押収拒絶権について弁護士が解説

このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。

 

 

押収拒絶権とは

カルロス・ゴーン氏が海外逃亡した後、担当していた弁護士が、事務所に捜索に来た検察庁の職員に対して、押収拒絶権を盾に、パソコンの提出を拒んだことが話題になりました。

 

押収とは物の占有を警察や裁判所に移すことです。

 

捜査員が自宅や事務所に捜索差押えにきた場合は、押収を拒むことはできません。捜索差押えは、逮捕と同じく、裁判所の令状に基づき強制的に行われる処分だからです。

 

もっとも、例外的に押収を拒めることがあります。この権利を押収拒絶権といいます。

 

押収拒絶権を行使できる8つの業務

押収拒絶権を有するのは、次の8つの業務をしている人または過去にしていた人だけです(このページではまとめて「業務者」と表記します)。

 

①医師

②歯科医師

③助産師

④看護師

⑤弁護士

⑥弁理士

⑦公証人

⑧宗教職

 

これらの業務は、「人の秘密を扱うことが多い」という共通点があります。押収拒絶権が認められた理由は、業務者を信頼して秘密を打ち明けた人や業務に対する社会一般の信頼を保護するためです。

 

押収拒絶権は、業務者が、業務上委託を受けて、他人の秘密に関するものを保管したり所持しているときに行使できます。

 

押収拒絶権の「秘密」とは

押収拒絶権を行使できるのは、「他人の秘密に関するもの」だけです。「秘密」かどうかを判断するのは弁護士などの業務者自身とされています。捜査機関や裁判所が判断するわけではありません。

 

そのため、業務者が「これは秘密ですので提出できません。」といえば、捜査員もそれ以上ふみ込めないことになります。

 

ただし、秘密の主体である本人が押収されることを承諾している場合は、押収拒絶権を行使することはできません。

 

また、被告人のために押収拒絶権を濫用することは認められません。「押収拒絶権の濫用」とは、業務者が、被告人のために、秘密の主体である第三者と結託して、本来秘密でないものを「秘密です」と言って不当に押収を拒絶するようなケースです。

 

法律では、秘密の主体が被告人である場合は、弁護士と被告人が結託して、本来秘密ではないものを「秘密です」といって押収を拒絶しても権利の濫用とはならないとされています。

 

被告人は刑事事件の当事者であることから、被告人自身がそのような手段で罪を免れようとするのは仕方がないと考えられているためです。

 

しかし、このように考えると、被告人が都合の悪い物を弁護士などの業務者に預ければ、常に押収を免れることができ不当であることから、「外形上秘密でないことが明白なもの」については、押収拒絶権を行使することはできないと考えられています。

 

カルロス・ゴーン氏のケースでは、検察が押収しようとしたのは、ゴーン氏が保釈中に使用していたパソコンであり、「外形上秘密でないことが明白なもの」とはいえないことから、押収拒絶権を行使された検察も、それ以上踏み込むことはできませんでした。

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