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没収とは?押収との違いや没収できる6つの物について解説

没収とは?

 

このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。

 

 

 

没収とは?

没収とは、物の所有権をはく奪して国の物にする処分のことです。

 

 

没収は「付加刑」といって、必ず懲役・禁錮・罰金等の「主刑」と一緒に言い渡されます。没収のみを単独で言い渡すことはできません。

 

 

刑法の総則で規定されている一般的な没収については、没収するか否かは裁判所の裁量に委ねられています。ただ、犯罪によっては個別の没収規定があり、必ず没収しなければならないとされている場合もあります。

 

 

【具体例】

犯人又は情を知った第三者が収受した賄賂は、没収する。(刑法197条の5本文)

 

 

没収の効果は刑事裁判が確定した時点で生じます。

 

 

没収と押収の違いは?

没収は所有権をはく奪して国の物にする刑罰です。

 

 

これに対して、押収は、主として捜査の一環として、警察が証拠になりそうな物を所有者の手元から警察の管理下に移す手続です。押収された物は手元からなくなりますが、所有権がはく奪されるわけではありません。

 

 

そのため、所有権を放棄していなければ、判決で没収されない限り、押収物は必ず手元に戻ってきます。

 

 

没収と押収の関係は?

実務においては、没収の対象になる物は捜査の過程で押収された物です。押収物は、捜索によって強制的に押収された物と任意に提出して押収された物に分けられますが、どちらであっても没収の対象になります。

 

 

押収されていない物について、判決でいきなり没収が言い渡されることはまずありません。捜査機関が把握していない物について没収を言い渡しても実効性がないためです。

 

没収の対象になる物は?

没収対象は6種類

没収の対象となる物は次の6種類です。

 

①組成物件

②供用物件

③産出物件

④取得物件

⑤報酬物件

⑥産出・取得・報酬物件の対価

 

以下、個別にみていきましょう。

 

①組成物件

組成物件とは犯罪行為の不可欠な要素になっている物です。

 

【組成物件の例】

犯罪

組成物件

偽造文書行使罪

偽造文書

賄賂罪

賄賂

わいせつ図画販売罪

わいせつ図画

 

 

②供用物件

供用物件とは犯罪行為のために使用した物または使用しようとした物です。

 

【供用物件の例】

犯罪

供用物件

殺人罪

凶器として使用したナイフ

住居侵入・窃盗罪

家に侵入するために使用した工具

強制わいせつ罪

被害者に警察への通報を断念させるために、犯人が犯行状況を隠し撮りしたビデオカセット

 

 

③産出物件

産出物件とは犯罪行為によって生みだされた物です。

 

【産出物件の例】

犯罪

産出物件

通貨偽造罪

偽造通貨

文書偽造罪

偽造文書

大麻栽培罪

大麻

 

④取得物件

取得物件とは犯罪行為によって犯人が得た物です。

 

【取得物件の例】

犯罪

取得物件

盗品有償譲受け罪

譲り受けた商品

賭博罪

賭博で勝って得た金銭

わいせつ図画販売罪

わいせつ図画を販売して得た代金

 

 

⑤報酬物件

犯罪行為の報酬として得た物です。犯罪行為を手助けするほう助、犯罪行為をそそのかす教唆の報酬も含まれます。

 

【報酬物件の例】

犯罪

報酬物件

強盗幇助

強盗の見張りをした報酬として分配された金銭

売春防止法違反

売春の場所を提供したことの対価として支払われた金銭

 

 

⑥産出・取得・報酬物件の対価

対価物件とは③産出物件、④取得物件、⑤報酬物件の対価として得た物のことです。①組成物件と②供用物件の対価は対価物件には該当しません。

 

【対価物件の例】

犯罪

対価物件

窃盗罪

盗品の売却代金(取得物件の対価)

窃盗罪

盗んだお金で買った物(取得物件の対価

 

 

没収できない場合はどうなる?

消費されたり、事情を知らない第三者に譲渡されたりして没収できない場合は、その物をお金に換算して国庫に入れることができます。これを追徴といいます。

 

 

追徴できるのは、産出物件・取得物件・報酬物件を没収できない場合に限られます。組成物件と供用物件は、没収できなくても追徴することはできません。

 

 

追徴するか否かは裁判所の裁量に任されていますが、個別の規定によって、追徴が義務づけられている場合もあります。

 

 

追徴の価額は没収できなくなった物が金銭の場合はそれと同額です。金銭以外の物の場合は、現実の取引額ではなく、客観的に適正と認められる金額になります。

 

 

第三者の所有物と没収

没収の対象は、原則として犯人や共犯者の物に限られます。ただし、第三者の物であっても、その者が犯罪の後に事情を知って取得したときは、例外的に没収することができます。

 

 

事情を知っていたかどうかは、第三者が物を取得した時点での認識が基準になります。取得した時点で事情を知らなかった場合は、その後に事情を知ったとしても没収することはできません。

 

 

【第三者の所有物を没収する流れ】

①検察官が起訴後速やかに第三者に通知書を送ります。通知書には以下の事項などが記載されます。

・事件を審理する裁判所

・被告人の氏名

・事件名

・没収すべき物

・没収すべき理由

・裁判所に手続きへの参加を求めることができること

・参加を求めることができる期間

 

②第三者が希望すれば、公判期日に出頭し、没収について法廷で自己の言い分を述べます。必要があれば証人尋問が実施されます。

 

③第三者の主張も参考にして、裁判所が没収について判断します。

 

軽微な犯罪と没収

拘留(1日以上30日未満の拘束刑)と科料(1000円以上1万円未満の財産刑)しかない軽微な犯罪については、原則として没収することはできません。没収できない以上、追徴することもできません。

 

 

ただし、例外として組成物件に限って没収することができます。