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拘禁刑とは?いつから施行される?懲役刑との違いは?弁護士が解説

このページは弁護士 楠 洋一郎が作成しています。

 

 

 

拘禁刑とは?

拘禁刑とは、身体の自由を制限される自由刑の一つで、懲役刑と禁錮刑を統合する形で創設された新しい刑罰です。刑法が明治40年に制定されて以来、新しいタイプの刑罰が創設されるのは拘禁刑が初めてです。

 

 

拘禁刑の受刑者には、改善更生のために、必要な作業を行わせたり、必要な指導を行うことができるとされています。

 

 

【改正刑法】

第十二条 拘禁刑は、無期及び有期とし、有期拘禁刑は、一月以上二十年以下とする。

2 拘禁刑は、刑事施設に拘置する。

3 拘禁刑に処せられた者には、改善更生を図るため、必要な作業を行わせ、又は必要な指導を行うことができる。

 

 

拘禁刑の施行日は?

拘禁刑を定めた「刑法等の一部を改正する法律案」は、2022年6月13日に国会で可決・成立し、同年6月17日に公布されました。

 

 

実際に拘禁刑が導入されるのは改正刑法の施行後になります。施行日については「公布の日(2022年6月17日)から3年を超えない範囲内において政令で定める日」とされています。

 

 

そのため、2025年6月16日までに拘禁刑が導入されることになります。拘禁刑の導入に伴い、懲役刑と禁錮刑は廃止されますが、導入された時点で懲役や禁錮を受刑中の方は、そのまま懲役や禁錮の執行を受けることになります。

 

 

拘禁刑

令和4年6月13日

可決→成立

令和4年6月17日

公布

令和7年6月16日まで

施行

 

 

【拘留とは?】

現行刑法の自由刑には、懲役刑と禁錮刑以外に「拘留」という刑罰もあります。拘留は、刑事施設に1日以上30日未満拘置される刑罰です。拘留は拘禁刑が導入された後も廃止されることなく存続します。

 

 

拘禁刑と懲役刑の違いは?

懲役刑では刑務作業が義務になっているため、受刑者は、日々、木工、印刷、洋裁、金属加工、革工等の刑務作業を行っています。

 

 

これに対して、拘禁刑では、「必要な作業を行わせることができる。」と規定され、刑務作業は義務とされていません。

 

 

そのため、拘禁刑の受刑者の中には、薬物や性犯罪の更生プログラムを重点的に受ける方もいれば、スムーズに社会復帰できるよう算数や国語などの教科指導を受ける方もいるでしょう。健康運動トレーニングや認知症予防トレーニングを受ける高齢者もいるでしょう。

 

 

このように拘禁刑のもとでは、受刑者の改善更生を図るため、各自の特性に基づいたより柔軟な処遇が可能となります。

 

 

【拘禁刑と懲役刑-全く違うわけではない】

懲役刑の受刑者はひたすら刑務作業を行っているわけではなく、作業の合間に各種の更生プログラムや教科指導等を受けています。

 

拘禁刑の受刑者についても、刑務作業を一切行わずに更生プログラムや教科指導のみを受けるということまでは想定されていないと思われます。

 

そのため、両者は全く異なるというより、「どれだけ改善更生に重点を置くか」という程度が違っていると言うことができるでしょう。

 

 

拘禁刑が創設された理由は?

1.懲役刑と禁錮刑をわける意味がない

禁錮刑が定められている犯罪は、内乱罪などの政治犯と過失運転致傷などの過失犯ですが、禁錮刑の実刑判決を受ける人はほとんどいません。

 

 

2022年に懲役の実刑判決が確定した人員が1万4128名であるのに対し、禁錮刑はわずか50名でした(2022年版検察統計年報)。

 

 

このように禁錮刑の受刑者は非常に少なく、処遇の面でも、ほとんどの受刑者が自ら刑務作業を志願して懲役の受刑者と一緒に働いています。刑務作業をした方が単調な生活にめりはりがつき、少ないとはいえ報奨金をもらえるからです。

 

 

そのため、懲役刑と禁錮刑を分ける意味がないと言えます。

 

 

2.再犯者が増えている流れを変えたい

刑罰の目的は、罪を犯した人に相応の責任を負わせることです。

 

 

近年、罪を犯す人の数は徐々に減ってきていますが、再犯者の比率は上昇傾向にあり、2021年は48.6%でした。約2人に1人が再犯に及んでいることになります。

 

 

このような傾向に歯止めをかけるため、刑罰の目的として罪を犯した人を更生させるという面が重視されるようになり、改善更生を主眼とした拘禁刑が導入されました。

 

 

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