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刑事補償とは?金額や実際の事例について弁護士が解説

刑事補償について

 

「自分が冤罪で逮捕されたらどうしよう。」と考えたことはないでしょうか?

 

 

冤罪で逮捕・勾留されたり、服役した方は、最終的に無罪を勝ちとっても、それだけで拘束によって受けた損害が回復したとはいえないでしょう。

 

 

刑事司法に関わる人々が絶対に過ちを起こさないとはいえず、冤罪をゼロにすることはできません。ただ、万一、冤罪が生じてしまった場合は、犠牲を強いられた方に補償がなされるべきです。それが刑事補償です。

 

 

このページでは弁護士 楠 洋一郎刑事補償の対象や金額、実際の事例について解説しています。ぜひ参考にしてみてください。

 

 

 

刑事補償とは

刑事補償とは、刑事裁判で無罪が確定した人について、一定の補償をすることです。有罪が確定して刑の執行を受けた後に再審で無罪が確定した人も補償の対象に含まれます。

 

 

逮捕・勾留・服役などで身柄が拘束されていた場合は、拘束期間に応じて所定の金額が補償されます。保釈されていた期間は拘束されていませんので、補償を受けることはできません。

 

 

逮捕・勾留されず在宅で起訴され無罪になった場合は、1日も拘束されていませんので、刑事補償を受けることはできません。

 

 

罰金や科料の裁判を受け、お金を払った後に、再審で無罪になったケースでは、支払った金額に年5パーセントの利息をつけた金額が補償されます。

 

 

以下では主として身柄拘束に伴う刑事補償について解説します。

 

刑事補償の金額

刑事補償の金額は拘束1日あたり1000円~1万2500円とされています。上限の1万2500円でも時給換算すると500円ちょっとです。「安すぎる」と批判されるのも無理はないでしょう。

 

 

刑事補償される場合は、通常は上限の1万2500円が支払われますが、自分が仮に同じ目にあったとして、1日1万2500円で納得できるかというと、大多数の人が納得できないでしょう。

 

 

刑事補償と国家賠償の違い

刑事補償で支払われる金額は最高でも1日1万2500円と非常に低くおさえられています。ただ、国家賠償請求訴訟を提起して認められれば、刑事補償でカバーされない金額についても国から賠償を受けることが可能です。

 

 

もっとも、拘束の日数に応じて機械的に計算される刑事補償とは異なり、国家賠償が認められるためには、担当者に故意や過失があったことを請求する側が立証しなければなりません。

 

 

実際は、検察官が証拠を改ざんしたとか法廷で警察官が偽証したいった事情がなければ、なかなか国家賠償が認められることはありません。

 

 

不起訴と刑事補償

1.不起訴は刑事補償されない

刑事補償は裁判で無罪になった人を対象にしています。不起訴になった人は、そもそも裁判を受けていないので刑事補償の対象にはなりません。

 

 

不起訴の理由でもっとも多いのは「起訴猶予」です。起訴猶予とは裁判にかければ問題なく有罪になるが、本人の反省や示談などの事情を評価して、特別に不起訴とする処分です。

 

 

起訴猶予の場合は、罪を犯しているので、補償を受けられなくても仕方がないといえるでしょう。

 

 

2.不起訴の種類によっては特別に保障される

これに対して、罪を犯していないといえる十分な理由があって不起訴になったときは,もし裁判になっていれば無罪になることが見込まれるため、無罪判決に準じるケースといえるでしょう。

 

 

そのため、「嫌疑なし」や「罪とならず」で不起訴になった場合は、刑事補償の対象にはなりませんが、法務省が定めた被疑者補償規程によって補償を受けることができます。

 

 

金額は刑事補償法と同じで拘束1日あたり1000円~1万2500円です。

 

 

公訴棄却と刑事補償

1.公訴棄却とは

公訴棄却とは、裁判所が有罪・無罪の判断をせずに裁判を打ち切ることです。公訴棄却になる代表的なケースは以下のとおりです。

 

