黙秘について

 

黙秘権とは

黙秘権とは言いたくないことについて供述を拒むことができる権利です。

 

黙秘権は憲法で定められた権利です。憲法では「何人も自己に不利益な供述を強要されない」と規定されています。

 

黙秘権の保障をより確かなものにするため、刑事事件についての法律(刑事訴訟法)では、自己に不利益かどうかにかかわりなく、供述を拒むことができるとされています。

 

 

黙秘権の内容

憲法

自己に不利益な供述を言わなくてもよい

刑事訴訟法

言いたくないことは言わなくてもよい

 

聞かれたこと全体について黙秘してもよいですし(完全黙秘)、一部のみ黙秘しても構いません。警察や検察の取り調べでは完全黙秘で対応することも少なくありません。裁判で完全黙秘をするケースはほとんどありませんが、検察官や裁判官の質問の一部について黙秘することはあります。

 

 

何のために黙秘するの?

黙秘の最大の目的は、捜査機関に都合のよい調書をとらせないということです。都合のよい調書の最たるものが自白調書(「私がやりました」という調書)です。

 

日本の裁判では伝統的に供述調書が偏重されてきました。そのため、捜査機関にとって、都合のよい供述調書をとることが、有罪判決を獲得するための手っ取り早い近道になっています。

 

黙秘するということは、捜査機関に都合のよい調書をとらせないということです。そのような調書がなければ、捜査機関は安易に被疑者を起訴するわけにはいきません。裁判所も客観的な証拠を慎重に検討して事実認定を行う必要がでてきます。

 

【関連ページ】

否認事件の刑事弁護

 

 

黙秘する事件

黙秘権は「供述することを拒む権利」ですので、一般的には、否認事件の取調べで行使することになります。自白事件の取調べで黙秘することは決して多くはありませんが、事件の一部や余罪についてのみ黙秘することはあります。

 

また、裁判員裁判になるような重大犯罪では、裁判員に被告人の発言を直接聞いてもらうため、自白していても取調べで黙秘し調書を作成させないこともあります。

 

 

いつ黙秘するの?

黙秘権は刑事事件のあらゆる局面で行使することができます。逮捕されているか否かは関係ありません。逮捕されていなくても黙秘することができます。黙秘する場面としては次の3つが考えられます。

 

①警察の取調べで黙秘する

②検察の取調べで黙秘する

③裁判で黙秘する

 

黙秘権を実質的に保障するため、取調官や裁判官は、本人の話を聞く前に、黙秘権について告知しなければいけません。取調べで黙秘権の告知がなかった場合、その取調べで作成された自白調書を裁判の証拠として提出することができなくなる場合があります。

 

 

どうやって黙秘するの?

黙秘権は言いたくないことを言わない権利です。「言わない」ということ以外、黙秘の仕方に決まりはありません。「黙秘します」と言ってもいいですし、「言いたくありません」と言ってもよいです。取調官の問いかけを無視しても構いません。黙秘した理由を説明する必要もありません。

 

弁護士に相談してあらかじめどのように黙秘するかを決めておくとよいでしょう。ただ、「どうやって黙秘するか」よりも「黙秘した後に取調官のプレッシャーに対してどのように対応するか」の方が大切だということも覚えておいてください取調べで黙秘したらどうなるか

 

 

黙秘すると取調官の印象が悪くなる?

「取調べで黙秘すると取調官の印象が悪くなるのではないか?」と不安に思われる方が少なくありません。

 

はっきり言いましょう。確実に印象が悪くなります。

 

捜査の現場では、短時間ですいすい自白調書をとることができる取調官が「仕事ができる」として評価され、出世していきます。黙秘することは、自白調書をとるという取調官の目的に真っ向から反します。そのため、取調官の印象は確実に悪くなります。罵倒されることもあるかもしれません。

 

とはいえ、単なる取調官の印象によって刑事処分が決まるわけではありません。取調官の印象を気にするのであれば、彼らの言いなりになって、捜査機関にとって都合のよい調書を作成するほかなくなってしまいます。

 

刑事事件の処分は証拠によって決まります。その証拠の大きなウェイトを占めるのが供述調書である以上、取調官の印象を気にして、不利な供述調書を作成することは本末転倒といえるでしょう。

 

被疑者としても大切な人生がかかっています。取調官の印象を気にする必要はありません。

 

 

黙秘すると判決が重くなる?

