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刑事事件の弁護人は悪人の味方?
このページは弁護士 楠 洋一郎が作成しています。
「刑事事件の弁護人は悪人の味方」と批判されやすいケース
無罪を主張している否認事件については、弁護人は被疑者・被告人にかけられた疑いを晴らし、冤罪を防止するために活動しているので、無理な主張をしている場合を除いて、「悪人の味方をしている」と批判されることは少ないです。
これに対して、容疑を認めている自白事件については、弁護人に対して「悪人の味方をしている」と批判されることが少なくありません。このような批判は正しいのでしょうか?
刑事事件の弁護人の役割-適正手続が保障されているかをチェックする
刑事事件の被疑者・被告人は、適正な手続が保障されている状況で、刑事処分を受ける権利があります(憲法31条)。
【憲法31条】
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「悪人だから適切な手続を保障する必要はない」という思想を是とすれば、社会全体において、適正手続の保障が後退していき、ひいては時の権力者の恣意的な判断によって、適正な手続によらずに個人が弾圧されることにもなりかねません。過去の日本にもそのような時代がありました。
そのため、逮捕・取調べ・裁判などの一連の刑事手続において、適正な手続が履行されているかどうかを弁護人がチェックすることが必要です。弁護人が被疑者・被告人の味方として活動することは、適正手続の保障という観点から必要な活動といえます。
刑事事件の弁護人の役割-バランスがとれた処分を実現する
刑事事件の処分は、犯罪行為の悪質性やその他の事情(本人の反省や示談の有無等)とバランスがとれている必要があります。
バランスがとれた処分を実現するためには、警察・検察といった捜査側の証拠のみで処分を決めるのではなく、被疑者・被告人の代弁者である弁護人の活動もふまえて決める必要があります。
なぜなら、捜査側の人間が、被疑者にとって有利な事情を拾い上げてくれることまで期待できないからです。捜査側の人間が被疑者・被告人のために示談をまとめてくれたり、再発防止プランを考えてくれるわけでもありません。
被疑者・被告人の味方である弁護人がそのような活動を行い、捜査側とは違った角度から光を当ててこそ、バランスのとれた処分を決めることができます。
弁護人が被疑者・被告人の味方として活動することは、バランスのとれた処分を実現するという観点からも正当な活動といえます。
まとめ
このように刑事事件の弁護人は、適正手続の保障及びバランスのとれた処分の実現のために活動しているのであり、「悪人の味方をしている」という批判はあたらないと言えます。