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痴漢に足をかけて転倒させたら暴行罪になる?

このページは弁護士 楠 洋一郎が執筆しています。

 

 

痴漢に足をかけて転倒させると暴行罪の要件に該当する

逃げる痴漢に足をひっかけて転倒させたケースで暴行罪にあたるのかがインターネット上で話題になっています。暴行罪の要件は、「人に有形力を行使すること」です。人の体に接触することは、通常、「有形力の行使」にあたります。

 

そのため、走っている人に足をひっかけて転倒させれば暴行罪の要件に該当することになります。相手が転倒してケガをすれば、傷害罪の要件にも該当します。

 

それでは、逃げている痴漢に足をひっかけて転倒させると、本当に暴行罪が成立するのでしょうか?

 

暴行罪の最高刑は懲役2年です。一方、痴漢(迷惑防止条例違反)の最高刑は、ほとんどの自治体で懲役1年です。もし痴漢に足をかけて転倒させた場合に暴行罪が成立するのであれば、痴漢した人よりも重い刑罰を受ける可能性もあります。

 

違法性がなければ犯罪は成立しない

どのような犯罪であっても、それが成立するための要件が法律で定められています。例えば、暴行罪の要件は「人に有形力を行使すること」です。傷害罪の要件は「人の生理的機能に障害を与えること」です。

 

これらの要件に該当すれば、暴行罪や傷害罪が成立することが一応推定されますが、例外的に「違法性がない」として、犯罪が成立しないケースがあります。例えば、医師が手術をすることは、メス等で患者の体を傷つけている以上、形式的には傷害罪の要件に該当します。

 

ただ、医師は正当な業務として手術をしているので、違法性がなく、傷害罪は成立しません。このように、形式的に犯罪の成立要件を満たしていても、「違法性がない」として、犯罪の成立を阻止する事情を「違法性阻却事由」(いほうせいそきゃくじゆう)といいます。

 

違法性阻却事由の代表は「正当防衛」です。形式的に犯罪の要件に該当するけれども、「こんなんで犯罪になるの?」と疑問に思うようなケースでは、違法性阻却事由が問題になることが多いです。

 

痴漢に足をかけて転倒させたケース-違法性はある?

結論からいうと、逃げる痴漢に足をかけて転倒させたケースでは、違法性がなく暴行罪が成立しない場合があります。

 

刑法は、違法性阻却事由として、正当防衛などと並んで、「法令行為」と「正当業務行為」を定めています。

 

刑法35条

法令又は正当な業務による行為は、罰しない。

 

「法令行為」とは、法律や命令などの法規が許容している行為です。「正当業務行為」とは、社会的に正当とされる業務に基づく行為です。例えば、医師の手術は正当業務行為にあたります。

 

逃げる痴漢に足をひっかけて転倒させたケースでは、「法令行為」によって違法性が阻却されるかが問題となります。

 

刑事訴訟法は、現行犯人は誰でも逮捕状なしで逮捕することができると定めています。現行犯人とは、「現に犯罪を行っている者」と「現に犯罪を行い終わった者」のことです。

 

ただ、刑事訴訟法は、このような者でなくても、次の4つのいずれかに該当する者が、犯罪を行い終わってから間がないと明らかに認められるときは現行犯人とみなしています。

 

① 犯人として追跡されたり、呼ばれているとき。

② 盗品や明らかに犯罪に利用したと思われる凶器等を所持しているとき。

③ 身体又は衣服に犯罪の顕著な痕跡があるとき。

④ 誰何されて逃走しようとするとき。

 

もし痴漢が女性から「痴漢です。誰か捕まえてください!」等と言われて逃げている場合は、「現行犯人」として扱われますので、誰でも逮捕することができます。逮捕するためには、ある程度の実力行使は必要になることから、痴漢に足をひっかけて転倒させることも法令行為として違法性がなく、暴行罪は成立しないことになります。

 

逆に、誰かに声を掛けられたり追いかけられたりしておらず、単にホーム上を走っている人に足をひっかけた場合は、その人がたまたま痴漢だったとしても、「現行犯人」ではないため、法令行為として違法性は阻却されず、暴行罪が成立することになります。

 

また、「痴漢です!」等と言われて逃げている人に足をひっかけた場合でも、転倒した後に何度も殴打したような場合は、法律はそこまで許容しているとはいえませんので、暴行罪(けがをしていれば傷害罪)が成立します。

 

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