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黙秘しているときに取調官と雑談してはいけない理由
このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。
黙秘しているときに取調官と雑談をしてもよいのか
取調べの際、取調官が黙秘している被疑者に対して、雑談をもちかけてくることがあります。このような場合、雑談に応じてもよいのでしょうか?
取調官が被疑者と「最近寒くなってきたね。」などと雑談したところで、その内容が供述調書になることはありません。
被疑者が取調べで黙秘する目的は、捜査機関にとって都合のよい供述調書をとられないようにすることです。とすれば、供述調書にならない以上、雑談に応じても問題ないように思えます。
しかし、取調官は被疑者の口を割らせるプロです。被疑者より一枚も二枚も上手の取調官が、何の気なしに雑談をふってくることはありません。
取調官は被疑者の黙秘をやめさせるために雑談をふってきます。したがって、取調べで黙秘をしているときは、雑談に応じるべきではありません。
黙秘しているときに取調官と雑談すべきでない理由
取調官は、何気ない雑談を通じて被疑者の心を開かせようとします。
被疑者としても、当初は黙秘していたものの、取調官との雑談がはずみ、「この人も取調べは厳しいが根はいい人だな。」等とヘンに情がわいてしまい、「この程度なら話してもいいか。」と供述を始めてしまうことがあります。
こうなってしまうと取調官の思うツボです。
刑事事件の被疑者は孤独です。逮捕・勾留されれば、家族との面会も制限されますし、逮捕されなくても、刑事事件のことを家族や友人に相談することもできません。いったん取調室に入ると弁護士が立ち会うこともできません。
そのような状況で、雑談を通じていったん取調官と心を通わせてしまうと、厳しいプレッシャーから解放された勢いで、取調官に言われるがままに供述してしまうことがよくあります。
このようなことにならないためには、雑談をふられても安易に応じず、取調官と仲良くならないようにすること、言い換えれば取調官と一定の距離を保ち続けることが大切です。
黙秘しているときに取調官と雑談しないことのメリット
取調官は、警察や検察庁といった巨大な国家権力の一員です。これに対して、被疑者は弁護士のサポートを受けることができますが、弁護士は取調べに立ち会うことまではできません。
そのため、取調室の中では、取調官は圧倒的な強者として君臨することになります。とはいえ、取調官も一人の人間です。あの手この手で被疑者に質問しても、黙秘という形でひたすら無視され続けると、心が萎えてきます。
被疑者の前では平静を装っていても、内心は「こんなはずではなかった。自分の取調べのやり方に問題があるのではないか?」とか「これでは起訴までもっていけない。上司に報告できない。」等と動揺しています。
そのような時に、被疑者が雑談に応じてしまうと、取調官に「もう少し粘れば口を割らせることができる。」等と思われてしまい、取調べの回数が増え、時間も長くなってしまいます。
逆に、一貫して雑談も含め完全黙秘していると、「この被疑者にはつけいる隙がない」と思われます。
そうなると、取調べの回数が目に見えて少なくなり、時間も短くなっていきます。ほとんど形だけの取調べになることもあります。その結果、嫌疑不十分で不起訴になる可能性が高まります。
取調べの負担を減らし不起訴の可能性を高めるために、取調官と雑談すべきではないのです。
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