黙秘することによって不利益な扱いを受けるのであれば、事実上、黙秘できなくなります。それでは憲法で黙秘権を保障した意味がなくなってしまいます。そのため、黙秘すること自体によって判決が重くなるということはありません。

 

ただ、起訴前も裁判中もずっと黙秘していると、反省しているかどうかもわからないということになります。そのため、自白して反省の言葉を述べている被告人と比べると、相対的に判決が重くなることはあり得ます。

 

起訴前には黙秘していたが、裁判では自白していたという場合、当初黙秘していたという理由のみで判決が重くなることはありません。

 

 

黙秘のデメリット

黙秘権は被疑者・被告人に認められた権利ですので、黙秘すること自体によって処分が重くなることはありません。ただ、自白して反省している被疑者・被告人と比べると次のようなデメリットがあります。

 

①勾留される可能性が高まる

逮捕された後、検察官と裁判官に証拠隠滅のおそれがある判断されると勾留されてしまいます。いったん勾留されると原則10日、最長20日間にわたって身柄が拘束されます。

 

一般的に、黙秘せずに素直に供述していれば、「反省しているので証拠隠滅のおそれはない」と判断され、勾留されずに釈放される可能性が高まります。これに対して、黙秘していると、反省しているかどうかもわからないので、「証拠隠滅のおそれがある」と判断されやすくなり、勾留される可能性が高まります。

 

ただ、黙秘すれば必ず勾留されるわけではありません。例えば、痴漢(迷惑防止条例違反)については、現在の実務では、取調べで黙秘していても勾留されずに釈放されることが多いです。

 

逆に、振り込め詐欺等の組織的犯罪や殺人、強制性交等といった重大犯罪では、黙秘しようが自白しようが、いずれにせよ勾留されますので、勾留の可能性が上がるという意味でのデメリットはないということになります。

 

また、黙秘することにより嫌疑不十分で不起訴処分になれば、逮捕後約3週間で釈放されますが、自白して起訴されれば、保釈が認められない限り、その後も身柄拘束が続きます。

 

このように、黙秘することにより勾留の可能性は高まりますが、より広い視点でみた場合、自白した場合に比べて早期に釈放されることもあります。

 

 

②早期保釈の可能性が下がる

裁判官に証拠隠滅のおそれがあると判断されれば、保釈は許可されません。①で述べたように、黙秘していると反省しているかどうかもわからないので、正直に話している被告人と比べると、証拠隠滅のおそれがあると判断されやすくなります。

 

起訴前の時点で自白していれば、起訴直後に保釈されることも少なくありませんが、起訴前に黙秘していると、起訴直後の保釈は難しくなります。

 

もっとも、起訴前に黙秘していたという理由でずっと保釈が認められないわけではありません。裁判が進むにつれ、取調べ済みの証拠も多くなり、それに伴い証拠隠滅の可能性が低下していきます。そのため、保釈が許可される可能性は上がっていきます。

 

 

黙秘と弁護士

黙秘には「捜査機関に都合のよい調書をとらせない」というメリットもあれば、勾留される可能性が高まる等のデメリットもあります。

 

そのため、黙秘権を行使するかどうかは弁護士と相談して慎重に判断するべきです。黙秘権を行使すると捜査機関からのプレッシャーが強くなりますので、弁護士としてもご本人と頻繁に接見し、違法・不当な取調べが行われていないか目を光らせておく必要があります。

 

 

【関連ページ】

否認事件の刑事弁護

取調べで黙秘したらどうなるか

刑事事件の法律相談24時間受付

03-5577-3613

お問い合わせ

オーダーメイドの法律事務所

ウェルネス法律事務所

【大きい地図を見る】