黙秘する?しない?判断の参考になる3つのポイント

このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。

 

 

黙秘するかどうかは捜査機関の証拠の収集状況による

黙秘するか否かは、捜査機関が信用性の高い証拠をどこまで収集しているかによります。捜査機関が信用性の高い証拠を確保しているのであれば、被疑者がどんなに頑張って黙秘しても起訴されてしまうからです。

 

信用性の高い証拠の代表例は、DNA鑑定、指紋鑑定、防犯カメラ映像などの客観的な証拠です。

 

被疑者や目撃者の供述調書は、これらの客観証拠に比べると、かなり信用性が落ちます。防犯カメラと異なり、先入観や見間違い、記憶違い等の可能性があるからです。

 

捜査機関に証拠の収集状況を教えてもらうことはできない

弁護士は、起訴前の時点で、捜査機関が持っている証拠をどのように確認するのでしょうか?

 

起訴後であれば、弁護士は、検察側の証拠を閲覧したりコピーをとることができます。しかし、起訴前の時点では、証拠の閲覧やコピーの機会は保障されていません。

 

検察官は、「DNA鑑定も防犯カメラもばっちりそろってます。余裕で起訴まで持っていけますよ。」とか「供述証拠しかないので、起訴しても公判を維持できるかわかりません。被疑者に自白してもらわないとやばいです。」等と正直に言ってくれるわけではありません

 

そこで、弁護士が取調べの状況等から客観証拠の収集状況を推測する必要があります。この点が否認事件の捜査弁護の難しいところです。

 

証拠の収集状況を判断するための3つのポイント

客観証拠の収集状況を推測するためのポイントは次の3つです。

 

①逮捕状や勾留状に記載されている犯行日時に幅がある

逮捕状には必ず犯行日時の記載があります。犯行日時が「令和2年3月21日19時21分頃から19時26分頃までの間」等と分単位では記載されておらず、「〇時頃」等とあいまいな記載になっていることがあります。

 

この場合、犯行状況を撮影した防犯カメラがなく、信用性のある供述証拠もないと推認することができます。

 

逮捕状は被疑者に呈示されますが、被疑者も動揺しており、内容を正確に覚えていないことが多いです。また、起訴前の時点では弁護士が逮捕状を見ることもできません。もっとも、勾留状については、弁護士が裁判所に請求して、コピーを取得することができます。

 

勾留状には裁判官が認定した被疑事実が記載されていますが、逮捕状の内容がベースになっていますので、まずは勾留状の内容を確認することが重要です。

 

②検察官が示談を持ちかけてくる

痴漢や盗撮などの軽微な事件であれば、検察官があらかじめ被害者に確認した上で、被害者が示談を希望するようであれば、弁護士に対して、「示談は検討していますか?」と連絡してくることがあります。

 

これに対して、強制わいせつや強制性交等の重大犯罪では、通常、検察官から、弁護士に対して、示談の話をもちかけてくることはありません。

 

もっとも、客観証拠が収集できておらず、被疑者が黙秘すれば嫌疑不十分で不起訴になりそうな事件については、検察官から弁護士に示談の話をもちかけてくることがあります。

 

被疑者に自白してもらった上で示談をすれば、客観証拠がなくても起訴猶予で不起訴処分にできるからです。

 

③取調べの数が多い

DNA鑑定や防犯カメラなどの客観証拠を収集できていれば、たとえ被疑者が完全黙秘したとしても、問題なく起訴して有罪判決までもっていくことができます。そのため、捜査機関としても、余裕をもって取調べを行うことができます。

 

これに対して、客観証拠が収集できておらず、供述証拠の信用性にも問題があり、「自白調書がとれるかどうか」で起訴できるかどうかが決まってくる事件では、捜査機関も自白調書をとろうと必死になります。

 

そのため、このような事件では、連日にわたり被疑者の取調べが実施されます。土日祝日もおかまいなしで取調べが行われたり、検事調べを終えて検察庁から帰ってきた後に刑事調べが実施されることもあります。1週間~10日に1度しか行われない検事調べが2日連続で実施されることもあります。

 

捜査機関の証拠の収集状況と弁護方針

起訴前の時点では、証拠収集の状況を正確に知る方法がなく、弁護士が推測するしかありません。本ページでは、証拠収集の状況を推測するための3つのポイントを紹介しました。

 

信用性の高い証拠がないと思われる場合、嫌疑不十分での不起訴を獲得するため、黙秘をすることが考えられます。

 

もっとも、事件によっては、そのような場合でも自白して示談を目指すこともあります。逆に、裁判員裁判では、裁判員に直接話を聞いてもらうために、容疑を認めていても、捜査段階ではあえて黙秘することもあります。

 

最終的にどのような弁護方針をとるのかはケースバイケースですので、まずは弁護士に相談するとよいでしょう。

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