警察署に連行され取調べが行わます。

 

 

痴漢冤罪のケースなど、現行犯逮捕であっても誤認逮捕がないとはいえません。もし、心当たりがないのに現行犯逮捕された場合は、弁護士がくるまでは黙秘すべきです。

 

 

「自分がやったことに間違いない」という場合は黙秘する必要はありませんが、供述調書にサインをする前に、調書の内容を確認させてもらい、記憶と異なることが書かれていないかどうかチェックしてください。

 

 

もし記憶にないことが書かれている場合は取調官に削除や訂正を申し立ててください。応じてくれない場合はサインをする必要はありません。

 

 

いずれにせよ、なるべく早く弁護士を呼んで、早期の釈放に向けて動いてもらうべきです。とはいえ、逮捕されると自分でスマホを使うこともできなくなるので、「逮捕されてから自分で弁護士を探す」ことはできません。

 

 

そのため、まずは当番弁護士を呼んでください。当番弁護士とは、弁護士会から警察署に派遣され、逮捕された被疑者のために無料で1回接見してくれる弁護士です。

当番弁護士とは?逮捕後すぐに呼べる無料の弁護士を活用しよう!

 

 

留置場の係官に「当番弁護士を呼んでください」と言えば、あとの手続きは全てやってもらえます。

 

 

当番弁護士と接見した後に「この人に弁護してもらいたい。」と思えば、話しあって弁護士費用を取り決め、私選弁護人として活動してもらうことも可能です。お金がなければ勾留された後になってしまいますが、国選弁護人を選任することもできます。

 

 

当番弁護士にせよ国選弁護人にせよ、ご自身でどの弁護士にするかを選ぶことはできません。信頼できる弁護士を選んでもらいたいということであれば、ご家族に弁護士を探してもらうことになります。

 

 

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