とん刑者とは?とん刑者の2つのタイプや捕まえる手順について解説

このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。

 

 

とん刑者とは?

とん刑者とは、実刑判決が確定した後に、懲役刑や禁固刑を免れるために逃げている者のことです。法務省によれば、2018年末の時点で、全国で26人いるとのことです。

 

なぜとん刑者が発生するのか?

逮捕・勾留されたまま起訴された事件について、一審で実刑判決が言い渡されると、被告人は裁判所から自由の身で出てくることはできません。例外なく拘束されます。一審で保釈されていても、実刑判決が言い渡された瞬間に保釈の効力はなくなりますので、裁判終了後すぐに拘束されます。

 

そのまま実刑判決が確定すれば、拘置所から刑務所に移送されます。

 

一方、実刑判決が確定した時点で、まだ身柄が拘束されずに自由の身でいられるケースがあります。とん刑者が発生するのはこのケースです。具体的には次の2つが想定されます。

 

①当初より逮捕されずに在宅起訴され実刑判決が確定したケース

②控訴申立て後に保釈されたケース

 

【①のケースについて】

<無免許運転や万引きなど軽い犯罪を繰り返して執行猶予判決を受けたが猶予期間中にまた同様の事件を起こした場合>が考えられます。

 

犯罪としては軽微なため、当初から逮捕されなかったり、逮捕されても勾留前に釈放されることが多いですが、その後に在宅起訴され、執行猶予中であることから実刑になるケースです。

 

【②のケースについて】

一審では、被告人は裁判の日に法廷に出向かなければいけません。保釈中の被告人が実刑判決を受けると、裁判が終わった後すぐに身柄を拘束され拘置所に移されます。

 

これに対して、控訴審では、被告人が法廷に出向く義務はありません。被告人が欠席していても実刑判決を言い渡すことができますが、本人がその場にいないため、すぐに身柄を拘束することはできません。欠席している場合とのバランスから、被告人が出廷していても、その場で拘束されることはありません。

 

①と②のケースでは、判決確定後に検察庁から本人の自宅に呼出状が届きます。呼出状には、出頭すべき日時と場所が書かれています。指示通りに出頭するとその場で拘束されます。ほとんどの方は指示通りに出頭しますが、なかには収監を免れようとして、逃亡する人もいます。これがとん刑者です。

 

とん刑者をどうやって捕まえる?

とん刑者の居場所を調べて身柄をおさえるのは、検察官や検察事務官の仕事です。検察庁には執行担当の部署があり、とん刑者の捜査を行っています。東京地方検察庁では、「総務部特別執行課」という部署になります。

 

執行担当の職員は数人で一つのチームを作り、班長の指揮のもとに動いています。一般的に、検察官や検察事務官は、取調べや裁判の立会いなど室内での仕事が多いですが、執行担当の職員は、聞き込み捜査などで外に出て仕事をすることが多いです。

 

とん刑者の捜査は、所在調査と収容の二つに大別されます。所在調査は、検察庁の職員が裁判執行関係事項照会書という書面を、各地のホテルや病院などの施設に送付し、とん刑者がどこにいるのかを調査します。裁判執行関係事項照会書にはとん刑者の手配写真などが添付されています。

 

とん刑者の所在がわかれば、張り込み捜査をして身柄を確保し収容します。抵抗や逃亡が予想される場合は警察に協力してもらうこともあります。ただ、担当する検察庁の職員が少ないこともあり、5年、10年経過してもまだ行方がわからないとん刑者もいるようです。

 

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