 

・被告人の死亡

・公訴の取り消し(起訴の取り消し)

・親告罪の告訴の欠如

 

 

2.公訴棄却で刑事補償されるケース

公訴棄却になったときは、仮に公訴棄却にならなかった場合に無罪になる十分な理由があると認められれば、刑事補償を請求することができます。

 

 

機械メーカーの不正輸出事件で社長らの起訴が取り消されたケースでも、刑事補償を請求する方針であることが報道されました。

起訴取り消しとは?取り消しになる5つのケースを弁護士が解説

 

 

死刑と刑事補償

冤罪で死刑となり、実際に死刑が執行された後に再審で無罪になった場合は、取り返しのつかない事態といえます。

 

 

このようなケースでは、遺族が刑事補償を請求することができます。

 

 

冤罪で死刑が執行された場合の補償額は、裁判所が決めることになっていますが、上限は3000万円です。本人の死亡による財産上の損失額が証明された場合には、その損失額に加えて3000万円が支払われます。

 

 

いずれにせよ安いと言わざるを得ないでしょう。幸いというべきか、日本でこれまで死刑施行後に遺族に刑事補償金が支払われたケースはありません。

 

刑事補償金に税金はかかる?

刑事補償金は非課税です。

 

 

所得税法施行令で「心身に加えられた損害につき支払を受ける慰謝料その他の損害賠償金」は非課税とされていますが、刑事補償金もこの損害賠償金に該当するからです。

 

 

刑事補償の事例

1.免田事件の刑事補償

免田事件とは1948年12月に熊本県で祈祷師夫婦が殺害された強盗殺人事件です。免田栄さんが容疑者になりましたが、以下の経過で冤罪であることが明らかににされました。

 

1949年1月逮捕
1952年1月死刑が確定
1983年7月再審で無罪となる→即日釈放

 

 

免田さんは、34年以上にもわたって身柄拘束され、約9000万円の刑事補償金が支払われました(1日あたり1万2500円×365日×34年)

 

 

2.袴田事件の刑事補償

袴田事件とは1966年6月に静岡県で発生した強盗殺人と放火事件です。事件の2か月後に袴田巌さんが容疑者として逮捕され、1980年12月に死刑が確定しました。

 

 

その後、2014年3月に刑の執行停止により約48年ぶりに釈放されました。袴田事件は2021年時点で再審をめぐって争われており、無罪になったわけではないため、刑事補償金は支払われていません。

 

 

今後もし無罪となり刑事補償の請求があれば、2億円超の刑事補償金が支払われる見込みです(1日あたり1万2500円×365×48年)。

 

 

3.布川事件の刑事補償

布川事件(ふかわじけん)とは1967年8月に茨城県で発生した強盗殺人事件です。男性2名が容疑者とされましたが、次の経過で冤罪であることが明らかになりました。

 

1967年10月逮捕
1978年7月無期懲役が確定
1996年11月仮釈放
2011年6月再審無罪が確定

 

男性2名は29年にもわたって身柄を拘束され、一人あたり約1億3000万円の刑事補償金が支払われました(1日あたり1万2500円×365日×29年)。

 

 

4.足利事件の刑事補償

足利事件とは1990年5月に栃木県足利市で女児が殺害された事件です。菅谷利和さんが容疑者とされましたが、次の経過で冤罪であることが明らかになりました。

 

1991年12月逮捕
2000年7月無期懲役が確定
2008年12月東京高裁がDNAの再鑑定を行うことを決定
2009年4月再鑑定により菅谷さんと犯人が別人であることが判明
2009年6月刑の執行停止→釈放
2010年3月再審無罪が確定

 

 

菅谷さんは17年にわたって身柄を拘束され、約8000万円の刑事補償金が支払われました(1日あたり1万2500円×365日×17年)。

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