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証拠隠滅罪とは?成立要件や罪にならないケース

証拠隠滅罪とは

 

このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。

 

 

 

証拠隠滅罪の成立要件

証拠隠滅罪の成立要件は以下のいずれかです。

 

 

①他人の刑事事件に関する証拠を、隠滅・偽造・変造すること

②他人の刑事事件に関する偽造・変造した証拠を使用すること

 

 

自分の証拠を隠滅しても罪にならない

1.どうして罪にならない?

証拠隠滅罪で隠滅の対象になるのは「他人の」刑事事件に関する証拠です。そのため、自分の刑事事件に関する証拠を隠滅しても罪にはなりません。

 

 

刑事事件の容疑者自身が「不利な証拠は隠してしまおう。」と考えるのは自然な心情でやむを得ないといえます。

 

 

そのため、自分の刑事事件についての証拠を隠滅しても証拠隠滅罪にはなりません。法律の世界では、このようなケースについて「適法行為の期待可能性がない」と言われます。

 

 

容疑者自身に証拠隠滅しないことを期待することはできないという意味です。

 

 

2.罪にならなくても逮捕のリスクあり

証拠隠滅のおそれは逮捕の要件になります。そのため、自分の刑事事件に関する証拠を隠滅しても証拠隠滅罪にはなりませんが、その刑事事件について逮捕される可能性が高まります。

 

 

3.証拠隠滅の教唆は罪になる

自分の刑事事件に関する証拠を隠滅しても証拠隠滅罪にはなりませんが、他人を教唆して自分の刑事事件に関する証拠を隠滅させた場合は、証拠隠滅罪が成立します。

 

 

自分に関する証拠といえども、他人を巻き込んでまで証拠隠滅することについては、期待可能性がないとはいえないからです。

 

 

4.共犯事件は?

共犯事件のケースで、自分の刑事事件の証拠であると同時に共犯者の証拠でもある場合は、もっぱら共犯者のために証拠を隠滅した場合に限って証拠隠滅罪になると考えられています。

 

 

証拠隠滅罪の「刑事事件」とは

証拠隠滅罪は他人の刑事事件に関する証拠を隠滅したときに成立します。「刑事事件」とは、起訴されて刑事裁判になっている事件のほか、起訴前の捜査中の事件も含まれます。さらに、捜査開始前の事件も含まれます。

 

 

ただし、日本に裁判権のある刑事事件に限られます。

 

 

刑事事件が後に不起訴や無罪になっても証拠隠滅罪の成否には影響しません。友人が無罪だと確信して証拠を隠滅すれば、実際に裁判で無罪になったとしても、証拠隠滅罪は成立します。

 

 

証拠隠滅罪の「証拠」とは?

捜査機関や裁判官が、犯罪の成否や刑罰の重さを判断するにあたって関係があると認められる一切の資料をいいます。物証だけではく証人や参考人などの人証も含みます。

 

 

証拠は刑事事件に関するものに限られます。そのため、民事事件や行政事件の証拠を隠滅しても証拠隠滅罪にはなりません。

 

 

証拠隠滅罪の「隠滅」とは?

証拠隠滅罪の隠滅とは、証拠そのものを廃棄したり隠して利用できないようにすることです。証拠隠滅罪では隠滅以外に偽造や変造も処罰されます。

 

 

偽造とは新たな証拠を作り出すことをいいます。変造とは既に存在する証拠に変更を加えることです。

 

 

証拠隠滅罪の罪の重さ

証拠隠滅罪の罰則は、3年以下の懲役または30万円以下の罰金です。

 

 

証拠隠滅罪の時効

証拠隠滅罪の時効は3年です。

 

 

親族の証拠を隠滅した場合

親族の刑事事件に関する証拠を隠滅した場合、親族であっても他人であることから、証拠隠滅罪が成立します。

 

 

ただ、親族の場合は、赤の他人と異なり、人の心情として証拠隠滅に走ってもやむを得ないといえ、期待可能性が低いため刑は免除されます。

 

 

ここでいう親族とは6親等内の血族または3親等内の姻族をいいます。

 

 

証拠隠滅罪の具体例

①教員の盗撮を見つけた校長が、監督責任を問われることをおそれて、警察や教育委員会に報告せず、盗撮に使われたビデオカメラを校長室の金庫に隠した

 

 

②殺人現場にかけつけ血だまりを水で洗い流し、凶器を持ち去った

 

 

③特殊詐欺の受け子の恋人が、逮捕された受け子が犯行に使っていた携帯電話を捨てた

 

 

ウェルネスは刑事事件をメインとする法律事務所です。ご家族が逮捕された場合はお気軽にウェルネス(03-5577-3613)の弁護士にご相談ください。