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自殺教唆・自殺幇助とは?成立要件や刑罰を弁護士が解説
市川猿之助さんの心中事件で自殺幇助罪が話題になっています。このページでは、弁護士 楠 洋一郎が自殺幇助と自殺教唆について成立要件や罰則などを解説しました。ぜひ参考にしてみてください。
自殺教唆とは?
自殺教唆とは、自殺を決意していない者に自殺を決意させて自殺させることです。自殺教唆罪が成立するためには、被害者が自由な意思決定により自殺を決意する必要があります。
暴行や脅迫により、被害者を自由な意思決定ができない状況に追い込んで自殺を決意させた場合は、自殺教唆罪ではなく殺人罪が成立します。
後追い心中の意思がないのに、「お前が死んだら俺も死ぬ」と被害者を騙して自殺させた場合(偽装心中)、自殺教唆ではなく、殺人罪が成立します。
自殺幇助とは?
自殺幇助とは、既に自殺を決意している者の自殺を手助けして、自殺させることです。
心中するつもりで自動車内で練炭を燃やしたが自分だけ死ねなかった場合、死亡者の自殺を手助けしたとして、自殺幇助罪が成立する可能性が高いです。
死亡者が練炭の準備など自殺に向けた積極的な行為をしていない場合は、同意殺人罪が成立する可能性が高いです。
自殺教唆・自殺幇助にならないケース
自殺教唆罪や自殺幇助罪が成立するためには、自殺者が死ぬことの意味を理解し自由に意思決定する能力を有している必要があります。
死ぬことの意味を理解することができない幼児や心神喪失者、認知症の老人等については、自殺教唆罪や自殺幇助罪は成立せず、飛び降りや首つりなど外形上は自殺に見えても、関与者には殺人罪が成立する可能性が高いです。
自殺教唆・自殺幇助-なぜ処罰される?
教唆や幇助は、どの犯罪にも適用される概念として、刑法の総則に定められています。
上の規定を見てもわかるように、教唆や幇助は犯罪行為をした「正犯」がいることが前提になります。
ただ、自殺をすること自体は犯罪ではありませんので、自殺教唆や自殺幇助の場合は、正犯がいないことになります。それではなぜ、自殺教唆や自殺幇助は犯罪とされているのでしょうか?
自殺が犯罪とならないのは、生命といえども個人的な権利であるため、自殺者の自己決定権が尊重されるべきだからです。
もっとも、生命は本人だけが左右し得るものですので、いくら本人に自殺をする意思があったとしても、第三者が本人の死に関与することまで正当化することはできません。
そのため、自殺教唆と自殺幇助に限っては、正犯なしでも処罰できるようにするため、独立の処罰規定を設けたのです。
自殺教唆・自殺幇助の刑罰は?
自殺教唆・自殺幇助の法定刑は懲役6か月~7年です。
罰金刑はありませんので、起訴されれば、誰もが傍聴できる公開法廷で審理され、検察官から懲役刑を請求されます。
自殺教唆も自殺幇助も法定刑は同じです。自殺を決意させる教唆の方が、手助けにとどまる幇助よりも違法性の程度が高いため、処断刑は自殺教唆の方が重くなります。
自殺幇助は初犯であれば執行猶予になることが多いですが、自殺教唆は初犯でも実刑になることが多いです。
自殺教唆・自殺幇助の未遂
自殺教唆・自殺幇助は未遂でも処罰されます。もっとも、自殺教唆・自殺幇助の実行に着手していなければ、未遂にもなりませんので処罰されません。
それでは何をもって自殺教唆・自殺幇助の実行に着手したといえるのでしょうか?実行の着手時期は、自殺の教唆や幇助を開始した時点ではなく、自殺行為を開始した時点とされています。
そのため、自殺を勧めたり自殺に使う道具を渡しただけでは、自殺教唆や幇助にはなりません。未遂罪が成立すれば、刑罰は半分(懲役3か月~3年6か月)に減刑されます。
自殺教唆・自殺幇助の時効は?
刑事事件の時効を公訴時効といいます。公訴時効が経過すれば起訴することができなくなります。そのため、逮捕されることもありません。自殺教唆・自殺幇助の公訴時効は5年です。
自殺教唆・自殺幇助で執行猶予を獲得するために
自殺教唆・自殺幇助で起訴された場合、刑罰を決めるにあたって自殺に関与することになった経緯が重視されます。
☑ 介護で疲れはてて自殺を勧めてしまった
☑ 心中するつもりだったが自分だけ死にきれなかった
☑ 何度も自殺を手伝ってくれと言われて断り切れなかった
このような事情がある場合は、弁護士が被告人に有利な情状として裁判官に主張します。家族が自殺教唆・自殺幇助で逮捕された方はウェルネス(03-5577-3613)へお気軽にご相談ください。